今回は、[自作MOS-FETアンプの配線状態を改善する] シリーズ~。

 

本日は少々の長文となります。メンドウな方はトバしてね。

 

 

大昔に自分で造ったアンプ内部写真を見ていると、今回のアンプはあまりにも雑に見えてきます。6chも扱わねばならないという根本的難しさがあるにせよ・・・ひどい。

 

大昔のアンプは、

ACラインは執拗に撚ってかつ音声信号を徹底迂回して配線

電源はトランスから最終段に至るまで独立のデュアル・モノーラル構成を採る

底板には3mm厚の銅板が敷かれ、

PCBの入力近くでその銅板にて最短集中アース

音声回路基板は電源ブロックから離され銅板シールドで覆われ飛びつきの余地なし

 

と、今思えば偏執狂的なアース対策やノイズ対策が施されていました。これに比べると、今回のMOS-FETアンプはなんと雑なことか。実装余裕が限られているので、限界はあるにしろもう少し何とかしたいよね?

 

ということで前々から気になっていた配線周りを集中的に改良します。

 

今回加えた変更点は以下のとおりです。

  • Rチャンネルの長すぎるGNDラインを切り詰めて最短とする
  • 電源トランスを天地逆転させ、リードを床側にする
  • 整流前のACラインは徹底的に床(GND付近)を這わす
  • ACラインは徹底的に撚る
  • 撚ったうえで、銅網線シールドを被せて輻射を減らす
  • だぶついていたACラインは徹底的に切り詰めて最短経路とする
  • リアパネルへ取り付けられていた保護抵抗を底板へ移し、ACラインは床近くに押し込む
  • 二重だったACヒューズも省略し、さらに結線を短絡化する
  • 上記施策で、空中に舞っていたACラインを徹底的に床側へ分離し/逆に音声ラインは空中へ浮かして距離を取る
  • 音声ラインとDCラインはACラインと遊離させて、相互交差も防止する
  • 全RCA入力ケーブルは1芯同軸でGNDシールド密度の高いものへ換装する

実は、ヒートガンはこのために買ったのでした。

 

 

Re:配線

 

久々にアンプをばらしていきます。

中途半端はいけませんよね、徹底的にバラします。

 

ここまでバレました~。

タコより酷いな。必要に応じてPCBも外しています。

 

6chアンプは、配線数もステレオアンプの「x3倍」です。どう頑張ってもこの配線数が減ることはありません。

せいぜい出来るのは、這わせ方を工夫して/綺麗に整理し/相互干渉を最小化することです。

 

最近のマルチchアンプが、どうしてリアパネル直結型構造が多いのか、理由に納得ですね~

 

 

ところで、今回はシールドにこのような銅製の網線被覆を使います。今回の目玉です。

そういう実装をしている海外製のパワーアンプを見かけたので、私もやってみようと思い立ちました。

 

電源トランスから出るACラインは、撚っちゃいます。

 

撚った上から、銅の被覆を被せます。これをGND接続して(限界はあるにせよ)シールド効果を狙います。

 

同じように、AC100Vラインも撚ってシールドと被覆を被せます。

この、絶縁用のビニール熱収縮チューブがなかなか通らなくてね。フリクションで銅網に引っかかってしまうのです。四苦八苦しながらなんとか通せました。ACはシールドするだけではなくて、最短距離に切り詰めて床側(底板)へ押し込みます。

 

ここまで出来たら、電源トランスを天地ひっくり返します。

ACラインが音声信号に飛びつきやすい要因のひとつが、電源トランスのリード線が天面側から出ていること。これを天地逆にして、できるだけ床側へ這わそうという作戦です。

 

せーの、、、

 

おりゃーっと。トランスをひっくり返しました。

 

ひっくり返すだけじゃなく、経路を思いっきり切り詰めて。

 

最短で整流PCBへ投入します。そのリード長8cm~9cm。

これまではACラインがぐるぐる空を舞い、音声ラインと接近/交錯していました。それに比べるとケーブル長は1/3くらいだと思いますし、音声と距離を取ることにも成功します。

 

次に、これは突入電流の保護シャント抵抗。

これまではリアパネルにねじ止めしていました。そのせいで間接的に、AC100VラインがRCAジャックのすぐ傍まで、ブンブンと空を舞って近接していました。

今回はこれを辞め、抵抗をリレーの下(底板)へ押し込んでしまいます。

 

と同時に、AC100Vラインは大幅短縮し、基板~保護リレーで出来たトンネルの下へ通します。

 

こーんな感じ

 

なにもかも、リレーの下へ押し込んでいます。

これまではこのACラインが、RCAのすぐ傍まで、とぐろを巻いていたんです。

 

フロントパネル側のACラインも、ケーブル被覆やタイラップでテンションを掛けて、極力センターへ寄せます。電源トランスの傍かつ床下へ這わすことで、上層の音声PCBや音声ケーブルへの飛びつきを防ごうとしています。

 

ここまでは整いました。

 

閉腹します。

 

最後のRCAケーブルも結線して終了。

まだまだ配線は目立ちますが、これでも以前に比べれば相当に整理され、キレイになりました。

邪魔くさいACをぜんぶ床へ押しやれたのがポイント高いです。

 

特に電源トランス周りのACが、音声基板と離せました。以前とはエラい違いです。

 

 

(古い実装の写真)


 

さあ、通電です!

ドキドキしますね・・・。

眼鏡と手袋と段ボールで身体を保護しつつ(何か飛んでくる可能性があるので。)慎重に電源を入れます。

 

電源SWを押したら、逃げます(笑)

 

30秒間、発光、煙、、、匂いを嗅ぎます。

何事もなければいったん電源SWを切ります。・・・・・大丈夫そうですね。

 

一度動いたアンプだからといって、油断してはいけません。そういう組み直しの時がむしろヤバいのです。なぜなら油断しているから。どこかの電源ラインが結線不十分かもしれませんし、ねじの締め忘れがあるかもしれないし、何処かが組みなおしでレアショートしてるかも知れません。

目視確認やテスター当たりはしたつもりですが、盤石ではありません。

 

実はここまでの工程で、のべ4日間掛かっています。

 

 

 

テスト視聴

 

今回、ビートノイズ確認のために、こんなケーブルを製作しました。

 

スピーカー端子~イヤフォンジャック変換ケーブルです。

 

もはやスピーカーで聴いていたのではノイズの存在が良く判らないから、鮮明に聴こえる様に、イヤフォンで聴いてやれ、というわけです。パワーアンプ直結ですから、入力信号は絞れてもアンプノイズは音量を絞れません。アンプフルパワーのノイズ量が、このイヤフォンへ印加されるから、はっきり聞こえるというわけです。

 

出力完全直結でもよかったのですが、保護用抵抗22オームをケーブル内に直列で仕込んでいます。

 

 

まずはRCA入力端子、オープンで聴いてみます。

シーン 何も聞こえません。

次に入力端子ショートで。

シーン 何も聞こえません。

ま、当然か。

 

次に、意図的にGNDループが出来るような入力装置をつないで、音を聞いてみます。

具体的には、WiiM miniなんですが。長めのケーブルを使って、アースループが長くなるようにしています。

 

音楽を鳴らしている時間帯は、当然なにも感じません。

音楽を止めて無音にしてみます。

 

・・・ウン? なにやら、イヤフォン奥底の方で、かすかなジリジリが聞こえるような気が・・・。

 

実はこのとき、RCAのアースショートボードを外して聴いていたんですよね。無しでも何とかならんかなと。

 

これです。

 

これを追加で装着してから再びチェックすると、その僅かなノイズもぴたりと停まりました。

すなわち、電源トランスやACラインからのリーケージ影響はほぼ無くなり、GNDループの長さ/アースの取り方に問題が集約されたという事だと判断しました。

このアースショートボードを装着していると、イヤフォンで聴いても検知限界未満なので、とりあえずこれでまた使えます。全chで試してみましたが、ノイズは聞こえませんでしたので一安心。徹底したシールドと配線引き回しのためか、完全に近いノイズ除去ができたと感じます。

 

 

思えば、私が過去に使ってきた数々の市販製プリアンプや、プリメインアンプ。入力端子板のところでGNDがショートされているものが多かったような記憶があるんですね。もとからアースラインが共通だったり、太いバスでショートされていたり。

お相手方にどんなモノをつながれるか分からないから、防護対策としてはショートせざるを得なかったのかも知れませんね。

 

ウルトラハイエンドの世界では、だいたい何処もアンバラは無くて、バランス伝送・バランス回路になっていますから、今回のような課題は生じないのだと思います。私は何となく、生理的にアンバラが好きなので(素子数が少ないからだと思う:笑)、これからもアンバラを使い続けます。

 

 

さて、閉腹して元に戻そうかな?

中身が納得できるキレイさになったので、生理的にも満足です。

 

 

ご参考

 

参考:DENON PRA-2000RG

プリントパターン見てね

入力直下でGNDは共通

てか、使ってるRCA端子そのものが、LRで共通脚(笑

 

 何でも分離すりゃいいってもんでもないぞと