今日はある人に招待され、「シラノ」の東京千穐楽を観劇に日生劇場に行ってきた。

去年は実際にジキルとハイドでずっと演奏していたが、なんか懐かしい感がある。亡くなったオレのおふくろが昔にフランスの名ピアニスト、サンソン・フランソワのリサイタルをここで聴いたのがもう40年以上前の話である。何年か前にその演奏のCDが発売されていたのを知り、買って聴いたその演奏の魂の気高さに心動かされたのを覚えている。最後の来日、コンディションは決してよくなかったのだがそういうものを超越する物がある。


そして今回の鹿賀シラノ。


彼には本当に不思議な魅力、魔力がある。二年前の帝劇のレミゼで演奏していた時のSPキャストの彼のジャベールでも思ったが、舞台の空気がすっと変わる。そして凝縮される、これはテクニック云々ではなくて魂のエネルギー。背負って来たもの、生きざまの象徴みたいなもの。


彼の最大の魅力の1つは、脆弱性の描写の素晴らしさ、なにかが起きたら破綻して壊れてしまうのではないか、と言う緊張感溢れる空間の作られ方が全然違う。所謂「演技」では出来ない種類の緊張感だ。


しかし、その声、しぐさ、表情、空気。


今日の舞台で感じたのは、鹿賀丈史一世一代の大芝居の魅力を存分に見せてくれた見事なシラノだったなぁ、と。これが一流の役者だよ。


やっぱ指揮、塩田の音楽は舞台を引き締める。情景描写に対して敏感で、場面転換ですっと空気が変わる。そして変化のメリハリがハッキリしているから表現がクリアーだ。プレイヤーとして彼と一緒に幾つかの演目をやってるけど、ブラボーだった。


いい余韻が残るいい夜になった。