ミッキーへの手紙を最後に僕は彼女のことをキッパリと諦めることにした

冷静に考えると
もっと時間をかけて
友達としていろんな事を話せるようになっていければ良かったのかもしれない

だが一度火がついてしまった想いは勢いがついてしまって
なかなか冷静になれるものではない

未熟なアプローチだったがきちんと告白できたことはやはり自分としては後悔のないことだった


数日後、大学のベンチに座ってボーとしているとタマがやってきた
ちょうど昼時だったので近くの定食屋に行こうということになった

タマは豚肉のショウガ焼き定食
僕は鶏肉のからあげ定食を頼んだ

「ナッツ、お前下宿しろ。お前下宿せんからいかんのだ。だから女に手を出せないんや。まず自立して生活しなかったら一生一人もんやぞ」

とタマは味噌汁をのみながら僕に説教をした
タマの前歯についたワカメを見つめながら

「下宿は難しいけど、もうちょっと頑張るよ」

タマは僕がミッキーにアタックしたこともフラれたことも知らない
だから僕の煮えきらない態度に叱咤激励をしてくれたのだ

でも確かに下宿は魅力的だよなぁ

「そういえば前にシチューが言っとったジャガとキンキンはどうや?」


そういえばそんな話もあったなぁ
あの子達と初めて会った日のことを思い出した

あれは4月の終わり頃だった
講義が終わってサークル室でブラブラしているとドアをノックして3人の女の子が入ってきた

「ちょっと話を聞きたいんですが、いいですか?」
みんな1年生だった
僕が話し相手になった
すでに誰かからセツルの説明は聞いていたらしかった

「家庭訪問ってどういう風にやるんですか?」

「夏休みは8月からって聞きましたけど」

いろいろと話していくと
そのうち一人はマンガ研究会に入りたいと言っていたが

「どうする?」

「わたしは入るわ」

「じゃあ私も」

と言って結局3人ともその場で入ったのだ

それが、マルチン、ジャガ、キンキンだった

その数日後、1年生向けの入門講座をした時に
マルチンが
「この前、先輩が話してくれた夜、もらった新入生向け資料のセツラー紹介を見て、あの人はなんていうセツラーか、みんなで考えたんです。それでみんなでパーマンっていう人に違いないって言ってたんです。でもサークル室に行って聞いてみると違う人がパーマンだって分かって。それからみんな『旧パーマン』『新パーマン』って呼んでるんです」
と言ってみんなで大笑いした

その日家に帰ると気になり資料を読んでみると
パーマンの紹介はこんな風に書かれていた

「スケベさは天下一品。でも包容力のある落ち着きのあるセツラーです」

みんなどんな話をしとったんやろう…


結局彼女達3人はありんこパートに入った
つまりミッキーと同じパートだ

だからという訳でもないが
ミッキーが駄目だから次の人にすぐに切り替えることなど
できるはずもなかった

だから僕はタマに曖昧な返事をするしかなかったのだ


失恋のショックから立ち直る為に
僕はまたサークル活動に没頭した

というよりも他の3年生が愛セツ連の役員をしたり教育実習やら帰省でいない
他の1・2年生はひよったり退部したり
ゼミや自治会に行ってしまって
僕とジャケイだけで実践やパート会をすることも珍しくなかったのだ

夏のキャンプ実践、地域のぐるみの集中実践があって
8月の終わりにはまた運営委員会総括が始まった

今回は同じ学年の執行部が多かったので会議も楽しかった
会議が遅くなると
いままでよく泊めてもらったあぶさんやヌルヌルの下宿だけでなく
同学年のボッチや火星人の下宿にもよく泊めてもらった

僕と同じ自宅生のライアンもひょっこパートのキャップだった
彼はうちの大学では珍しく車で通学していたのでよく乗せてもらった
朝から晩まで一緒にいる時間も多く
自然と彼らとの交流も深いものになっていった

ボッチとは恋愛問題についてお互いに意見交換をしたり愚痴を言い合う仲になった
彼は1年生のゴクーという女の子にアタックして付き合い始めていた
彼の作戦はラブレターだった
それを聞いて自分もラブレターを書けばよかったかも
と思ったりもした


そうは言っても
活動総括は今回も楽しいものではなかった
今度もサークル員が集まる総括合宿に向けて4つの項目の文章化が割り当てられた

僕の担当は
「パートの実践」
「国民的闘いの一翼として」
「ブロック化」
「他の団体との提携について」

ややこしいものばかりだった

またまた一週間ほどかけて
大学のサークル室で朝から深夜まで話し合いが続いた

合宿の前までに書けたのは
「闘い」のみで
「実践」は8割
「ブロック化」は3割
「提携」はゼロだった

ほとんど家に帰らず
あぶさんやタケさん、
ボッチやヌルヌルの下宿に泊めてもらった


その年の総括合宿は岐阜県の馬籠の民宿に5泊6日だった

馬籠かぁ
いいよなぁ

でもどうせ行くなら純粋な旅行で行きたかったなぁ

総括合宿で行っても部屋に籠って朝から晩まで討論に明け暮れるんだもんなぁ


あっという間に総括合宿の当日になってしまった。