MX-1000 Homage(オマージュ)。
とうとう完成して音が出ました。
完成して音出ししたという嬉しさもあり、今回も量的大爆発の大長編です
げんなりすること請け合い、早期離脱を強くオススメいたします。
MX-1000HにはREV.がある
MX-1000Hにはいくつかのヴァリエーション、つまりバージョンが予定されています。まずはそのバージョンについてご説明しておきたいと思います。
Ver.A :
パッシヴクロスオーバーとパッシヴ配線によって行列を形成する
(アンプを3ch使う)
Ver.B :
パッシヴクロスオーバーだが、miniDSPのルーティングで行列を形成する
(アンプを4ch使う)
Ver.C :
Bに加えて、トゥイーターとのXoverもminiDSP上で形成する
(アンプを5ch使う)
完成した...と言っても、今回は上記のうちのVer.Aのみが完成した、それも調整前の試作が完成したに過ぎません。
つまり。。。。「まだまだこれから先は長い」とでもお考えください(爆
Ver.Aは、端的に[長岡式]と呼んでも良いかもしれません。テツオセンセの第一号機から脈々とつづく ”スピーカーケーブルの結線の妙だけ” でL-R, R-Lの行列式を形成する手法です。
Ver.B, Ver.Cは、Ver.Aとは全く別物のシステムと考えていただいた方が良いと思います。私が私のチート環境を駆使して実現する別世界であり、これまでのパッシヴ型マトリクスでは実施できなかった様々なテスト・チャレンジが可能になります。
Ver.B, Cについてはトライアル時期が来たらまた詳しく原理説明します。BCは少しだけ厄介で、裏板にスピーカーターミナルを増設せねばなりません。
さぁ視聴開始!
修理が完了したパワーアンプをラックに収納します。
MX-1000Hにケーブルを接続します。
Xoverの仮設が終わったばかりなのだから、本来ならばここで実測・調整のプロセスを踏んでから音楽鑑賞すべきですが。もう辛坊タマランです。長々と待たされたこともあって、もうバンバン音楽聴いちゃってます。ひたすら、楽しいです。
この瞬間がたまらんです。
ラウドスピーカーが完成して・・・アンプが完成して・・・一番最初に音出しする瞬間。最もWkWkが停まらない瞬間です。この瞬間のホルモン大量分泌、麻薬な達成感がまた味わいたいから、人はまたモノ作りへ向かってしまいます。DIYerの多くの方が、同じマインドセットで動いているのだろうと勝手に想像しています。
あれ、音が拡がらないぞ??
音が出ました。
最初にお断りしておくと、(というかこんなコトは最初から判っていたことですが、)MXがANDROMEDA 4wayに勝てる要素は微塵もなかったです。広大で鮮明なサウンドステージ、広大なレンジ、圧倒的スケール感、ぎょっとするほどの生々しさ、繊細な解像力・・・。どこを採っても勝ち目はない。
しかしだからこそ、このラウドスピーカーの音質を冷徹かつ客観的に判断してゆくことができます。
ファーストインプレッションは「柔らかい音だな~」という事でした。らむだちゃんの時は元気の出る闊達な音というインプレを書きました。それとは逆の印象です。鈍い音とかそういうコトでもないのですが、鋭い切れ味とか、叩きつけるような破壊力とか、そういう表現は苦手です。良くいえば、嫌な音を一切出さない。悪くいえば、少々地味。
たとえば高域。もう少し綺羅びやかな煌めきや鮮烈さがあっても良かったような気がします。
モノラル視聴時と違うのが、センターがMTMになった点。上下フルレンジの位相干渉があるから、少し地味めに聞こえるのかも知れません??
高域の調整抵抗は、「地味の15Ω」。「ハイ上がりの8.2Ω」。現在はその間をとって、「中庸の12Ω」を取り付けています。ここは8.2オームに換装しても問題ないかもしれません。裏蓋を取り外せば非常にカンタンに交換ができるようになっています。
まあ、音色についての考察はもう少し後に譲るにして。
困ったのは音場感です。思った以上に拡がらないのですよ。あれぇ~~??
マトリクススピーカーといえば、持ち味は視覚を無視して奇妙に広がる音場じゃないですか? その広がりが全く無いんじゃ、何のためにこんなケッタイなシロモノを創ったのか、その意義が根底から揺らぎます。
でも実は、私の想定に誤解があったんです。
聴取距離がポイントだった
視聴を開始してすぐに気づいたのは、普通のラウドスピーカーに比べても、リスナーの耳の高さに異常敏感な事でした。
最初はいつものソファに座って聴き始めたのですが、音があまり拡がってくれないのです。(これはΛでも同様でした)
そこで、床にクッションを何重かに敷いて耳をトゥイーターの高さと揃えたところ、がぜんフォーカスが合いはじめました。自分(耳)の高さをスピーカーに極力アラインしないとダメみたいです。しかしそれでも、期待した程には/過去の記憶の底にある音ほどには、拡がってくれません。
(ニアフィールドリスニング)
このときの聴取位置は、スピーカーから1.2mの距離です。超ニアフィールドだと思います。
私は、このMX-1000は近くで聴いたほうが有利なのだろうと、最初から想定していました。ただでさえ、横幅の狭いスピーカー。スピーカーに近づいた方が、耳と左右スピーカーの仰角が確保できるし、繊細な音も聴き逃さないから、近くで聴いたほうが音場が優位だと思っていたのです。
しかし現実には水色の円で示したように、スピーカーの周囲にわずかながらボワーンと、雰囲気感のようなものが広がるに留まりました。
試しに、ソファーをグーンと下げて、リスニングポジションを3m近くに遠ざけてみました。(Andromedaでは普段2.7m)すると・・・一挙に音場が拡がった!
(ファーフィールド)
このときの聴取距離は、約3m。
耳とスピーカーの仰角は極度に狭くなる(ほぼ並行ビーム)し、細かい音が聞き取りづらくなる。部屋の反射影響も強く受けるでしょう。
・・・にも関わらず、一部の楽音がスピーカーの存在を無視して、すごく遠点に定位をしはじめたのです。それが水色の円。実に不思議です。
MTMは、位相干渉に敏感なのかもしれません。仰角は狭くなるが、音源から離れると音源が点音源に近づきます。それで、位相差に敏感であるマトリクスでは有利に働くのかもしれません。
そういえば、私が中学生の頃に聴いていたマトリクススピーカーも、3.5m以上の遠点においての鑑賞/記憶でした。
判ったこと: マトリクススピーカーは遠点で聴くのが吉。
でも、困ったな。このラウドスピーカーは超低能率 な上に、超パワーに弱い のです。近づけて聴けないということは、十分な音量では鑑賞できないことになりますね。そこのデグレードをどう捉えるか。
なんにせよ、MX-1000Hの真価を聴くには離れて聴くしかないと判ったので、3mの距離で視聴をすすめます。この状態で、もうバンバン視聴しています。
基本的な音感
音場感ではなく、まず音色の話から。
前述したように、とても柔らかな音です。どこまでも見通せるようなトランスペアレンシとか、異様な解像力は無いみたいです。しかしその分、ソースの粗も隠してくれる感じで、どんなソースも優しめに聴こえます。一部のやかましくなり勝ちなJPOPやROCKでも耳障りな音が一切なく、かといって暗くなるわけでもなく、整理して楽しく聴かせてくれます。
前で書いたとおり、高域はもう少し透き通ってシャープな感じがあっても良かったかなと思います。例えばジャズのシンバルは少し金粉感やエアーが無くなってしまいます。しかしここは後日調整可能なはず。現状トゥイーター能率をだいぶ抑えてますからね。
以前の測定で見えたとおりで、重低音は凄いです。
ただ、ANDROMEDA(∋Xbass)のようなエアー感のある、高速で自然な低音ではありません。空間を圧して揺するようなウルトラエネルギーもムリ。伸びてはいるがこじんまりしています。また、自然ではなく少々ズンドコ調というのかな。音色も重め。いかにも「バスレフでござい」といった鳴り方をします。バフバフ、ブーブー、ドンスコと、威勢だけは良いです。
サブウーファーは聴感で判定して逆相としていますが、少しレベルや位相を微調整した方がよいかもしれません。
重低音が凄いといっても、音量への耐性は「まったく無い」と言ってよいです。
もしかすると、UltimateMicroSub以上に音量に弱くなったかも知れません。
一般的なロック、ジャズ、ポップスならば問題ないのですが、一部の変態的な超低音の入ったソースを掛けると、ほんの小音量で破綻します。10Hz未満まで収録されたパイプオルガン、花火、雷、大太鼓などはかなりヤバみです。ボトミングに近づくバタバタ音が聞こえることもあるし、それより先にフルートノイズがパルパルしはじめる場合もある。
大音量再生はおろか、中音量~一般的な聴取レベルでさえ厳しい。ソースを選ぶような傾向が見られます。超低音が再生できるようにしたのに、超低音の入ったソースが苦手という。。。(笑
In PhaseとOut Of Phase
サウンドステージの話をします。
我が家のANDROMEDAでは、一部のソースで音源がリスナーの真横に定位したり、へたをするとリスナー後方に定位したりします。ナチュラルなワンポイント録音ならば、滅多な事でそういう現象は起きませんが、ソースがダミヘであったり一部の位相を意図的にいじっている録音でそうした定位現象が発生します。
なぜそういう事が起きるのかというと、あえて録音側でエンジニアがOut Of Phaseの状況を作り出しているわけです。もう少し分かりやすく言うと、逆相の成分を意図的に混入させているのです。ポピュラー、ロック、ジャズは残念ながらほとんどが音源をニアフィールドでモノーラル収録しています。それらをアレンジして擬似的な空間感を生み出さねばなりません。そのために編集段階でこれらの脚色を加える場合があります。
例えばセンター定位のヴォーカル。これはInPhaseであればドセンターにピシャリと定位してゆるぎませんが、OutOfPhaseの信号を混ぜると、音源が空間に拡散し、どこに定位しているのか判別できなくなります。これがOut Of Phaseです。直接音にそうしたフェージングをするのでなく、残響遅延音にのみそうしたエフェクトを加えて鮮明な音像定位と空間感を両立させる加工も多いでしょう。
マトリクススピーカーは、決してHi-Fiではありません。「入力現信号と比例関係にある出力信号が出る」を線形の高忠実度と定義するならば、マトリクスはそれを改ざんし、意図的にOut Of Phaseを再生音に混ぜてしまうからです。
逆相の信号を混入させるということは、ラウドスピーカーがコヒーレントではなくなることを意味しています=つまりまったくHi-Fiとは言えません。
このスピーカーを使うには、Hi-Fiとは言い難いが録音段階でもOut Of Phase加工をするものがあるくらいだから再生側で二次加工をしたってええじゃないか!といったような、ある種の諦観や狙いが必要になります。つまり納得づくで使うということですね。
私はこの日の為に「マトリクススピーカー専用せとり」というものを準備していました。すなわち、ANDROMEDAで聴いていて、真横や後方に定位するもの。飛び抜けて音場感の良いもの。これは良さげだなと思ったソースを事前収集しておいた。MX- で効果測定するためのステージ確認せとりです。これらでANDROMEDAなみに音が拡がれば大成功ということ。かな?
このせとり個々の感想文は、原稿が長くなりすぎたので次回へ譲ります。
結論から言ってしまえば、現段階でANDROMEDAの生み出すサウンドステージには全く刃が立ちません。部屋中が圧倒的なサウンドステージで蹂躙されることもなければ、リスナーの全方位が囲われるような広大なステージが現れることもありません。ステージ中の楽音のリアリティも全く違います。
ANDROMEDAはアンプみたいな音です。・・・と書くと又何言ってるんだか良く判りませんが、要約するとラウドスピーカーが鳴っているような感じがないです。空間で楽器や声やホールが鳴っている印象。これに比較するとMX-1000Hは、良くも悪くもオーディオの音ですね。オーディオ用のスピーカーが、部屋の中で鳴ってるなー という事がアリアリ判る音。
それと、音質と直接関係がないことでビックリしたのが、このラウドスピーカーは良く床を鳴らします。
メインスピーカー:ANDROMEDA(∋Xbass)は、置いてある床が全く鳴らないのです。エネルギーのほとんどが空間放出されているような。風は吹いてくるわ、部屋の調度品がビリビリ共振してしまうこともあるわ、落雷では床がドスン!と同相で鳴ったりします。あるいは床がゆっさか揺られているように感じることはあります。なんだけれども、ドスドスビリビリ、床が同相で共鳴することは無いのです。本体とベースでトータル170kgを超える総質量が、アンカーとして効いているのかも知れないですね。
それに対してMX-1000Hは、小さな音量で鳴らしても床が低音で鳴ってしまいます。
30mmの大理石ベースが敷いてありますが、そんなのお構いなしな感じ。貫通してくる。MX-1000で低音が鳴ると、ビリビリ、ドスドスと床も共鳴します。やっぱりスピーカーが軽すぎるのかしら。
その共振音が床を伝わって~~→ リスナーの足の裏や、置いてある机の表面をブルブルと鳴らすわけです。これはさながら、ボディソニック(古っ)ウーファーのようです。これはこれでアーティフィシャルなのかも知れませんが、どちらがホンモノなのかと問われると、やはりXbassの鳴り方のほうが本物のような気がしてきます。
もっと細かい感想も書きたいところですが、ちょっと長くなりすぎました。
ここから先は「曲ごと」の感想文になりますので、次回原稿に譲ります。また、感想文を書く前にXover調整を入れてしまうかもしれません。
一旦おしまい。