TBS系で4月18日から5月3日までの土、日に放送されたドラマ『JIN~仁~レジェンド』のすべて土日の午後2時から3時間弱という長丁場にも関わらず、全6回がすべて2桁視聴率だったことが分かった。同ドラマは一期は09年、完結編は11年にそれぞれ放送。今回はそれを再編集して放送した。 2日放送回は10・6%、最終回となる3日放送回は11・3%だった。

 

 

 

普段ならば外出が多い時間帯だが、緊急事態宣言を受け、在宅率が高まったことも影響したと考えられる。 また、ドラマ内でたびたび映った手術シーンでは、主人公やその弟子達がゲホゲホ布マスクを着用しており、ネットでも話題となった。大ヒット要因となった3つの理由・・・

 

主人公(大沢たかお)が感染病コロリ(コレラのこと)の治療に奮闘したり、多くの人類を救うことになる新薬ペニシリンの普及に寄与したりするエピソードが、いま、新型コロナウイルスに不安を覚え、一刻も早く特効薬が求められるわれわれにとって、非常にタイムリーに映る。

直近大ヒットした日曜劇場『テセウスの船』と同じく現代人が過去へタイムスリップ。「未来を知っている主人公の行動によって歴史が変わってしまうのか問題」がスリリング。

 

「神は超えられる試練しか与えない」というメッセージに励まされる。

 

 

 

 

 

「このドラマは、現代に生きる脳外科医・南方仁(大沢)が、ある事件をきっかけに江戸幕末にタイムスリップ。当時猛威を振るっていた感染症と向き合い、身の危険にさらされながらも、人の命を救おうとする医療従事者の生き様を‘09年、‘11年『JIN-仁-完結編』と二度に渡って描いたヒットドラマ。

江戸の街に伝染病
”コロリ(コレラ)”が蔓延して医療崩壊に見舞われる様、隔離と予防が感染を弱める要素など苦境に立ち向かう南方仁の姿が、
・・・新型コロナウイルスと格闘する医療従事者や、感染拡大に苦しむ、我々自身の姿を見るようで胸に迫るものがあり共感を呼んだ。緊急事態宣言を受け、在宅率が高まったことも追い風になるなど、再放送であっても高視聴率を叩き出した背景にあったと思える」(報道番組関係者)

 

 

 

 

しかも時代は幕末の動乱の最中。”禁門の変”が勃発して、京の都は焼け野原。独力で開発した治療薬・ペニシリンも底をつき、救えるはずの命も救えず「俺は無力だった」と天を仰ぐ、大沢たかお演じる南方仁の演技にも胸が締め付けられる。主演の大沢たかおは・・・

「同じ時代に生きる仲間たちと支え合い、皆で試練を乗り越えて行く姿を是非ご覧ください。“神は乗り越えられる試練しか与えない”

とコメントしている。ドラマの中でも繰り返し語られるセリフ“神は乗り越えられる試練しか与えない”。この言葉こそ、東日本大震災で心が折れそうになっていた我々を、一体何度励ましてくれたことか。その名言と共に甦ったドラマ「JIN-仁-」には、あまり語られていない秘話がある。

大沢たかおの俳優人生も、試練に継ぐ試練の連続・・・モデル時代。パリコレ進出を夢見てオーディションを受けるも、不合格。描いていた夢を叶えられずに帰国。その後、俳優に転身。蜷川幸雄演出の『真夏の夜の夢』でイギリス公演を成功させ、ドラマ『劇的紀行 深夜特急』での経験も評価され、”世界進出”を賭け、大役に挑もうとした・・・。実はドラマ『JIN-仁-』の撮影に入る前に、名匠マーティン・スコセッシ監督の映画オーディションに合格していたが・・・ファイナンス問題で映画自体が消滅。掴みかけていた世界進出のチャンスを失ったショックから、『JIN-仁-』の撮影前に日本から逃亡。電話すらシャットアウトして、ロンドンの民家に3カ月間籠った。「掴んだはずのチャンスが、後一歩のところで・・・やはり俺には叶わぬ夢なのか」そんな葛藤を抱き、日本との連絡を絶ってロンドンへタイムスリップ。しかし異国の地で『JIN-仁-』の役作りをする内に、ある思いにたどりつく。

『俺はなんのためにこの時代へやってきたのか』ともがき苦しむ、南方仁”数奇な運命”と向き合う内に、“神は乗り越えられる試練しか与えない”という悟りの境地にたどり着いた」

そう気づいた時、大沢たかお南方仁の中に、自分の進むべき道を見つけた。結果、このドラマは‘09年に放送された第1期の全話平均視聴率19.0%(最終回25.3%)。作品の評価も高く、なんと国内外で33の賞を受賞。さらに‘11年『完結編』では、前編を上回る全話平均視聴率21.3%(最終回26.1%)を記録。世界80カ国で放送され、大沢たかおにとって名実ともに”世界進出”の足掛かりとなる作品となった。

 

 

『JIN~仁~レジェンド』では過去を変えてはいけないと主人公は悩む。これは単に歴史を変えてはいけないということではなく、「生命」に関する問い。過去、死ぬはずだった人物を南方仁が生かすことで、後に生まれるべき人が生まれてこない可能性がある。ひとりの人間()が見知らぬ誰かの人生を変えていいものであろうか・・・と。

 

 

「バタフライエフェクト」という、一匹の蝶の羽ばたきが竜巻を呼ぶというような、至極ささやかなことが回り回って大きなことに波及する現象になぞらえた、主人公の迷いも、今、我々はちょうど味わっているところである。外出自粛営業自粛のいま、自分だけなら……と思って外出することが誰かの感染につながるかもしれない。他者に影響を与えないように、誰とも触れ合わず、家にこもること。1人ひとりの自覚がいま、問われている。

 

生と死、その極限状況に置かれたとき、人間はどうするのか。はこれまで、ただただ、今、やれること、その最善を尽くすことを選んできた。 いま、目の前の隣人を救うにはどうしたらいいか。生きているこの国をより良くするにはどうするべきなのか。の選択はわれわれに希望をくれる。「神は超えられる試練しか与えない」という言葉にはなんの根拠もないが、そう思うことで、今の苦しみをなんとか耐えられるような気がする。

 

 

 

 

 

いまだに終わりの見えないコロナ禍。 ちょっとした言葉でもなんでもいい。いま、この時期、支えになるものが欲しい。そんなときに再放送された『JIN~仁~レジェンド』。本放送から10年近い時を超えて再び、日本人の心に希望の光を照らすことが、時を超える主人公・の物語と重なって、いっそう胸を打つ・・・。南方仁のような“救世主”を待望する人々の思いが、ドラマの再人気に表れている。見応え十分。何度も視聴するに耐えうる普遍性のあるドラマである。