次の日に大学でミッキーの姿を探したが会えなかった
夕方の帰りに地下鉄のホームで電車を待っていると
階段からミッキーとウランが降りてきた
僕が手を振るとミッキーははにかんで手を振ってくれた
僕は無理に明るく振る舞って冗談を言って二人を笑わせた
途中で二人と別れて
こんな中途半端ではいけないと思い
夜に公衆電話からミッキーの家に電話をかけた
「明日 話したいんだけど」
「明日?いいよ」
「いつがいい?」
「2限目にサブゼミがあるから…3限目ならいいよ」
「じゃあ3限目にしよう。場所はえ~っと…児童公園は?」
「え~あんなとこまで行くの嫌だ。サークル室にしよう」
「う~ん、じゃあ図書館は?」
「ん~いいよ」
「じゃあそれで」
「うん」
話していてミッキーが冷めているような感じがした
やっぱり駄目なのかなぁ
弱気な気持ちが顔を出していた
悪い方にばかり考えるのが自分の情けないところだ
でもここまで来たら
当たって砕けるしかないんだから
次の日 大学の図書館で待っていると約束通りミッキーが来てくれた
「とりあえず出ようか」
と言って学生会館の屋上で座って話した
「いま正直いってどんな気持ち?」
「あたしさぁ、日曜日の話でもう終わったと思ってた。それで昨日地下鉄で会った時も前みたいに話せたから、あ~良かったって思ってたの。でも夜に電話がかかってきて、まだ終わってないんだなぁって思ったの」
そっか
あの階段のはにかんだような笑顔はそういう意味だったのか
でも僕は自分の想いを全力で伝えるしかない
自分がミッキーのことをいいなぁと思うようになった過程のことや
自分が高校時代どんな人間でサークルでどう変わってきたのかを話していった
「いままでナッツのことそんなに知らなかったし、いつも冗談ばかり言ってたでしょう。だからそんな風な人だって知らなかった。いままでのままじゃいけないの?」
「言ってしまったからには後にひけないよ。自分は自分なりに悩んで言ったんだもの」
「あんなこと言わなきゃ良かったのに。そしたら今まで通りにいられたのに」
確かにそうかもしれない
自分は焦り過ぎているのかもしれない
自分だけ盛り上がっていて相手の気持を置き去りにしているのかもしれない
「う~ん、ごめんね。結論は急がなくていいから、ゆっくり考えてみてくれる?」
「うん、考えてみる。あとで返事する」
「今日はちょっと強引すぎたかなぁ」
「うん。ナッツは自分のことは言ったけど、あたしの立場を分かってくれないみたい」
「うん、ごめん。でもどうしようもなくて」
「でもなんでそんなことを落ちついて言えるの?」
「落ちついてるなんて、そんなことないよ。日曜日だって迷いに迷ってやっと言ったんだよ。言った時なんか気が遠くなりそうだった。今日だって一言いいだすのにドキドキしながら言ったんだから」
「でもすごく落ちついてるように見える」
「そう見せてるだけだよ」
下を向いて考えてるミッキーの横顔が可愛かった
同時にこんなに困らせてしまって申し訳ないと反省していた
だが、恋愛に対して気の弱い自分がよくここまで言えたものだと自分に驚いていた
1時間半ぐらい話して彼女は病院に行くと言って帰っていった
腰が悪くて整形外科に通っているんだそうだ
そうなんだ
自分はミッキーのことをまだまだ分かってなかったのかもしれない
そうふと考えた
次の日に大学に行くと
ベンチにタマ(4年♂)がいたのでしばらく二人でアホな話ばかりしていた
最近タマとカール(3年♀)がよく話してるところを見かけるので
「タマ!カールとはどうなってるの?」
と聞くと
「とおっほっほっ。なんでや!そんなのあらへんて」
「じゃあ、リッツかオバコは?」
「そんなんいらんわ。ワシはミッキーがええわ」
驚いた!
ミッキーの名前が出てきたからだった
やっぱりみんなミッキーが気になるんだな
きっと僕では無理なんじゃないかなぁとまた弱気になった
そうしているとシチュー(1年♀)が通りかかったので3人で誰がいいとか
そんな話ばっかりになった
「前ね一年生が集まった時にナッツさんがいい、いいって言っとった子が二人おったんよ。あのね~ジャガとキンキンなん」とシチューが言った
「おっ!ナッツ君すごいやんか。モテモテやんか。ほっほっほっ」
なに?そうだったのか
二人ともいい感じの子だった
もっと早く言ってくれよ~!
それから一週間後
愛セツ連大会に向けて実践レポートを作る為にパート合宿をする事になった
パート会が始まる前にボッチ(3年♂)がきてそっと手紙を渡してくれた
ミッキーからだった
その時感じた
きっと駄目なんだろうなって
パート会の休憩にベランダに出てそっと手紙を開いた
「気持ちはうれしいけど、やっぱりつき合う気になれません。私の気持ちは変わりません」
ガーンという感じだった
やはり辛かった
一番キツかったのは
「この前『いまつき合う気はない』と言ったけど、それはウソ。もし自分を賭けれる人が現れたらその時はきっとつき合うつもりです」
自分では駄目なんだ
自分では駄目なんだ…
そんな想いが頭の中でこだましていた
その日の合宿で
僕はまったくの腑抜け状態だったことは言うまでもない
放心状態とはあんな状態のことなんだろう
合宿の後であぶさんの部屋の布団の中で僕はそっと泣いた
こんな風に3年の春に芽生えた恋心はあっけなく終わってしまった
恋愛というものは僕にとって難しいものだとあらためて感じたのだった。