中学時代のクラスメイトだったNは
絵に描いたような優等生だった
成績は常に学年のトップ3
スポーツもできて
男前だった
しかも単なる真面目な優等生ではなく
バカな冗談を飛ばすことも得意でみんなから好かれていた
もちろん彼は女生徒の憧れの的だった
彼は自分にも厳しかったが
他人にも厳しかった
バスケ部のキャプテンだった彼は
試合でミスした者をよく叱っていた
Nの口癖は
「お前の限界はそんなものじゃない」
だった
今思えば
それは中学生が口にするゼリフとしてはずいぶんとませた言葉だった
のんびり屋の僕と彼はほとんど接点はなかったが
修学旅行で偶然同じ班になった
夕食も終わり広間で寝る時に
彼は僕のとなりの布団だった
もうみんな疲れて寝てしまった深夜だった
Nが話かけてきた
他愛のない話をいろいろとした後
「なぁ、家族って生まれた時から家族なのかな?それともだんだんと家族になっていくのかなぁ?」
とNは言った
変な事を言う奴だなぁと思いながら
「そりゃ始めから家族なんじゃないか」
と言うと彼は
「…そうだよな」
と彼は寂しそうに呟いたのを覚えている
やがて彼は市内で一番の進学校に進み
僕は中ぐらいの高校に進学した
風の便りによれば彼はその進学校でも
常に学年で5番以内を争っていたようだった
高校2年の夏休みにNから電話があった
同窓会の連絡だった
僕は気が進まなかった
頭のいい奴と同窓会で顔を合わせても楽しい事などないと思ったのだ
「たぶんいけないな、その日は用事があるんだ」
僕は嘘をついた
でも何故か彼はなかなか電話を切ろうとせずに
中学時代の思い出話を長々と話続けた
僕が話疲れてそろそろ電話を切ろうとした時に
ポツリとこう言った
「俺な…実は本当の子供じゃないんだ…つまりさ養子なんだよ。俺がもっと頑張れば父さんは俺を誇りに思ってくれるかな」
初めて聞く話だった
おそらくこの事を知っている同窓生はほとんどいなかっただろう
僕は何故たいして親しい訳でもない自分にそんな重大な話を打ち明けたのかNの気持ちが理解できなかった
ただNが中学時代のような明るさが無くなってきている事だけは会話の中で感じていた
「驚いたよ…でもさ…そういう家庭ってあるんじゃないかな。あまり気にし過ぎるとかえってよくないんじゃないかな」
そう言うのがやっとだった
「…そうだな…うん」
そう言うとNは電話を切った
それから何年か過ぎ
僕は県内の私立大学に進み卒業後就職した
Nから連絡がくる事はなかった
僕はだんだんとNの事を忘れていった。