何も見えない真っ暗な闇の中を
僕は誰かに手を繋がれて歩いている


目は開いてるのに全く何も見えない
どんな人と手を繋いでいるのかも分からないのに
何故か恐いという感情は無かった


だんだんと冷静になってきて
手を繋いでいる相手の事を考える


小さな手だ
柔らかくて 温かい

そう…子供の手だ


この子はどこへ僕を連れて行こうとしているのか

ここはどこなんだろうか



なんだか足元に砂利のようなものを踏みしめているような気がする

真っ暗な中を歩き続けるという事は
どれだけ歩いたのかという時間も距離も把握できないものだなぁ



僕はそんな事をぼんやりと考えながら歩いている


少しづつ暗闇の中から道がうっすらと見えるようになってきた


僕の手を引いているのは6、7歳ぐらいの少女だった


髪の毛が長く
黒いワンピースを着ている

「どこへいくの?」
僕は少女に聞いた


「…もうちょっとだから…」

少女は僕に背を向けたままで呟いた



真っ暗な道の遥か向こうに
大きな山のようなものがぼんやりと見えてきた

「あそこまで行くのよ」

少女はきっぱりと言った


まるで大人の女が言ったような気がして
僕は奇妙な気持ちになった



まてよ
あれは…
山ではない



それは
とてつもなく大きな船だった


今まで見てきた船とは比較にならないほどの大きな船だった

僕は驚きのあまり言葉が出なかった


それにしても
信じられないほど大きな船なのに
なんだか大昔の船のような気がした


なぜなら
全面が長い時を経たような木造の外観で
しかも錆びついた金属で木と木をつないでいたからだった


僕らはやがて
船のすぐそばまでやってきた


少女が振り返った

あっ!

僕は少女の顔を見て驚いた
見覚えのある顔だったのだ



「このものの身を渡らせたまえ、このものの身を渡らせたまえ。」

少女は囁くように言った



僕は気が遠くなって

その場に倒れた…





次に僕が目を覚ましたのは
病院のベッドだった

僕は友人と海でボートに乗って転覆し
溺れたのだ



医師が
「助かるなんてなんて運のいい人だ。奇跡と言ってもいい」
と言っていた


僕は点滴の液が落ちるのをじっと見ていた


あの少女の顔は…


あの時
確かに知っている顔だと思ったのに

もう顔すら思い出せないのだった


一体君は

誰だったのだろう。