予備校に通う2浪の遠山サトシは模試の成績が一向に伸びず
やけになって屋上で途方に暮れる
彼女のカスミがやってきてサトシを励まし
オデコにキスをする
「遠山のオデコはオヤジっぽいけど結構好きだよ」
そう言って教室帰っていく
サトシはコンクリートの地面に仰向けになり空を見上げる
「オヤジっぽい…」
そういえば
誰かにも言われたっけ
彼は高校時代に同じクラスだった長峰をふと思い出す
「あいつどうしてるんだろう。元気かな?」
その時
空から何かが降ってくることに気づき思わず立ち上がる
空からはなんと
セーラー服を着た女子高生が降ってきたのだ
これは大変だ!
なんとかして受け止めないと!
落ちてきた女の子をなんとか受け止めたものの
その反動で二人とも体を強打する
イテテテ
あっ、お前は…
「長峰?長峰ハルカ?」
と言うサトシに
「微妙に違います。私はパルカです。パルカは爆弾なのです」
と答える
信じない彼にパルカは胸の
「トキメキ・ルームズデイクロック」
という時限装置をみせてその時計が12時になったら
「ドッカーン!となる訳です」
と自分が爆弾であると説明し
トキメキ度が最高に上がった時に爆発するのだという
「そういう訳でおデートをしましょう」
と言ってサトシを遊園地に誘う
二人は遊園地でティカップやジェットコースターに乗ったり
池でボートを漕いだりしてまるで恋人同士のような一時を過ごす
「今度はこれいきましょう」
と二人でプリクラを撮りサトシの携帯の裏にその写真を張り付ける
「わたしのこと忘れないでくださいね」
二人が遊び疲れて池の近くで一休みした時に
サトシはふと考えた
「やっぱりこの子は長峰ハルカとは微妙に違うみたいだ」
サトシはパルカを見て高校時代の同級生だったハルカを思い出す
あれは放課後の玄関で帰ろうとしていた時だった
苦しそうにうずくまっていた彼女を見つけ
思わず駆け寄り
言われるままに
彼女のカバンから薬を取り出して渡した
苦しそうに息をしていた彼女が
薬を飲むと次第に落ち着きを取り戻していった
そのまま二人は一緒に帰り道を歩いた
「ねぇちょっと寄り道していかない?」
ハルカはサトシを彼女のお気に入りの小高い山の上に誘った
そこからは二人の住む町並みが一望できた
ハルカは町の中心部を指差して言った
「わたしよく想像するの。あの辺に爆発が落ちるところを。ドカーンって!それでね、街や人も吹き飛んで、誰もいなくなった廃墟の上に真っ青な空と真っ白な雲だけが残るの」
「長峰って怖いこと考えるんだ」
「うん、そうだね。でもすっごくきれいなんだよ」
「さっきの薬はなんだったの?」
「ニトログリセリン、心臓の薬なの。…知ってる?ニトロって甘いんだよ。だからいまキスするときっと甘いよ」
サトシはドキマギしながらも
「へぇ~」
というだけだった
あれは
「キスしてもいいよ」
っていう意味だったのか?
でも僕にはそんな勇気は無かった
次の日学校で会っても
ハルカはそっけなく挨拶しただけだったから
特別な意味はなかったのかもしれない
それから3年生になり
クラスも別々になってハルカと話すことも無くなってしまった
高校を卒業してからは一度も会っていない
目の前のパルカは
彼女にそっくりだったがはやり違う人間のようだった
「暑いですね」
と言ったパルカの額からこぼれ落ちた汗が
地面に落ちて爆発した
慌てるサトシに
「だってパルカは爆弾ですから。最後はドッカーン!って爆発して、そうしたら関東全域ぐらいはぶっ飛ぶかな」
サトシは驚き
「なんでみんなも一緒に爆発しなくちゃいけないんだ。死にたけりゃ一人で勝手に死ねばいいじゃん」
と怒る
パルカはその言葉に驚き傷つき、一粒の涙を流す
涙は地面に落ちると爆発しサトシは吹き飛ぶ
パルカはたまらずその場から走り去り
サトシの前からいなくなる
言い過ぎた自分に気がつき慌てて彼女の後を追った
だがどこにも彼女の姿はなく途方に暮れる
パルカが実はハルカと同一人物ではないかと考えたサトシは
二人で行ったあの丘の上に行く
パルカはそこにいた
「お前さぁ、やっぱり長峰ハルカだろ?」
「みんなきっと思ってるんだよ、誰かがこの世界なんて爆発させてくれないかって。だから二人で爆発させちゃおうよ。ドカーンって吹き飛ばして、二人の愛だけを永遠に残そうよ」
彼女の時限爆弾の時計はあと少し
「ドキドキのクライマックスだよ。きっと甘いよ」
と言って目をつぶり唇を向けるパルカ
そんな彼女に自分の唇を近づけるサトシ
少しづつ近づく唇
あと1センチ
だがどうしてもキスができないサトシに
「なんで?」
「……」
「そっか…遠山君の未来は他の誰かのものなんだね。そっか、そっか…私はずっと遠山君のことが好きだったのに。遠山君は他の人のことが好きなんだね」
「長峰、オレお前のこと…」
「残念、時間切れ……ばいばい…遠山君」
手を振るパルカの流した涙が地面で小さく爆発して
その煙と共にパルカは消えてしまった
その夜
長峰ハルカが長年患っていた心臓の病気で亡くなったと実家に連絡が届いた
彼女が息を引き取ったのはちょうど二人が公園にいた時刻だった
葬式に出席したサトシに母親がやって来て
ハルカの遺言で形見を受け取って欲しいと懐中時計を渡す
それは彼女の死んだ父親の形見で彼女が大切にしていた宝物だと言う
もう壊れて動かない時計
それはパルカが胸につけていた自爆装置の時計だった
葬式を終えてサトシはまた予備校に帰ってきた
屋上に登って空を見上げてハルカのことを考えた
ふとサトシが携帯を取り出してプリクラのシールを見ると
そこに二人で撮ったはずの写真に
パルカの姿はなく
サトシ一人だけが写っていた。
「世にも奇妙な物語・秋のスペシャル」より