例によって、テキトーな事を書き殴っているだけなので、以下あまり気にせず話半分にお読みください。

 

これから何回かに分けて、トランスミッションラインシステム(TLs)とバックローデッドホーン(BH)について、深掘り考察をしていきたいと思います。

 トランスミッションラインとバックロードホーンは何が違うの?

 

同じです(笑

 

もう少し正確に言うと、BHはTLsの部分集合です。

トランスミッションラインシステムは、音響線路等価で示せる系の総称ですから、BHを含みます。

 

バックローデッド、共鳴菅、音響迷路、TQWT、呼び方が少々違うだけで、すべてトランスミッションラインシステムに包含されると言って良いと思います。TLsファミリーとでも言うのかな?

 

 

管っぽい構造を持ったものはすべてトランスミッションラインの系列と言えます。パイプが少々広がっていようが/すぼまっていようが/直管だろうが、同じ。すべて伝達関数がリアクティブな系で示される、管をつないだトランスミッションラインに大別できます。同じシミュレーターで全部分かるんだから、同族以外のなにものでもないです。

 

 

 そもそもトランスミッションラインって何?

 

元の語源は電子回路です。「伝送線路」。そう、FMやテレビの信号を送信するケーブルの等価回路でおなじみの、アレですね。ケーブルのインピーダンスマッチング、などの用語はご存知かと思います。伝送線路は高周波において純抵抗ではなく、等価回路を持っています。その回路によって高周波での伝送効率や周波数特性が決まります。

これを音響的な伝達関数に置き換えたものが、ラウドスピーカーにおけるトランスミッションライン・システム(TLs)です。管を伝っていく音響線路の伝達関数と、最終特性の関係性が電気の伝送線路そっくりであったことからこの名が付きました。

 

  トランスミッションライン・システム = 音響伝送線路系

バックロードも管を繋げて作った構造のため、TLsの等価回路で示すことができます。

 

Port Aに1を入力したら、Port Bからは xが出力された。よって、系の伝達関数は?というだけの話です。

 

 

 

 バックロードホーンは、ホーンではない

 

爆弾発言かもしれませんが、これは自明です。BHはホーンと名が付いてはいますが、ホーンではありません。的確に表現するのであれば、オープンテーパーの付いた音響迷路(=TLsの一部)と呼ぶのが妥当かと思います。単に末拡がりになっているからホーンと呼ばれている。単なる慣習というのが実態。

 

なんで、バックロードはホーンで無いの?

それを理解するには、まずホーンとは何なのかを理解する必要があります。

本物のホーンと、バックロードを見比べることで、バックロードがホーンではないことの理解が進みます。

 

トランスミッションラインもバックロードもミッドホーンも、音の伝わる「経路」を持っていますよね。その経路の音響伝達関数がレジスティブなものが「ホーン」と呼ばれます。

つまり経路の伝達関数は純抵抗で構成される。ロスはあっても反射はない。

(注:ここでいう反射とは、音が壁に跳ね返って・・・という意図での反射ではありません)

 

理想ホーン型の挙動と特徴を見てみましょう。

 

これがホーン型の理想特性です。

ホーン型においては、コンプレッションが掛かることで、音圧特性はダイアフラムの速度に比例したカーブを描きます。

速度はFsにおいて極大となりますので、Fsを中心とした音圧特性となります。そのままでは、Fs以外の音が出ないことになってしまいますが、ホーンで負荷を掛けることによって、平らな特性を得るわけです。

ホーンの負荷を掛けるほど、平坦特性が広くなりますが、能率は低下してしまいます。

[a][b][c]どの特性になるのかは、ホーン設計(負荷)に依ります。

 

ご覧のとおり、きちんと設計されたホーンでは反射がないので、インピーダンスカーヴはFsの1点だけで極大になります。

 

(ご参考)

ちなみに、ホーンではない一般的なコーン型などの音圧特性は下記になります。

ホーンと同じく、[a][b][c]のどれになるかは負荷によります。質量負荷に頼った場合、[c]は重いコーンでワイドレンジ。[a]は軽いコーンで高能率だがナローレンジになります。

 

 

 

 バックロードの示す特徴

 

さて、ホーンはインピーダンスカーヴに一点だけ山ができましたね。

 

対して、バックローデッドホーンはぶっちゃけどんな感じなのでしょう

(超有名・超大型バックロードの特性)

実線がインピーダンス。点線は電気的位相特性。

ご覧の通りです。ホーンのカーヴと見比べてみてください。

いくつもの共振点の山が出来ています。これでホーンと呼べるのでしょうか。(まぁ別に呼んでもいいですけど)

 

いくつもの共振の集合体でできている特性がバックロードの挙動の正体。なぜ、こんな風になるか。

それは、バックローデッドホーンのホーン形状が全くもってホーンではなく不連続なパイプの継ぎ合わせだからです。ホーンのカーヴから外れた場所(=恐らくほとんどの場所)で、伝達関数はリアクティブに。つまりそこで、大きな反射が起きるということです。反射とは、伝達している信号の逆流のようなものと考えてください。一部が逆流してきて特性を乱す。

ホーンではないため、ホーン=トランジェントが良い、という表現も誤りです。”共振、共鳴”という言葉の通り、長く尾を引いてトランジェント特性を劣化させています。

 

実際、どんな伝達関数になるのでしょうか。ホーン(ではなくて単なる気道ですが)の一部を切り抜いて、その伝達関数を見てみましょう。

 

これが、トランスミッションライン/バックローデッドホーンの伝送線路等価回路の一部を抜き出したものです。

回路図としてはどっちも同じなのです。広がっているか、すぼんでいるかは関係ありません。回路としては同じ。形状によってLCRの定数が変わるだけです。回路の中に、LやCが見えますでしょうか?つまりこれが、伝送線路がリアクティブであることを示しています。

この特徴があるかぎり、バックローデッドホーンはホーンとは言えません。

 

BHは音道がホーンの形状をしていません。場合によっては直管を繋いだだけ。そして、90度とか180度とかでハデに折り返しをしています。折り返しを交えたとたん、そこが関数の大きな不連続になり、リアクティブになります。そんなことをしてしまうと反射は避けられません。だからホーンとは呼べないです。インピーダンスの山が大量に出ていることからも、共鳴菅としての特性の方が色濃く出ていることが分かります。

 

 

 

そんな等価回路と、インピーダンス特性を持つBH。どんな最終特性になるのかも見て終わりましょう。

 

グリーンが総合的な振幅周波数特性です。

上図はすごーく著名な長岡式大型バックロードホーンの模擬特性。設計値をネットから拾ってきてSimしました。

ドライバーのQtsをはじめとするT/SもInputしていますので、比較的正確です。

 

総合伝達関数がリアクティブですから、反射と前面相互干渉の影響を受けて、全体の特性もグリーンのようにドタバタと暴れます。吸音材はゼロにしてみました。が、少々吸音材を盛ったところで、この特性は変わりません。細かい乱れが無数にあるが、脳内でスキマを補間すればフラットになるというタイプ。

 

細かいノコギリ波がたくさん見えますよね。これは本物のホーンでは現れない特徴です。

インピーダンスで見られた特徴と音圧特性が符合します。

吸音材を適切に配置すれば、この極端な山谷は多少ならせます。

 

低域が25Hz付近まで伸びているという世評に、偽りは無いようです。ただ中高域に比べて-15dB以上落ちているのを「伸びている」と云って良いものかどうか? 全体としては、キレイだが痩せた音のバランスになりそうです。


なぜか、ネットを徘徊していると、次のような関係性が見られました。

  • 正しい測定環境を持つ人は、BHを使っていない。
  • BHを使うような人は、正しい測定環境を持っていない。
    (よって実測例が見られない)

しかしこれは日本に限った特徴のようで、海外では少ないながらもBHの比較的正確な測定例が転がっていますので興味のある方は漁ってみてください。

 

 

さて次回。(不定期:機会があれば)

BHとTLsではどんな特性差になるのか、見ていきたいと思います。

特徴がほとんど同じなのでビックリされること、請け合い?

だってBHってTLsの亜種だもん(笑