アンプABブラインドテスト。

 

ミッドバスの駆動アンプの切替では、信じられないほど大きな違いを聴かせてくれました。それではトゥイーターの駆動ではどうか。今回は、プレナー型トゥイーターAMT PRO-4の駆動アンプをスイッチングしてテストしていきたいと思います。

 

AMT PRO-4は 40x150mm の巨大なダイアフラムを持った、全面駆動型のAir Motion Transducerです。駆動の原理的に分割振動は発生せず、顕著なブレイクアップは見られず、また前面音響負荷(ロード)が掛かることによって歪が低下します。

Andromeda-Gammaにおいてはこの巨大面積のAMTを4次950Hzという低いクロスオーバーで設計し(実効クロスは1kHz)、可聴帯域の4oct.以上をこれ1本で受け持つことで独特な音質を生み出しています。

 

一般的なトゥイーターが再生するのは2~3kHz以上の「高域」になりますが、このシステムについては「中高域」という呼び方になるかと思います。

 

今度はHighの実験なので、またレベルを正規化。

トゥイーターを基準にして、Super Bass と Midbass 側のレベルを-3dBずつ下げます。

 

背面の結線もやり直しました。さっそく聴いてみましょう。

 

 

・・・おお~。そうくるか。

 

A/Bスイッチすると音質に違いが感じられます。

 

しかしそれは、ミッドバスを駆動したときよりはかなり小さな違いのようです。それでもハッキリと識別はできます。この違いなら、95%以上のヒトが識別できるんではないでしょうか。

 

 

MOS-FETって一般に、オーディオマニア的には特に高音に特長があるような言われ方をしますよね。高域が繊細とか、高分解能とか、鋭い切れ味とか。大電力高速スイッチングが可能な素子、という認識でそう言われてるかもしれません。しかし現実にはシリコンMOS-FETはCgs(寄生容量)が大きめで、高域再生には不利なんですね。いわゆる位相余裕が取りにくく、ゲート信号を少し引っ張るだけで容易に発振するから、位相補償を大きめにせざるを得ない。結果、セットの高域特性もロールが早くなります。単純に、MHz帯を狙いたいんだったらバイポーラ(BJT)の方が有利なくらいです。(不可能ということではないらしいですがスキルが要求される)

 

実際に音を聴いてきた経験的には、私もSi-MOS-FETに対して世論と同じような心象を持っています。高域が鋭く繊細で、音数も多い気がする。ソレもしかするとニュートラルではなく少し「独特」なのかも知れませんけど。もはやその長年の心象も自信がありません。先入観かもしれませんしね。たとえばSANSUIやDENONの...UHC-MOSっていうんですか?そういうの。MOSっぽいなとは感じませんでした。これホントにMOSなの?位の感じです。なので、思い込みMOS先入観なのかもだし、作り込みによってもその辺の音感はいかようにも変わってしまうものだなと。

 

トゥイーターを駆動。

 

[A] MOS-FET自作と / [B] MERIDIAN の音質差は僅差でした。

 

それでも、一度音を覚えてしまえば、どちらがどちらかを当てられる位にはハッキリ違いますね。

[A][B]どちらも大変整った音で、特に瑕疵や弱点は感じません。ただ、細かいところやサウンドステージに違いが生じるようです。端的にいうと[B]はハッキリスッキリ爽快。かっちりとした音像が結像します。だから定位だけで言えば、「Bの方が定位が鮮明」ということでBを推す人もいるかも知れません。対して[A]は? Aも鮮明な定位はしているんです。ただ、その定位と定位の間。音像と音像の間のなにもないはずの空間にも[A]は音が有るんです。そこが最大の違い。

それはナニ?うまく表現できないんですが、なにか気のようなもの。ふんい「気」っていうんですか?ステージがなにかで埋め尽くされています。Bはスカッと抜けきった鮮明な音像。Aはなにやらモヤモヤとした雰囲気を伴った音像。人によっては、Aはモヤってる、濁っている、鮮明で無いなどの評価をするかもしれません。しかしここでも私はAの音の方が好きなんです。

 

それと、ステージの広がり方もかなり違うようです。特に、位相をいじっているポピュラー系の特定のソースですね。

Aは異様に広大に広がります。スピーカーの奥や外側はもちろんのこと、私の後方にまで定位が及ぶナチュラルサラウンドです。リアスピーカーが鳴ってるみたい。Bもかなり広がりますがAよりは節度がある感じ。どちらが正しいのかは判りません。正しいかはともかく、聴いててオモシロいのもAの方でした。

 

高域のキレ、繊細感、分解能の高さはほとんど変わりませんね。ABどちらも良好です。Bの方が付帯する音が少ないぶん、解像度が高い、キレがあると判断する人がいてもおかしくないと思いました。モヤが付帯するせいか、全体的にAの方が音が柔らかめでソフトに拡がる印象はあります。しかしその差は僅差です。差を誇張して記述していますが、どちらも同じように優秀と思いました。

 

 

 

高域の切れ込みや分解能を聴けばいいんでしょ? ...と選んだのがこのあたり。アーテアのパッサージ。

見たことのないオリジナル独自楽器を用いたエスニックな香りのアヴァンギャルドな1枚。

高域はAB差がよく分からんです。どっちも素晴らしく切れ込みが鋭く解像度もいい。ただ、音場のでき方は違うみたい。 [A]はなにやら妙なモノがふわふわ空中を漂っている(気がする)

 

この2枚はヤバいでしょう。

 

元々がスピーカー2本でナチュラルサラウンドな二枚ですが、A+Gammaで聴くこれらは最早狂気の沙汰。野放図に回り込んでくる音場、リスナーの四方をぐるんぐるん飛び交う音、空間が埋め尽くされる感触、自分史上最高のサラウンドです。で、Bは少しだけこぢんまり。

 

大好きな第三楽章を聴きます。テンシュテットは「滋味」でエエです~。

 

ハンドベルの鮮明さとか。これも史上最高にいい。なんだAB同じじゃないか。どちらも弦は合格点です。

・・・と思って聴いてたら、奥で鳴ったオーボエが...AとBでかなり違う

倍音の出方が違うのかなぁ? MOS-FETって偶数次高調波が多いんです。んでもって奇数次は低いんです。つまり真空管みたいな裸特性なんです。「超低歪」を狙いたいだけなんだったら、そちらもBJTの方が優位です。

あまりにもイイんで、途中からAB切替試聴忘れて最後まで聴いてしまいました。

 

これら以外にも沢山のソースを比較しましたが。とにかくAとBは違います。

違いをしっかり検知できるということは分かりました。

 

ただしその差は中低域のときほど大きなものでなく、ABどちらを選んでも不満はありません

 

 

MOS-FETでGammaを鳴らしはじめて早2ヶ月半、か。

Gammaいいな~。堪らんです。

 

本当は、そろそろ他のAndromedaにスイッチすべきなんでしょうけれど、蜜月すぎて本能が拒否するんです。毎日、最近聴いていないソースを引っ張り出しては、いちいち聴いたことのない鳴り方をするものだから美味しすぎて皿を交換する気になれないんです。

 

 

以上でABテストのお話はいったんオシマイ。

 

「もしかしたら私では違いを聴き分けできないのでは?」との恐怖を伴って臨んだテストでしたが、結果はご覧のとおりです。驚くほど大きな違いを感じ取れたり、また、MOSなんだから高域で違いが出るんでしょ?と思いきや、ファンダメンタル帯域の方が大きな差を感じたり。。。などなど、示唆と刺激に満ちた体験になりました。

 

繰り返しますが、私は今回の体験を通じて

「アンプの音はやっぱり違うよね!」と胸を張って(それもかなりそり返って)、言えるようになりました。