「コロコロって、なんでそういうセツラーネームになったの?」
入セツ式が終わってから彼女に聞いてみると
「あのね、ドングリっていう人に似てるっていわれて、ほら『ドングリコロコロ』って唄があるでしょ。だからコロコロになったの」
「な~んだ、それでか。面白いつけ方だね」
「うん」
それからコンパになって各パートがそれぞれの出し物をやって飲めや歌えやのいつものパターンになった
12時頃にやっとバカ騒ぎが終わった
その後は「夜な夜な語ろう会」だった
これは特に決まり事はなく個人個人で適当に朝まで語ろうというものだった
僕は初めミッキーと話していた
「あたしさ~、この前に地下鉄で痴漢にあった!」
「え~!大丈夫だったのか?」
という話から最近のお互いのいろんな話をして
その後ターザン、タケさん、ポテト、ライアン、赤シャツのグループに合流してゲームをした
新入生も加えたかったので自分がコロコロを引っ張ってきて一緒に遊んだ
ターザンいわく
「アインシュタインの相対性理論に基づく指数関数の法則」というゲーム
と言っていたが
要するにコンパでやるようなその場を盛り上げる簡単な指を使ったゲームだった
「これ基本型。これがライアンで、これがポテト。じゃあこれは誰?」
という感じのものなのだが
それでも分からない人はいつまで経っても分からないゲームで結構盛り上がった
そんことをやっていて
ふと時計を見ると3時半を過ぎていた
まだコロコロが起きているので
「寝なくていいの?」
と聞くと
「ずーっと起きてれば大丈夫」
「少しでも寝たほうがいいよ」
「うん…」
「何の踊りだっけ?」
「あの~詩吟(しぎん)って知ってる?あの舞いで詩舞(しぶ)っていうの」
「級とかあるの?」
「明日がその級のテストなの」
そんな話をしてやっと寝たのは4時半だった
次の朝は8時頃にみんな起きた
外に出てみんなで写真を撮った
朝食後、用のある人は一足早く帰っていった
コロコロも同じ一年生のチッチと一緒に帰っていった
見送りの時にコロコロが何度も振り向いて僕の方を見ながら手を振ってくれたのがうれしかった
コロコロ可愛いなぁ…
一人でニヤニヤしているとライアンがやってきてボソッと言った
「あんた、公園の砂場からいちやく富士山の8合目まで登ってきたな」
ふっふっふ…あほか!
新歓合宿は昼過ぎに終了し
僕はライアンの車に乗せてもらって近くの電車の駅で降ろしてもらい家に帰った
楽しい合宿だった
頑張って入セツさせたコロコロもきてくれて楽しめたようで満足だった
自分にもほんのりとした甘い余韻が残って心が弾んでいた
家に帰るとオコシから手紙が来ていた
少し前に僕からオコシに近況を書いた手紙を送った返事だった
僕は震える手で封筒を切った
オコシの手紙は便箋3枚にわたる丁寧なものだった
そこには故郷に帰って保育士として保育園に勤めるようになった緊張した日々の生活が綴られていた
手紙の終わりにはこんなことが書かれていた
「学生の時はナッツさんに本当にお世話になりました。ありがとう…もっと早くからもっと気軽に話しができていたらなぁ…なんて思います。時々下宿で話しあったことを思い出しています。本当にきりがなくて楽しかった…カセットも録音したのをもらって…わたし『八ヶ岳』とっても好きです。懐かしい感じでよく聴いてます…本当にありがとう。こんな手紙でよければいつでも書きますから…お手紙待ってます」
うれしくて
僕は何度も何度も手紙を読み返した
夜になって机の引き出しから以前オコシの下宿で一緒に撮った写真を引っ張り出して眺めた
そこにはテーブルを前に並んで写る二人の姿があった
テーブルの上にはコーヒーカップが二つ
オコシのカップはピンク
僕のカップは黄緑
ペアカップだった
彼女は赤いハイネックのセーターに白地に黒い線のはいったカーディガン姿だった
ちょっと照れて頬を赤く染めている
僕は茶色のハイネックに白っぽいシャツに白地に紺色の格子柄のコート姿で
口を真っすぐに結んで緊張してこわばった顔をしていた
ふふ
緊張してら
そりゃそうだ
大好きな人と二人だけで撮った写真だもんな
写真だけみれば
まるで恋人同士のようだった
もし本当に恋人同士だったらどんなにか素晴らしかったことだろう…
懐かしいな
まだそんなに昔じゃないのにずいぶん前の事のように思えた
自分の中でオコシの事はもう終わった恋だとふんぎりをつけていたつもりだった
でも本当はどうなんだ?
近況を書いてくれた手紙をラブレターの返事のようにドキドキして読んでいる自分って…
それが自分の本当の気持ちだというのが分かった
でもコロコロに対して芽生えた気持ちも正直なものだった
いったいお前はどうしたいんだ
我ながらいい加減な奴もんだなぁ…
そんなことを考えつつ
いつの間にかウトウとしていた
だってさぁ
どっちも好きなんだからしょうがないじゃないか
結局そう開き直るしかなかった。