やがて大学は夏休みになった
しかしセツルの活動はまだまだ終わらなかった
パートの集中実践として初めてのキャンプと
地域全体の参加を呼びかける「ぐるみの夏祭り」の実践が待っていた
まずこの「ぐるみの夏祭り」を呼びかけるビラを作り
地域の全世帯に全戸配布をするのだ
これも初めて体験だった
子供のいない家はほとんどが無関心だったし
一軒一軒ブザーを鳴らして説明するというのは結構緊張したものだった
とりあえず家庭訪問を終えて地域の市場で焼きそばを食べているとサニーがやってきた
「昨日コンパで食べ過ぎてお腹が痛いから、ナッツ全戸配布やって」
とサニー
「駄目だよ、僕もさっき山内さんのとこでハチミツと酢とアルコールを混ぜたような変なものを飲まされておかしいんだ。サニー調子悪いなら浣腸したらいいよ」
「いやだ~!なんてこと言うのよ」
その時そばにいた小学校低学年の女の子が
「かんちょ~ってなに~?」
と聞いてきた
「ナッツ、ちゃんと教えてあげなさいよ」
とサニーが言った
「かんちょう、っていうのはね…つまり鳥のことだよ。ほら寒い地方にいる鳥でね、かんちょうヅルっていう鳥」
その会話を横で何気なく聞いてたシャワシャワ(1年♀)が突然大笑いをした
「やだもう!ナッツたら!子供にめちゃくちゃ教えちゃ駄目よ」
と言いながらみんなでまた笑った
ちょっと元気になって全戸配布に出かけた
40件配り終えると夏だというのに真っ暗だった
パートの集中実践である小学3、4年生のキャンプは過去にやった事がなかった
セツラーがいるとはいえ子供達だけでご飯作りや後片付け、それにホームシックにならずに1泊するのは
この年令では難しいといわれていたからだった
それにあえて今回挑戦してみようという訳だ
4つの班にわけて一つの班にセツラー2人、子供が男女混合で6人ほどだった
班の名前を考え
班の旗を作り
係を決めて準備完了
セツラーも子供もドキドキのキャンプが始まった
バスと電車を乗り継ぎ約2時間
山あいのキャンプ場に着いた
流れる谷川の水が冷たくてきれいだった
さっそく子供は水着に着替えて川遊び
楽しそうに弾ける子供の姿にみんな笑顔になった
テントを張ったり
飯ごうでご飯を炊いて
カレーを作った
少し焦げたご飯にかけたカレーは最高に美味しくて
みんなオカワリをしてカレーも見事になくなった
それからキャンプファイヤーをやった
薪に火を点火していい感じになったところで各班ごとにスタンツをした
歌とちょっとした振り付け程度のもので
僕らの班は「手のひらを太陽に」をやった
個人でとしひさが一人で落語をやって盛り上げてくれた
テントに帰っても子供達はなかなか寝れないらしく外に出たがるので心配になった
朝はサンドイッチと牛乳で朝食にして
飯ごうでご飯を炊いて昼食用のおにぎりを握った
ところが後片付けになるとみんななかなかやろうとせずに遊びだしてしまった
楽しいことはやるが
楽しくないことはやらないのか
そう思うと腹がたった
他のセツラーも同じ思いらしい
根気よく子供一人一人に話しかけていくがなかなか思うように子供は動いてくれない
やはりこの年でキャンプをする事は無理なのかもしれない
純二に
「昨夜はぐっすり眠れたか?」
と聞くと
「全然寝れなかった。オレ30秒ぐらいしか寝てない」
と言うので笑ってしまった
昨夜の見回りで純二がイビキをかいて寝ていたのを知っていたからだ
3時頃のバスでキャンプ場を後にした
電車の中ではほとんどの子供達が寝てしまった
その笑顔はとてもあどけなく可愛かった
子供は憎たらしい天使だ
夕方に地域に着くと
たくさんのお母さんがお迎えに来てくれていた
帰り際うちの班だったみよに
「キャンプどうだった?」
と聞くと
「すごく楽しかった!また来年も行きたい!」
と言ってくれた
正直来年はもうキャンプなんて行くもんか
と思っていたが
その言葉でまた来年も連れて行ってあげたいな
と思ってしまった
子供達がみんな帰った後でセツラーで喫茶店に行った
「もうキャンプはこりごりだよ」
みんな疲れた顔でそう言ったのだった
次の日ぐらいは休みたかったのだか
パート討論と「ぐるみの夏祭り」の全戸配布の準備があるというので昼から大学に行った
ガリ切りをした原稿を印刷板にかけて1000枚をスッティングしなくてはならない
アールと交代で二人でスッティングをした
終わる頃には手のひらが真っ赤になってしまった
そんな二人をケータが見ていた
ケータは2年生の男で400CCのバイクで通学している哀川翔に似た感じのカッコイイ先輩だ
「ナッツ!お前は実務の神様だな!」
なはは
実務で褒められるのも悪くないものだ
まだまだ僕らの夏休みはやってこなかった。