決してマスクだけのせいではない息苦しい世の中です。

コロナにより、息苦しい世の中がもっと息苦しくなったような気がします。

日本はこんなに住みにくい国だったのでしょうか。

 

 

外出はするな、というがオリンピックは開催する、

弱者を助けようというが、儲け主義は返上しない、

おかしな世の中です。

 

若い人たちが絶望するのも仕方がないかもしれません。


 

 

 

 

 

 

 

わたしが一番きれいだったとき 

                



わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした



わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達がたくさん死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった


わたしが一番きれいだったとき
だれもやさしい贈り物を捧げてはくれなかった
男たちは挙手の礼しか知らなくて
きれいな眼差しだけを残して皆
発っていった


わたしが一番きれいだったとき
わたしの頭はからっぽで
わたしの心はかたくなで
手足ばかりが栗色に光った


わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり
卑屈な町をのし歩いた


わたしが一番きれ
いだったとき
ラジオからはジャズが溢れた
禁煙を破ったときのようにくらくらしながら
わたしは異国の甘い音楽をむさぼった


わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
わたしはとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった


だから決めた できれば長生きすることに
年とってから凄く美しい絵を描いた
フランスのルオー爺さんのように

 

 

 

茨木のり子『わたしが一番きれいだったとき』。

 

 

 

この詩を初めて読んだとき、担任の女性の先生はこの詩の内容を

実体験として語ってくれました。

 

 

いまは「コロナ」という名の戦時下です。

いまは戦争中の世の中です。

 

 

希望をもって生きていくことが難しいです。

せめて生まれてきた意味を考えたりしながら

「ありがとう」を一つでも言える毎日を送りたいと思っています。

 

 

 

 

 

ルオーの作品を検索してご覧になってみてください。

とても力強い線にしぶとさを感じます。