超小型なのに20Hzまでフラットに出るサブウーファーだって?? んなアホな。
なんでこんなものを作ろうと思い立ったか?
元凶はコレ。コイツ。TEAC君。
過日、TV用スピーカーの、センタースピーカーの左サイドに設置されてた、コレ。
TEACのサブウーファー。
元々はミニミニコンポのウーファーとして作られたものかな?
型番はなんていうんだろう、MC-DX32i ?
新しく製作・設置したTV専用のTVスタンド兼スピーカー。音質はなかなか絶好調。
でも、このセットのなかでサブウーファーだけが猛烈に音質が悪い。もともとは500円くらいで手に入れた中古だから文句も言えませんが。ブーブーゴウゴウ、低音らしきものは出るが、鳴らせば鳴らすほどに濁りが気になり、再生音全体の品位を落としてる。コイツの電源を切るだけで、音質はスッキリ、透明感も出てきます。
しかし、TV用のサイドスピーカーは8cmのフルレンジやウーファーだから、重低音まで過不足なくとは言い難い。そこで、ついでだからサブウーファーも自作すべぇとなった次第です。
どうせ作るんだったら、ディズニーピクサー系の映画を観ててもそんなに不満の出ないような、20Hzまで再生できるウーファーにしちまえ。でも、スペースには限りがある。ラックの中で専有できる体積は、頑張ってせいぜい6~7リッターが限度です。そんなんで20Hzなんて再生できっこない。
最初はXbass同様に、Fsの再同定でもしようかと考えましたよ、ええ。でも、そうすると電子回路工作まで含めてどうしても大掛かりになるし、だいいちセットがラックに収まらなくなります。なんとかパッシヴなスピーカーシステムだけで、20Hzまでフラットにひねり出したい。本当にそんなこと可能なのか??
シミュレーションを繰り返すうち、そんな荒唐無稽な構想が、がぜん現実味を帯びてきた。
具体的には6次バンドパスとします。(6th Order Bandpass)
たった8cmのウーファー。たった7リッターのバンドパス箱。これだけで、20Hzとは言わないが、シミュレーション上は22Hzぐらいまでフラットに再生するという占いが出た。ウソでしょ?ホントです。この占い結果が本当なのかを検証するためにも、実際に工作してみる。そして、測定をしてみましょう。
ここで閑話休題。世にはWave Spectra辺りを使って、遠点で測って「20Hzまで出ている」という主張も見られますが、残念ですが認められません。大概においてそれは、ルームゲインによって盛り上がっているだけであったり、あるいはスピーカーから再生される以上の暗騒音を拾ってレベルが平坦に見えているだけです。疑似無響に準ずる測定方法でキッチリ20Hzまで出ていなければ、「出た」とは到底認められません。20Hzってそんなにカンタンには出ないですよ。
かの(私も大昔使ってた)YAMAHA SW1000だって、カタログには16Hzなんて数値が書いてあるけれど、16Hzでのレベルは -16dBですからね。-6dBで24Hz、だったかな? 20Hzにはほど遠いです。
20Hz (-3dB) ハーフパワーポイントで、はじめて20Hz再生と認定されるでしょう。
脱線しました。
上で散々悪口を書いているTEACのウーファー。実測した周波数特性は以下の通りです。
低域再生限界はせいぜい50Hzといったところですね。
周波数レスポンスだけで音質が判るわけでもありませんが、何だかひどい音質を裏付けるかのような特性です。中高域がポートからだだ漏れだし、しかもかなり高域まで高いレベルを保っています。これでは全域に渡って混濁した音質になるのも、さもありなんですね。
サブウーファーは低域が伸びていることも大切ですが、中低音以上がキッチリ切れていることのほうが重要なんです。その点、6次バンドパスは両肩が急峻になることが期待できますね。
今回のプロジェクトへ利用するのは、TangbandのW3-2108 という3インチウーファーです。
3インチ?? 8 cm ~ 8.5 cm ?そのくらいの、とにかく小さな小さな口径のウーファーです。Fsは45Hzくらいです。そんなんで、なぜ20Hzまで出せるのでしょうか? それが出ちゃうんですよ。今回のこのエンクロージャーにドンピシャな、とても特殊なジオメトリを持つウーファーだったんです。それともうひとつポイントとして、8cm口径では例を見ない7mm ものXmaxを持っています。20Hzまで再生すると、ポート頼りとはいえExcursionがドエライことになりますので、この余裕度は有り難い。(それでも容易に破綻はしますけど。)
下図は裸で測ってみた W3-2108 のレスポンスです。参考程度に。
ま、これだけ見ると20Hzまで出そうな感じは全くしませんやね。
加えて、以下が6次バンドパスボックスでのシミュレーション結果です。ポートとチューン周波数をこねくり回し、ようやくたどり着いたのがコレ。
スケール判りますかね?
グラフ左端が10Hz。だから低域端の肩がちょうど20Hzの辺りです。目が点です。ホントなのかこれ?これはタダのシミュレーションです。本当に出るか分からない。でも、シミュレーション通りに動かせるからこそのT/Sなんだよね。これは失敗作だとしても、作ってみるほか無いです。
ただし、構造設計は苦労しましたねぇ。
内容積がたった7リッターちょいしか無いんです。それでポートチューン周波数が異常に低いです。ということは、ポートが長大になってとても箱に収まらない。仕方がないから内部で複雑に折り畳んでいます。
これが構造設計図なんですけど、3次元図面じゃないから、良く判らないですよね?
これは箱の計算をしていたときのスプレッドシートです。
前室が1.2L、後室が6.2L。トータルで7.4リットルしかありません。
ポートはどちらも60cm近い長さがあり、ポートチューン周波数は前者が54Hz、後者が22Hzです。
さてこの占いの結果は果たして、吉と出るか。凶と出るか。
次回からはいよいよ工作編へ突入。キエフの大門もとい、パンドラの箱を開けに行きますよ。