小雨の降る朝に
出掛けた


いつもなら朝日が出ている時間だが
雨で煙っていて薄暗い


寒い…


こごえそうな手を
ポケットに突っ込んで
堤防沿いの道を歩く

むこうから誰かがやってくる


暗いせいか人の姿がぼんやりしている


僕はうつ向いてしばらく歩く


ふと顔を上げると

その人との距離が縮まっていない事に気がついた


おかしいな

おかしいな


向こうはこちらに向かっているのに全然近づいていない


周りを見渡すと他に人影もいない


いつもはもっと人がたくさんいるはずなのに…



いつの間にか霧がでてきたようで視界が遠くまで届かない


お互いに向き合って歩いているのに
近づいて来ないのはどうしてなんだろう

それにあの人…


距離が離れているからぼんやりしてるのではなく

体の輪郭や
顔だちがはっきりしていないような気がする



周りの景色が
いつの間にか変わっている


僕の歩いている道は
幅の広いどこか古びた
土の真っ直ぐな道になっている


ずっと続く真っ直ぐな道の先には

大きな山が正面に見える…


なにか嫌な感じだ…


昔 大工棟梁の書いた本を読んだ事がある

家を作るにはいくつかのタブーがある


裏鬼門 表鬼門 

扉を真北 真東 真南 真西に作らない

真ん中の道は

神様の通る道…


人間は決して通ってはならない



この道は
もしかすると…



いつの間にか
僕の後ろにたくさんの人がいる


僕の後についてきているような

ずっと先の山に引っ張られているような

どの人も顔がはっきりしない

黒くてぼんやりとした固まりのような顔


僕は止まる事も
引き返す事もできずに


ますます霧雨の濃くなってきた道を


歩き続けていく…。