Aとは中学以来の友人だった
長い付き合いで
お互いに独身の頃はよく飲みにいったり
二人で旅行に行った事もあった
結婚してからは
なかなか会えなくなったものの
2ヶ月に一度は会って夕食を共にし
語り合う仲だった
二人のやり取りは
漫才の掛け合いのようにお互いにふざけ合ったり
茶化したりしながら
その場を盛り上げるのが常だった
先日久しぶりに奴に会って居酒屋で食事をした
お互いに酒は弱いのだがAは珍しくワインを飲んだ
酒の弱いAはすぐに真っ赤になり
だんだんと説教口調になっていった
「今日はな お前に文句を言わせてもらうぞ」
何やら険悪なムードになってきた
「だいたいな、お前は俺の事をバカにしとる」
ん?僕は逆にいつもAにからかわれていると思っていた
「俺は確かに結婚に失敗して、仕事も挫折した」
Aは離婚をしたが10歳も若い女と付き合っていた
確かに銀行を辞めて今は独立して事業を始めているが
収入はAのほうが遥かに多い
「俺には、お前しか友達がいないんだ。お前にとって俺は10分の1の友達かもしれないが、俺はお前に捨てられたら一人ぼっちなんだ。だから…お前に俺はしがみついているんだ!」
とんでもない
僕だって友達と言えるのはAをいれて二人しかいない
「今日は、言わせてくれ。これでお前が嫌になったら、俺達の付き合いは今日で終わりにしよう」
待ってくれ
それは困る
「お前はな、単なる友達じゃないんだ、夫婦とか、家族とか、それと同じに、欠けてるもらっちゃ困る存在なんだ。でもな、これでお前が嫌になったら終わりにしよう。どうだ?」
どうもこうもみんなAの勘違いだ
僕は心底Aをバカにした事はない
あれは僕達の掛け合い漫才だったはずだ
まさかAがそんな風に思っていたなんて…
僕は自分の気持ちの全てを伝えた
以前会う約束したのにキャンセルした時の事情もすべてを話した
「そうか、そうだったのか、分かった!分かったから、『俺を愛してる』って言ってくれ!」
なんだって?
いくらなんでも
男同士で愛してるはないだろう
「だめだ!だめだ!!言ってくれ!!」
……
……
「…愛してるよ」
「俺も愛してるぞ!!」
こうして誤解は解けた
しかし
その晩は
なかなか寝付けなかった…。