本日の二回公演終わりました。その前日まで広島の山の中で金管五重奏の合宿をしていました。

昼公演のワンデイモアの所で地震の影響で一度舞台が止まりました。全ての安全確認が終わった後再開。

「舞台の上で死ぬのが本望」等と云う幻想は抱いていないですが、そうなったらそうなっただ、と云うような所はあります。実際の所ボチボチ揺れました。でも何故か心はそんな時には冷静なものです。休憩の時に聞きましたが、中越地震の時はもっと揺れたそうです。

あとは、実際にスターズが始まる前のシーンで4年前にも帝劇旧演出でグラリと揺れたのを思い出します。あの時は東日本大震災が起きたすぐ後の時期で「今日も…一日を生き延びた…」と云うワンデイモアが妙なリアリティーを持っていたのを思い出します。でもあの時のプレビュー公演初日での一幕終わりの割れるような帝劇での拍手は忘れられない瞬間です。


帝劇公演、あとわずかです。
広島金管五重奏合宿二日目終了。

京大、佐賀とレッスンをしてきて思ったことがある。

京大でレッスンをした時にあるエクササイズをやってもらった。

A. まずはマウスパイプを包むように口でくわえ、「息を出してごらん」と言って出してもらう。大抵の人は抵抗と出すエネルギーのコントロールには無頓着で無造作に出す。

B. その後、完全に抵抗ゼロの状態で「楽器を通る」息の流れを意識して、かなり「えっ、こんなんで吹いているの?」と云う感覚で息を出してもらうと息の音がかなり静かな感覚になる。

C. 大体一度で理解するには身体の感覚の先入観が邪魔をする事が多いので「???」が出つつもやってもらい、その感覚をよく観察してもらう。

D. そして今のパイプで息を通した感覚で楽器をまず吹いてごらん、と促し、吹いてもらう。この段階で出たサウンドには不完全な要素があるにしても根本の音のコシが改善されている。

E. そして「普通にいつも通り吹いてごらん」と云うと全く今までとは違う自然さと響きで吹く。

佐賀でもこれをやり、スゴくいい感じだった。

この現象で興味深いのは、A→Eに辿り着く際にお互いを結び付ける直接的な関連は無いのだが、その過程で微細な感覚修正をしていくにつれて人間はそれを出来るようになるのである。そこに導くようにガイドするスキルこそ教育者としての資質が問われる所だ。

レッスンに付いてだが、勿論金銭や時間、エモーションの投資や想い、フラストレーションからの解放など、色々なモチベーションがあると思う。だから「元を取らねば」とか「限られた時間の中で出来るだけ多くの事を吸収せねば」と云う思いや考えがあるのも解る。

しかしながら思うことは、レッスンを受ける際に生徒に考えて欲しい事は実は「1つの事を明確に理解する」と云うのは大変で素晴らしい事であり、それが実は自らの抱いている幾つもの疑念を解く新たな道への鍵である事なのだ。


最近はこの「理屈では説明出来ない」感覚を教える事が大分出来るようになった。前よりも限られた事に時間を費やしている。しかし、生徒の「音を激変させる」のは正直そこそこのスキルがあれば出来る。その先の「自立できる感覚」を教え、定着させるのが教育者としての自分の任務なのである。
怒濤の日々。しかし充実。

マッキントッシュの作品のオーケストラスコアで特に強調されるのがその緻密な描写だ。アーティキュレーションの一字一句、ハーモニー、メロディーが芝居の時間軸、情景、キャラクターの感情、そこに意図されている表現を非常に具体的に浮かび上がらせ、リードするので、作品の内面、演出を理解するにはどれだけ音楽を読み取れるかのスキルがかなり大きなウエイトを持つ。

燃え尽きずに新鮮なモチベーションを保つには毎日の微調整と定期的な見直しをオレは常にしている。めんどくさい、大変と思われるかもだが、クオリティーを維持し、メンタル&フィジカルをキープするにはそれが結局はよく、楽なのだ。あとは適度にガス抜きをすることね。笑

この前、トム・ピアソンとブロードウエイに付いての話を電話でたまたましてた。やつは70年代にウィズ、キャンディード、シラノ(ワイルドホーンじゃないやつ)とかをブロードウエイで振ってた。

ブロードウェイではオーケストラは全てが出来上がった後に最後に「加えられる」感じだから、基本ミュージシャンのショーとの関わりはドライで、キャストや他のスタッフとの関わりもほぼ皆無、ロイド・ウェバーのオペラ座の怪人だったらさっさと22:20には劇場出口から家に帰る途中、昔のレミゼなら23:05で毎公演超過手当て付き、その後時間削って3時間以内に収まり超過手当て無くなるチッ、そんなドライな世界だった。

オレもブロードウェイでレギュラーやレギュラーエキストラとして参加した演目が色々あり、レミゼやサイゴンはオリジナルブロードウェイプロダクションのロングランの最後の方で頻繁にエキストラで2~3年ぐらいかな、演奏した。

日本でミュージカルをやり始めて大体ちょうど5年になる。ブロードウェイでは決めごとは決めごとで非常にハッキリしていてエキストラの奏者にはリハーサルはない。一度ピットで見て次本番、ダメだったら指揮者にNG出されて終了。緊張感あるが楽しいし、8つのショーのエキストラ初日は全勝した。最初に電話が掛かって来た時に予定が空いてなかったら大抵縁がない。それでフル・モンティーのリードとキャッツは逃した。笑

日本は複数キャストと複数の解釈、タイミングがあるのでブロードウェイよりもさらにアンテナを張る。でもブロードウェイで出来ないことがここでは出来る、それを楽しんでいる。