KENWOOD LS-11ESを骨までしゃぶるシリーズ~

本日は、REWを用いての疑似無響に初チャレンジです。

Daytonに比べると知識が必要で難しいぞ~。

 

 

マイクロフォンのセットアップ

有響室で擬似無響計測をするにあたり、一番大切なのはスピーカーを何処に置くのかと、マイクロフォンの正確なセットアップです。

 

スピーカーは後壁、側壁、天井、床すべてから出来るだけ離した方がよい。

つまりできるだけ部屋の完全中央ではなくオフセットは付け、しかし中央の近くに置けるとよい。床からは十分に持ち上げる。

マイクロフォンの距離は欲しい時間窓によって決まる。本当は1m以上離した方がよいが、反射をリジェクトしきれない場合は70~80cm程度まで近づける。

マイクロフォンの焦点は、遠点であればトゥイーター軸上でもよいが、近づくとトゥイーター軸上では無理がでる。2wayであればウーファー+トゥイーターの中間高さを狙う。

 

今回は、スピーカー-マイク距離70cm, 高さは93cmでトゥイーターとミッドレンジの中間辺りの高さをフォーカスしました。

 

下図は私がマイクセットアップ時に計算させているスプレッドシートです。

 

これによって許容できる時間窓の長さを計算させています。

疑似無響計測の原理とは、上記L1/L2のマイクセットアップ位置で決まる壁面反射距離L3をもって、L3-L1に「到達時間差」を作っておき、疑似インパルス後の時間差分の計測データを時間窓で切り取りつまり、「反射の影響をリジェクトする」ことによって擬似的な無響特性を得ます。

スピーカー発音部が床に近づいてしまうと、L1≒L3に近づいてしまうので到達時間差が捻出できず、疑似無響計測にならないことが判ります。つまり床や壁からできる限り離した方が計測精度に有利なのです。

 

上記スプシの計算では時間差=3.8msec.となっていますから、今回は4msecまで大丈夫。多少の反射を許容すれば、5msec.位までは時間窓を伸ばしても平気だろう・・・といった事が判断できます。

バッフルステップやエッジ回折などダイアフラム以外の影響を知るにも、できるだけ時間窓は長く=低い周波数まで遠点で測れた方がよいのです。ですが時間窓を長めに取ると、反射を沢山拾って正確な無響測定では無くなるというトレードオフがあります。

 

 

上図はAndromedaで私がいつも使っているアライメントです。

超トールなぶん、距離差が稼げて優位なことが判ります。マイク距離は0.8m~1mの間で適宜変えています。

 

マイクセットアップする際は、糸やメジャーを駆使して可能な限り正確なセットアップをします。ここを怠ると再現性が悪くなります。また更に、プロフェッショナルになるとスコープを取るときにレーザービームを用いて正確にマイクセットするようです。

 

 

REWのセットアップ

 

最初、Windows上で計測を始めましたがどうしても巧くいかず、結局はMacにもインストールしてそちらで計測を実施しました。スピーカー計測といえばこれまでWindowsが定石でしたが、とうとうソイツまでMacへ移行。Macでスピーカー計測できたのは初めての経験です。REWもminiDSPもMac版がシッカリ在るのだから、これからはMacが主線になるかもしれませんね。ソフトウェアはクラウドベースが主流なうえ、西海岸では誰もWinなんか使ってないから、ニッチ用途を除いてWindowsの必然性は年々低くなるばかりです。

 

Mac版にした主因はオーディオデバイスとしてAirPlay (Apple TV / WiiM)が使えるからです。サウンドデバイスを繋げるのがおっくうで、どうしても無線で飛ばしたかったのです。Dayton Audioでは出音と計測が無関係だったからどうでも良かったのですが、REWの場合は「REWそのもの」がスイープ信号を発してそれを使いますので、発音源と計測器が同一PCでなければいけません。WindowsからもAirPlayを使いに行く裏手段はありますが、そちらは巧く動きませんでした。

 

 

REWを起動して一番最初にやることは、オーディオデバイスのセットアップとキャリブレーションファイル(較正テーブル)のセットです。

 

右上のスパナ[Preference]を選びます。

 

[Soundcard]のタブを選びます。

Output DeviceとInput Deviceを選択します。

 

私の場合は出力に「AirPlay」、入力には「OmniMic」を選びます。AirPlay出力の場合、装置がアクティブになっていなければ外れている確率が高くなるので、起動するたびAirPlayになっているかを再確認する必要があります。

 

バッファサイズは大きくすると安定はしてもレイテンシが大きくなって別の問題が出るので、デフォルトのままで良いでしょう。

 

Sweep Levelはヘッドルームも考えて設定する必要があります。ここもデフォの-12.0dBFS位で良いのではないでしょうか。

 

[Cal files]のタブを選びます。

サウンドカードもマイクロフォンも可聴帯域の特性がフラットとは限りません。特にマイクロフォンの較正テーブルは必須です。

USBオーディオデバイスの場合も、音作りの為に平坦でなかったり、帯域端でオジギをしている場合があります。その場合はオーディオデバイスのループバックテストを行い(説明省略)、較正テーブルを自分で作って読み込ませる必要があります。

AirPlay/WiiMの場合は可聴帯域の特性平坦が十分担保されてると考え、較正は省略しています。

 

Mic cal files のところの [Browse...]ボタンを叩いて、用意しておいたマイクの較正テーブルをロードします。

 

上図は私の使っているOmniMicの周波数特性=較正テーブルです。

特性補償しないとわずかに揺らいでいることが判ります。

 

コレで計測系の平坦性が担保されました。

系の平坦性が確保されていないと、スピーカーを計測しても正確なものさしとはなりません。

 

[Analysis]のタブを選びます。

ここではFFT解析のパラメータをセットしておきます。

後からでも変えられるのでいじらなくても支障はありませんが、目的がはっきりしている時にいちいち再設定するよりはデフォルト値を決めておくと何かと便利です。例えば窓掛けの種類(関数)や時間窓長、スムーシングなどですね。

 

 

・・・ということで初期セットアップは終わりました。

 

しかし実はこの後、実際に計測してみてこの測定環境の問題点が露呈したのです。

REWは、このままでは我が家の計測環境として使えません。その顛末は次回以降で・・・。