次の日は朝からなんとなく憂うつだった
この前のコロコロの様子はあまり希望の持てるような反応ではなかった
今日自分がどんなに頑張ったところで
彼女の気持ちをこちらに向けるという事が難しいことだということぐらい
僕にも分かっていた
だがここまできたら頑張れるところまで押すしかない
大学に行って就職資料室に行って企業の資料を調べたり図書館に行って勉強しながら時間を潰した
そして3時少し前に図書館の入口でコロコロを待った
時間通りにコロコロが来た
「ちょっと歩こうか?」
「いいよ」
校門を出て少し歩くと隼人池の横の小さな公園に出た
そこのベンチに座って話した
「いま正直にいってどんな気持ち?」
と僕が聞いた
「いまさ~、クラスの係会とかサークルがすごく忙しくて、だから付き合うとかそんな気持ちになれない」
「僕のことどう思う?」
「なんか、話しやすい…先輩っていうより、お兄さんっていう感じ」
「ほかには?」
「う~ん。…ほかには無し。そんなふうには考えられない。だからおしまい」
「コロコロ本当は好きな人がいるんじゃないの?」
「いまはいない。…あっ、いるかな?わかんない」
「この前、僕が言ったときにどう思った?」
「どうって…うれしかったよ。そりゃあ好きだって言われたのは初めてじゃないけど、うれしかった。でも付き合うとかそんな気にはなれない。いまはサークルを真剣にやりたいから余裕がない」
「そんなら、余裕ができたらどうするの?」
「そんな…なんかやだ、そんなふうに言われるのやだ。そんなふうに言われると嫌いになっちゃいそう」
「どうしても駄目?」
「駄目」
「可能性はこれからもない?」
「ゼロ」
「そうか…しかたないね。じゃあこれからは今まで通りサークル員として」
「うん」
「うん。ごめんね」
もう駄目だ
もうこれ以上僕の話せる言葉は見あたらなかった
公園の中の木々の緑が眩しかった
横にある池ではおじいさんが一人
釣糸をたれていた
そういえば以前ここで釣りを何度もしたことを思い出した
僕は虚ろな気持ちで周りの光景を眺めていた
季節は初夏だというのに
僕の胸の中には冷たい冬の風が通りすぎていくような侘しさを感じていた
やがて二人で席を立つと大学に戻る道をトボトボと歩いて
途中でコロコロと分かれた
その日の夜8時からジャケイの下宿でパート会があった
コロコロもいた
なんとも気まずい時間がゆっくりと流れていった
パート会というより方針合宿といった感じだったので終わったのは深夜1時を過ぎていた
コロコロはヒミコの下宿に行き
ジャケイ、メンタン、チクワが送って行った
みんなが帰るとアブさんが
「今日はどこに行ってたんや?」
と聞いてきた
「隼人池の公園
」
「つきあってくれって言った?」
「あぁ、言ったよ」
「それで返事は?」
「ボツ」
「なんて言われた?」
「う~ん…」
「可能性は?」
「ゼロ」
アブさんは無言で布団を敷いてくれた
それからは全く関係ない話を少しして寝た
もうコロコロのことは諦めよう
諦めて就職活動に本腰を入れて頑張ろう
そう思った
何にしてもここ数ヶ月
自分のうじうじと悩んでいた事に一つの結論が出たのだ
もう彼女のことは忘れて自分の将来を真剣に考えよう
しばらくは硬派に生きるぞ
自分自身にそう言い聞かせるしかなかった
7月になると僕は積極的に就職活動を始めた
公務員試験も受けたが
計画的に勉強をしていたわけでは無かったので当然のように落ちた
それからは企業一本に絞って自分が少しでも興味のある会社を選んで30社ほどに資料請求をした
金融業、スーパー業、メガネ・コンタクト業、化粧品業、宝石業、商社など
夏休みの2ヶ月の間に10社ほどに絞って会社訪問をした
当時は会社訪問は8月に入ってからが一般的で
正式な入社試験は10月1日からと決められていた
ただうちの大学は企業のコネが弱く各人の努力で内定をもらってくるように
と言われていたので自分から売り込むしかなかったのだ
7月の初旬から会社訪問を始め10月の終わりまで就職活動は続いた
ある商事会社の会社訪問で偶然にアナグマと一緒になった
会社の説明会で話を聞いたのだがはっきり言ってあまりピンとこない会社だった
帰りにアナグマと一緒に大学まで戻った
二人で図書館の前を歩いているとコロコロに偶然会った
その時、じゃんけんパートで愛セツ連大会に向けてレポートを作っているのを知っていたから僕は
「レポートできそう?」
と聞いた
「まだ」
「コロコロはどこを書くの?」
「実践の流れ」
「へぇ~。頑張ってな」
「うん。じゃあ 」
そう言ってコロコロは去っていった
アナグマが
「おまえ、企業にアタックする前にあの子にアタックせんとあかんわ。あの子おまえに気があるぞ。顔を真っ赤にしとったが」
う~
アナグマは僕がコロコロに振られたことを知らない
しかしわざわざ実はフラれたんだ
と説明する気になれなかったので曖昧に笑うしかなかった。