REWは諦め

 

 

REWを使って疑似無響計測を開始しましたが、巧く測れません。しょっぱなから頓挫しました。

 

まず、測定の基礎となる逆算疑似インパルス応答が綺麗な波形で採れません。これはおかしいぞ。無理やり周波数特性は捻り出せますが、形状が明らかにおかしいです。いくらLS11ESが変なスピーカーだからってこれは無い。

 

 

まず、高域端が-100dB/octくらいで急減衰します。10kHz以上・・・条件によっては4kHzより上が採れてません。これは・・・? 判ったぞ。多分レイテンシだな。

 

スイープ信号で計測しているわけです。高域端は最後に測ります。高域を測り切る手前で、REWが信号観測を切り上げてしまってると推定しました。おそらくAirPlayで信号を飛ばしているのでその分のレイテンシで、計測が間に合っていないのだと思います。だから、その高域成分の欠けた逆算インパルス応答も情報欠損で汚く乱れてしまうわけです。時間窓の取り方をどう変えても妙なカタチにしかなりませんでした。

 

REWについてはレイテンシの低くなる環境を整えてみて、私でも巧く測れるようになったら、改めてリポートしたいと思います。また、REWにはimpulse importの機能もあるので、綺麗に採れるDaytonでインパルス信号を取得し、解析だけREWでやるという手をとるかも知れません(若干面倒ですが。)

 

 

 

疑似無響の実測値

 

気を取り直して、いったんOmniMic V3を使ってLS-11ESを実測します。

やっぱりDaytonはいいですね。使い慣れてることもありますが、確実です。しかも何度セットアップして測り直しても、再現性が良く、ほぼ似たような測定結果が得られます。余計なアーティファクトがほぼ無いのでおそらくジオメトリが同じなら誰がやっても似たような測定結果が得られると思います。

 

クロスオーバー再定義の前準備として。最終エンクロージャーに取付した状態つまりエンクロージャー影響コミの状態で、まずは各ドライバーの裸特性を実測しておきます。このときXoverを通さないで計測します。クロスオーバー無しで、0Hz~20kHzスイープをミッドやトゥイーターに印加するのは大変危険です。このため、ミッドやハイにはBass信号を除去したスイープを使います。

 

以下、それぞれウーファー、ミッド、トゥイーターを測定した結果です。

 

ここで必要なのは各ドライバーの位相特性と振幅特性です。後でオプティマイズに使うために、それらをFRDで書き出しておきます。

 

トゥイーターは5msec.で撮っています。なので波の形がとても綺麗です(f特は汚いけどね。)5msなので500Hzまでしか測れません。

対してミッドとウーファーは低い周波数のクロス状態が見たいため、欲張って12msec.くらいで撮っています。このため、反射をやや拾って波形がバタバタしています。このように、時間窓を短くすればするほど、測れる周波数は限られるが、得られた特性は反射が除去されて滑らかに(無響室状態に近く)なります。

さらに、クロスオーバーシミュレーションをするには波形が荒っぽい方が考えやすいため、1/24Octのスムージングを掛けています。

 

(このアライメントだと、本当は4ms.くらいに抑えないとダメ)

 

こうやって裸を見ると、ミッドの高域は予想外に伸びてますね。メタルドームが効いてるのかな。一方、トゥイーターのハイエンドは落ちが早いです。もはやどっちがトゥイーターだか分からん(笑)

 

"FRD”とは、以下のように周波数/振幅/位相が区切られて出力されたテキストファイルです。

500.56024    48.58    -99.7
502.3706    48.65    -100.1
504.1875    48.72    -100.5
506.01098    48.79    -101
507.84105    48.86    -101.4
509.67774    48.93    -101.8
511.52108    49.01    -102.3........

後でこれをXoverオプティマイザに食わせます。

 

 

実装インピーダンス計測

 

次に、同じく実装状態での各ドライバーのインピーダンスを計測しておきます。

 

ドライバーが裸の状態と比べると、ウーファーはエンクロージャーに取り付けすることで/ミッドレンジはバックキャビティで覆われることで、FsやQが上昇します。このFs/Qを折込済でないと、パッシヴ・クロスオーバーの設計は失敗します、必ず。

 

以下が各ドライバーにおけるインピーダンス特性です。

 

グリーンがウーファー、マジェンタがミッド、イエローがトゥイーターのそれぞれインピーダンスカーヴと、電気的位相特性を示しています。後で使いますので、それぞれをZMAで書き出しておきます。

"ZMA"は、FRDと同じく周波数対インピーダンスをセパレートしたテキストファイルです。

 

さて、例えば上図のトゥイーターはFsが1.8kHz、Qは約1.6です。

このFsを放ったらかしで、計算だけで作ったクロスオーバーネットワークが効くと思います?(効くわけ無いでしょ。)だから、このインピーダンスを盛り込み済でクロスオーバーを再設計するわけです。相手を知らないままのクロスオーバーは、結婚相手を知らないままでやる結婚式と同じです。上手く行くわけ無いでしょう。

 

上記のとおり、振幅・位相・インピーダンスはすべて実装状態で変動します。なので、実装の状態で各ドライバーの素特性を測っておく必要があるわけです。これは結婚前に結婚相手の性格と本質をしっかり知っておくのと同じです。

 

 

クロスオーバーシミュレーション

 

・・・と、ここまでで、実際のシミュレーションは明日以降でやっていきます。

 

意気込んでみたはいいものの。元の特性が良いドライバー同士だからこそ、キレイに繋がる。そういうものです。各受持ち帯域でさえも特性が荒れてるドライバーだと、単純なXoverだけで綺麗にフラットになる予感はあまりしませんね。結婚前からあまり幸せになれない予感でマリッジブルーな気分です。・・・それでさえ振幅平坦・位相直線も夢でないのは、DSP。。。。まさにオーディオ界のチートです。

 

 

しかしまずは、限界がありつつもパッシヴネットワークなら何処まで行けるか? 次回、チャレンジしてみましょう。