総括合宿が終わって
心に決めた事があった
それはまず自分のできる事から一つ一つやっていこうという事だった


まずは家庭訪問でもっと積極的に子供と遊んで子供と仲良くなろう
そして実践で子供一人一人の様子や言葉をしっかりつかんでいこう
と心に決めていた


9月の終わり頃にまた大学が始まり通常の活動が再開された

僕はなかなか実践に出てこない子供や
実践でも生き生きできない子供とまず家庭訪問で遊んで仲良くなる事を心掛けた

例えば友美という小学3年生の女の子がいたのだが
彼女は時々実践にはくるけどドッチボールとか野球でうまくみんなの輪に入っていけない子だった

家訪でボール投げや野球の練習をすると
家訪に来るのを待ちかまえるようになって
「来るのが遅いよ~。トンちゃんずっと待ってたんだよ」
と言ってくれるようになって
実践でも元気に遊べるようになった

10月にはカンポックリを使った長期的な実践をセツラーが計画した
カンポックリは空き缶にヒモを通して竹馬のようにして歩く遊びだ
まずみんなで各人のカンポックリを作って最終的にカンポックリ運動会をしようという計画だ

子供達にやる気を持たせる為に進級表を作った
2級の豆先生
1級の豆校長先生
になると賞状がもらえるのだ

初めはみんな真剣にやっていたが
段々と難しい項目になってなかなかできないと投げ出して他のことを始める子供が出てきた
どうしたものかと考えているとアールからゲキが飛んだ

「子供から目を離してしまったらそれで駄目なんだ。勝手なことをしている子を見て何も感じないのか!」

厳しいなぁ
僕だってなんとかみんなで楽しめるように考えているのに

なかなかこちらの思ったようには子供は動いてくれない


だが少しずつ家庭訪問や実践で具体的な疑問や自分のできる事がつかめつつある手応えを僕は感じていった


11月には大学で学園祭があった
セツルメントとしては「子供の広場」という企画をして地域の子供達を大学に招待した

何度か実践で遊んでいる小学3年生の恵子、典代、真美もやって来た

恵子は面白い子で
「わたしの正体はオバケなの。ほらね」
と言って目を白目にして見せたり
「こないだの誕生日で101歳になった」
と言って笑わせてくれた

真美はなかなかの美少女だが僕を見つけると走って来てはいきなりボールをぶつけてきたり
からかうと蹴りを入れてくるようなワンパクな女の子だった
好かれているのか
嫌われているのか分からないのだ

典代はちょっと内気な子だが3人固まるとやたらと元気になるのだ

「未来の家」というところで段ボールとガムテープで好きな家を作った
でも途中から雨が降り出したので講義室に入って昼ごはんにした

みんな持ってきたお弁当を広げた

何も持ってこなかった僕は子供達から少しずつ分けてもらって食べた

昼食後は自由時間になった

真美が
「ナッツ、どうする?」
と聞くので

「ちょっと外を見てこようかな」
と言うと

「そんなら真美ちゃんも一緒に行く」

と言うので雨の降る中を相合い傘で二人で大学内を散策した

わんぱくな真実が僕についてくる事に内心驚いた
しかもいつも複数で集まる女の子が一人でくるのも珍しいことだった

いろんな模擬店を回り
蝶のアクセサリーと貝殻、水飴を買った

いつもワンパクな真美がとてもおとなしくていじらしくて可愛らしく思えた

女の子って初めから女なんだよって誰か言ってたけど
うん確かに男の子とは少し違うものだ

子供ってやっぱり可愛いな
僕もいつか結婚し女の子が産まれたら
こんな風に二人で歩くことがあるのだろうか


やがて2時になり子供達をバス停まで連れて行った

子供達を見送った後の解放感でセツラー同士で思わずバンザイをした


あぶさんとその後いろんな店で飲み食いして
結局、後夜祭まで出て
終わったのは9時頃だった

その後もサークルでコンパがあるというので迷ったが結局出ることにした

コンパには30人ぐらい集まった
カール(一年生 ♀)の四国の友達二人も来ていて

一人が色の白い髪の長い子で
もう一人はショートカットの目の大きい可愛い子でタニシと言った

バカボン(2年 ♂)がタニシの横に座ってずっと話していた

ちくしょ~!
やるなぁバカボン!

コンパは11時頃にお開きになり
まだもの足らないメンバーはミスタードーナツまで30分かけて歩いて行った

メンバーはあぶさん、バカボン、カマG(4年 ♂)、カススケ(1年 ♂)、カールとその友達二人と僕だった

僕はあぶさんとタニシと並んで話しながら歩いた

あぶさんは少し酔っていて
顔を赤くして上機嫌でベラベラと喋り続けていた

あぶさんったら
すごいんだから…負けるわ

ミスタードーナツのテーブルではその友達二人とあぶさんと僕が同じテーブルで話しが弾んだ

二人ともニコニコと話を聞いてくれるタイプで
話が盛り上がって本当に楽しい夜だった

女の子達を送っていくともう2時を過ぎていた

帰り道で男5人で並んで立ちションベンをした


とても月の明るい夜だった

みんなでジェレミーの下宿に押し掛けて雑魚寝をした


「バカボンすごいな~」

「ちくしょう、あぶとナッツめ!」

「あぶさんとバカボンめ、うまいことやりやがって。くやし~!」

などとお互いの事を言っては大笑いした

「やっぱりあれが女だぞ。タニシちゃん最高!」

そしてまたお互いに

「ちくしょ~、うまくやりやがって!」

と言いあうのだった


本当に

心から楽しい夜だった。