地下鉄の駅を出て
オコシの下宿に向かった

ドキドキしていた

一人で彼女の下宿に上がったことはまだ一度も無かったのだ

下宿の下まで来ると彼女の部屋の灯りがついていた

時間は9時を過ぎていた

女の子の下宿を訪ねるには少し遅くないだろうか
非常識な男だと思われないだろうか

ときめく心を抑えながら部屋をノックすると
しばらくしてから扉が開いた

僕の顔を見てオコシはにこやかな笑顔で迎えてくれた

「ひとり?」

「うん」

僕は自分でも情けないぐらいに緊張していた

彼女は

「何か食べる?」

と言ってトーストと紅茶を出してくれた

始めはぎこちない会話がだんだんとほぐれてきて
サークルに入ったきっかくとか
高校時代のクラブや勉強の話をするうちに話が乗ってきた

血液型の話やお互いのパート員の性格分析をした

「タゴサクさんはすごく強い人だと思う… 」

とオコシが言ったのがきっかけで

僕が

「チャリンコはすごく物事を正確にとらえて見通しを持てる子…」

「レモンは一言でいえば一途な子…」

「アブさんは誰とでも仲良くなれる子…」

「パーマンは…」

更にそれぞれの具体的な様子を話すと
身を乗り出して

「そうそう!」

と共感してくれた


そんな感じで
10時半で帰ろうと思っていたのが
11時になり
12時になり

やっと腰を上げたのが
1時過ぎになってしまった


4時間も話してたんだ
我ながら驚いてしまった

「面白かった。ナッツさんの知らなかった面が知れて楽しかった」

と言ってくれた


オコシの下宿を出ると何だか温かい気持ちになっていた

やっぱり彼女のことを好きなんだという自分を痛いほど感じていた


だがあと3ヶ月もすれば彼女は故郷に帰ってしまう
いったい自分は彼女にどうして欲しいというのだ


好きだという気持ちを伝えたい

でも彼女がその気持ちを好意的に受けとめてくれたとしても
彼女は卒業すれば遠い故郷に帰っていくのだ

そうすればもう簡単に会うこともできない

それにもし気持ちを打ち明けて
私にはそんな感情はない
と言われたらどうしよう

ミッキーの時のように
あんなことを言わなければ楽しいいい関係でいられたのに

そんな後悔だけが残るのではないか


後少しだけの残された時間を大切にしたいのなら
いまの関係で満足するのが一番いいのかもしれない

そんなことをとりとめもなく考え