寒い夜
嵐のような風が吹き荒れ
何かがドアを叩く
怯える我が子
怖いよ
痛いよ
離れたくないよ
側にいて
ハァハァ…
苦しい
荒い息
弱々しい心音
弱音を吐かなかった子が
クンクンと鳴く
もう点滴もした
何もしてあげれない
こんな夜に連れて行く事もできない
どうしてあげたらいいのか解らないまま
大丈夫
側にいるよ
話しかけながら
身体中を撫でた
ガタガタと震える体を
背中から抱きしめ
寄り添い
楽しかった思い出を耳元で話した
きっと明日は晴れるから
お散歩に行こうね
もうすぐ桜が咲くよ
またお花見したいね
気がつくと腕の中でも
静かな寝息
一瞬恐ろしい想像をして
胸に耳を当てる
良かった心音が聞こえる…
…
一年前の3月6日の朝…
4時?
寝てしまった
リン?
寝てる?
薄めを開けるリン
良かった…
落ち着いたんだね…
いつもの朝…
これなら仕事に行けるね
朝の支度を始める
父父も仕事に行った
朝7時前
抱っこバックに
軽くなってしまったリンを包み抱きしめて
お散歩に出る
ゆっくりいつもの道を歩く
顎を肩に乗せ
首に巻き付くようにして
いつもの公園
抱っこバックから手足を出させ体よ支えながら
1歩2歩…歩く
長い首を下げて匂いを嗅ぐ
くるくると同じ場所を歩く
おしっこ出るかな?
あっ出来たね
当たり前が嬉しい
いい子だね
偉かったね
頭を撫でると
嬉しそうな顔
まだ寒い朝
抱き上げてコートに包み込む
途中
ヒーン
ヒーンと鳴かれ…
どこかいたいのかな?
抱き直そうと公園のベンチに寝かせた
薄め目を開けて景色を見ているみたいだったから
少し休んで
抱っこバックに寝かし直して
早く暖かいお家に帰ろう
仕事は早退しよう
病院で薬を貰わないとね
大丈夫だよね
…
寝てるの?
…
えっ…
まさか?
…つづく…