パルカとは何者だったのだろうか?


空から降ってきた
女の子の姿をした爆弾のパルカ

彼女は明るく積極的でサトシを半ば強引に遊園地に誘う


一方同級生だったハルカは心臓の病を背負って生きている内気な女の子だ
その持病の為によく学校を休み
多くの時間を病院で過ごした
だから話す相手も医師や看護師
大人を話し相手にしてきたハルカにとって
同級生は話しづらい相手だった

一度だけ話したサトシとの帰り道
彼女は
「一度遠山君と話してみたかったの」

と言った

不思議な顔をするサトシに
「ほら、遠山君ってよく外の景色を見てるでしょ。わたしも窓の外を見るのが好きなの。それに遠山君のオデコってお父さんみたいだから」


教室の中で勉強している同級生の中で
ハルカはきっと自分はみんなと同じように長生きすることはできないと知っていたのではないだろうか

長生きできない自分に学校の勉強なんてどんな意味があるというのだ
そんな孤独感から
つい外の世界を眺めながら
さ迷う心の居場所を探していたのではないだろうか

その教室の中で同じように外を眺めるのが好きなサトシに仲間意識をなんとなく持ったのかもしれない

幼い頃に父を亡くしたハルカにとって
親父っぽいオデコのサトシはもしかしたら
唯一自分を理解してくれる同級生になってくれるかもしれない
そんな想いを秘かに彼女は抱いていたのではないだろうか


二人で丘に登った時にハルカが言った

「いまキスすると、きっと甘いよ」

という言葉は
彼女なりの精一杯の愛の告白だったのに違いない

爆発しそうな胸の高まりに耐えてやっと言ったのに
それに応えてくれなかったサトシに
もうそれ以上は積極的になれなかったハルカは
それ以降学校でもサトシを遠くから見つめるだけになってしまった

それでもきっと彼女は信じていたのだろう
いつかサトシが自分のことを救ってくれると



空から降ってきたパルカは病院のベッドで病に負けそうになった彼女の
もっと生きたいという分身だったに違いない

ふと思い出してくれたサトシに反応して
もう一人の彼女が思い残した感情を伝える為に現れたのだ

もうすぐ死を迎える彼女にとって
若くして一人で死んでいくことはとても耐えられないことだったのだろう


みんな今も未来にも
明るい世界など感じてはいない
それならいっそみんなも爆弾で吹き飛んでしまえばいい
みんなと一緒に死ぬなら怖くはない
わたしは爆弾になろう

わたしの心臓が爆発する時に
爆弾は爆発するのだ


わたしの心臓を爆発させるのはやはり遠山君しかいない

遠山君とデートして
遊園地でいっぱい遊んで
一緒にプリクラを撮って
手を繋いで
キスをする

そう
普通の恋人同士のように

ずっとそんな風になりたいと思っていたのだから

最後にキスをして
遠山君と一緒に爆発したい
この世にさよならをしたい
それならちっとも怖くない

そんな想いがもう一人のパルカをこの世に出現させたのではないだろうか



しかし
サトシはパルカにキスすることはできなかった


彼もまたハルカに惹かれていたのに違いない
自分の未来にも絶望していた
2浪して大学に入ったってどんな仕事につけるというのだ
楽しい明るい未来なんて幻想に過ぎない
この世なんていっそ無くなってしまえばいい

だが目の前にいるパルカは確かに爆弾だ
汗や涙を流しただけであれだけの爆発をしたではないか
それにこの町に住んでいる罪もない人々を自分達の身勝手な考えで巻き添えにして爆発していいはずはない

いま付き合っているカスミはどうなんだ
彼女の人生までも奪っていい訳もない
もしかしたら自分の人生の中にカスミと結婚し二人で家庭を築くという未来だってあるかもしれない

そんな思いが最後の最後にキスできなかった要因だったのだろう


高校時代に一度だけ一緒に帰り丘に登り話した二人
あの時確かにお互いに惹かれあった
だが次の日にそっけない態度をみて
あれは自分の勘違いだったと思ってしまったサトシ

それでもずっとサトシを思い続けていたハルカ

数年の月日が流れ
サトシに恋人ができたとしてもそれは仕方ないことだ

だがその事にやっと気づき
自分一人で旅立って行った少女の心情を思うと心が痛む


人が人に恋をして相手を想う気持ちというのは
どんな人でも美しく切ないものだ


自分だったなら
それだけハルカが自分のことを想っていてくれたのなら
せめてキスをしてあげれば良かったのに
と思う

そうしたらパルカは本当に爆発したのだろうか

爆発してパルカもサトシもその町の人々もみんな消えてしまったのか?

それともパルカとサトシだけが爆発してこの世から消えてしまったのか?


いや
例えキスしたとしても
パルカだけが小さく爆発してこの世から旅立って行ったのではないだろうか

ハルカのこの世の心残りは高校時代のあの気持ちを最後にきちんとサトシに伝えたかっただけなのだと思う
若くしてこの世から去らなければならない運命に絶望しながらも
サトシにだけは自分のことをずっと忘れないでいて欲しい
自分の気持ちをしっかり伝えたい

だから最後にキスしてくれたらハルカは何の心残りもなく自分だけ爆発して満足してあの世に行けたのではないか

しかし人の心は少しずつ移りゆくものだ
それは誰も責めることはできない
最後にハルカは自分の胸に秘めていた想いを伝えることができて
同時に失恋も味わったのだ

自分の中に結論を得て旅立っていけたのだと思いたい

そしてサトシの中にも
新しい何かが生まれたのだと思う
いままで何の希望も持てなかった自分の未来
だがこの不思議な体験の中で
例え未来がどんなに絶望しか待っていなくても
生きてみなくちゃ分からないじゃないか

自分にはどんな未来が待っているのか
それが見たい

そしていつかまたハルカに会える日に
未来はこんなにも素晴らしかったよ
そうハルカに教えてあげよう

パルカとの出来事はサトシの心の中に新しい火を灯したのだ
彼はこれからハルカの分まで自分の人生を大切に生きていくに違いない

そしてきっとサトシは生涯ハルカのことを忘れないだろう






そう思いたいな。