春の夢は
落ちていく
突然意識を切断されたように
深く深く
奈落の底に落ちていく
いくら落ちても
底にたどり着くこともなく
果てしなく
落ちていく
僕は
薄れていく意識の中で
いろいろな人達と出会った
幼い頃に
泣いている僕の涙を
「おやおや」と言いなから
ポケットからだしたハンカチで拭いてくれた近所の優しいおばさん
小学生の夏の夜
肝だめしだと言って真っ暗な神社の裏の森に連れて行ってくれた二つ上のやんちゃな隣の兄ちゃん
中学校の行き帰りによく見かけた
一学年下の体の弱いとても綺麗な髪の長い女のこ
いつも笑顔でダンディで
洒落た服を着て
カッコイイ車に乗っていた親戚のおじさん
みんな笑顔で手を振っている
懐かしいな
みんな大好きな人達だった
こんな風に
みんなにいっぺんに会えるなんて
最近会ってないから
どうしてるのかと思ってたんだ
あぁ
なんだか幸せだよ
みんなの顔を見たら
自分自身がとても素直で
穏やかな気持になれるよ
あぁ
桜が綺麗だね
ほら目の前の
川沿いに満開の桜がずっとずっとどこまでも続いているよ
どの桜の木も
みんな満開で
薄いピンクの花びらを枝いっぱいに重たそうにつけている
まるでたくさんの綿菓子のようだね
あぁ
風が気持いいね
爽やかな中にも温かい匂いを含んだ春の風だね
ほぅら
風が吹くたびに桜の枝が揺れて
花びらが雪のように舞っているよ
なんて綺麗なんだろう
ずっとずっと見ていたいね
でも
みんなどうして喋らないの
どうして
どうして黙って笑っているの
みんなに聞いて欲しい話が
いっぱいあるんだ
会ったら話そうと思ってことがあるんだ
えっとね
えっとね
なんだっけ…
何が言いたかったのか
全然思い出せないや
みんな
みんな…
そういえば
みんなあれからどうしてたの
全然見なかったけど
遠くに引っ越したの
あれ
あれ…
そうか
そうだった
みんな
みんな
もう
死んじゃったんだよね
やっと思い出したよ
これは夢なんだね
夢の中でしか会えないから
会いにきてくれたんだね
そうだね
うん
ありがとう
本当は
みんなと同じところに行きたいけど
まだしなくちゃいけないことがあるから
また
夢で会おうね