3年生の後期はジャケイがキャップを引き継いでくれたので少し自由がきくようになった

その分ゼミや講義に身を入れようと思っていたのだが
ちょくちょく講義をさぼってはライアンやボッチ、ヌルヌルといったメンバーと喫茶店に行ったりドライブをしたりして遊び回っていた
時には下宿生の女の子のところに行って晩ご飯を食べさせてもらうということもよくやっていた


10月のある土曜日の夕方
家庭訪問が終わってからライアンと一緒になって
今日はオコシのとこに行ってご飯を食べさせてもらおうということになった

オコシの下宿に行くのは初めてだった
すぐには行けず道にも迷った末に彼女の下宿に着いたのは夜の8時過ぎだった

オコシの下宿は写真館の2階にあった
へぇ~
珍しいところに住んでるんだなぁ
と思いながらも階段を昇るとドキドキしてきた

ふぅ~と息をはいて
トントンとドアをノックするとオコシが驚いた顔で出てきた

「ちょっと近くまで来たんで寄ってみたんだけど、いま忙しい?」
と僕が聞くと

「ううん、よかったら入って」
と気軽に中に入れてくれた

彼女の部屋は女の子らしくきれいにさっぱりと整理整頓されていた
オコシは僕らに紅茶とお菓子を出してくれた
カメラの話、台風の話、おじいさんの話と変な話はかりしていたが
彼女も楽しそうに笑っていろいろ話してくれて盛り上がった
ライアンは緊張してあまり喋らなかった

行った時間が遅くてオコシはもう夕食が済んだみたいでご飯を食べさせて欲しいとはついに言えなかった

でも彼女との会話は心の底から楽しかった
10時すぎにライアンが

「そろそろ帰ろう」
というのでしぶしぶ腰を上げた

腹が空いていた僕らは結局、中華料理屋に行って遅い夕食を食べた

「ご飯食べさせてとは言えんかったな」
と顔を見合わせて苦笑いした


大学祭が近づいてサークルの独自企画で実践劇の準備をしていたある日
ライアンが

「今日はオコシの誕生日だろ。誕生会やるって…ヌルヌルが」

「よし、いこう」

ヌルヌルもオコシに好意を持っていた
ついでに僕らも便乗しようという訳だ

夕方近く腹が減ったのでとりあえずピアン(喫茶店)でライアンとアンポン(2年♂)とカレーを食べた
その後アンポンと別れてヌルヌルと落ちあって3人でオコシの下宿に向かった

下宿に行く途中で偶然オコシに会って
誕生祝いに来たというとすごく驚いていた

オコシはいまからお風呂に行くところだと言うので
僕らは買い物をしてから改めて行くことにして
ケーキとワインとプレゼントを買った

ワインはヌルヌルが選び
ケーキはライアンが選んだ
プレゼントは僕が本屋で選んだ絵本だった


ワインを飲んで焼肉を食べてケーキを食べて
いろいろ話をしてとても楽しかった
僕はワインで赤く頬が染まったオコシが可愛くてずっと見とれていた

オコシは話す時に必ず相手の目を見て話すので
僕と話す時はドキドキしてしまった
絵本をすごく喜んでくれたことがうれしかった

気がつくともう1時半を過ぎていた
もっといたかったけど帰ることにした


後期の係会はサークル対策部でオコシと同じ部だった
ある部会の時オコシが横に座った
オコシのもっていた定規が可愛かったので

「これ『りぼん』の付録でしょ?」
とふざけると

「買ったの!」

というので話し中だから

「し~!」

するとノートに

『かった!!』とか
『べ~!』

とか書くので笑ってしまった

その後ライアンとボッチと車に乗った時に係会でオコシと仲良く話してたことにライアンが嫉妬して
ねちねちといじめられた


ライアンが
「今夜はアンポンのとこに泊めてもらおう」

と言ったのでアンポンの下宿に行った

ライアンが
「入っていい? 」と聞くと
アンポンがおどけて

「ダメ。いまオコシが来てるの」
と言ったので笑ってしまった

アンポンもオコシのことが好きだったのだ

アンポンは二言目には

「○○ちゃん、○○ちゃん(オコシの本名)」
とうるさいくらい言っていた

みんなオコシに恋していたのだった


大学祭の前日
僕らがサークルの実践劇の練習をしてる時にオコシがやって来た
僕はみんなを引っかき回す子供の役だった
二つの実践劇を見て

「どっちもすごく考えてやってるみたい。すごくいいと思う」
と言ってくれた

「明日うちのクラスも模擬店をやるの。来て!4号館の前で細々とやっとるから」

次の日の実践劇はあまりお客さんが多くなかったもののジャケイや僕が熱演してまずまずの出来だった
その後オコシのクラスの模擬店に行くとオコシが店番をしていた

手作りの小さなぬいぐるみや紙粘土で作ったペンダントを売っていた

「本当にきてくれたんだ。ありがとう」
と喜んでくれてなんだか僕は照れながら説明を聞いた

「お勧めはねガラスを使ったペンダントかな。ほらすごくきれいでしょ」

「これはオコシが作ったの?」

「これは違う子が作ったの。わたしは下手だから。こっちのがわたしの」

と言って紙粘土で作った家のペンダントを見せてくれた

「じゃあね、これとこれちょうだい」

と言ってオコシが作ったもの2点を差し出した

「ありがとう。うれしい」

オコシは顔を赤くしてペンダントを紙袋に入れてくれた


その後大学祭が終わりサークルの打ち上げのコンパに出た
オコシは自分のクラスの打ち上げに出たので来なかった


その夜のコンパはひどかった
酔うほどに自分の目あての子を口説く奴が多くて一人の女の子を二人の男が取り合う場面があちこちで展開されていた

プッチをシツレイとアンポンで取り合い
ミッキーをタケさんとライアンで取り合っていた

若い男と女だから酒の席でそんなことがあるのは珍しくはない

だがその夜はひどすぎた

酒の勢いで女を口説くのは卑怯だ
そもそもこれはサークルのお疲れコンパなんだからみんなで楽しく飲むものだろう
僕はこんなコンパが嫌で嫌で仕方なかった

我慢が限界を越えて
僕は飛び出すように店を出て夜の町をさ迷った


オコシに会いたい


僕は彼女の下宿に向かっていた。