「ついにあの娘とデートの約束をしたんだ」
友人のAが興奮して電話をしてきた、


「えっ、そりゃ凄いじゃないか。頑張れよ」
僕はAを励ました、




それから、しばらくしてからAから電話があった、

「やっぱり、オレじゃ駄目みたいだ」

Aの声は深く沈んでいた、


「どうしたんだ、デートドタキャンされたのか?」

「いや、デートはしたよ、この前の日曜日にな…海にドライブに行って、海辺のレストランに行って、凄く景色も良くって、彼女も笑顔で話してくれて、盛り上がってたんだ」


「じゃあ、申し分ないじゃないか、デートは成功だったんだろう?」


「いや、それがそうでもないんだなぁ…何故なんだ、それから、カラオケに行って、洒落たバーでカクテルを飲んで、夜の海辺を手を繋いで散歩したんだ」


「なんだ、バッチリじゃないか。それからどうしたんだ?」

「潮騒がいい感じで…、きれいな満月が出てたんだ。」


「それでどうしたんだ?」


「どうって…彼女が『月がとってもきれいだわ』って…」



「うん、うん、それでお前はどうしたんだ?」


「どうって…『ええ、きれいな月ですね』って言った」


「それから、どうしたんだ?」


「それからって…彼女、黙っちゃった」

「それでお前はどうしたんだ?」


「それで…彼女を車で家まで送った…」


「なんだって!帰ったのか?」


「あぁ…帰った」


「それから、電話したのか?」


「勿論さ!また会って欲しいって言ったよ」


「で…彼女は?」


「私たち、お友達でいましょう…だって」


「はぁ~、そうか」


「何故だ!何故なんだ!あんなに打ち解けて盛り上がってたのに!」


「あのさ…」


「なんだ?」


「他の女を探せ」


「何故?」


「何でもだ」


「他の女でないと駄目か?」


「あぁ、他の女でないと駄目だ!」


「う~ん…」


「それでな、今度手を繋いで散歩して、彼女が『月がとってもきれいだわ』って言ったら…」


「なに?」


「黙ってキスしろ」

「え~、そんなんありか?」


「ありだ」


「そりゃあ…しかし…、うまくいくかな?」


「たぶんな」


「…うまくいくかな?」


「あぁ、たぶんな」



「本当かな?…本当かな?」





信じられないようなAのくちぶりを聞いて


僕はますますAのことが好きになった。(笑)