今日はファントムのオフ日につき、のんびりしようと思っていたが、手帳に「サックス(クリーブランド管弦楽団首席トランペットマイケル・サックス; Michael Sachs)マスタークラス@芸大」と書いてあった。弟子がオッタビアーノも行くって行っていたので早速ヤツに業務連絡。
上野駅公園口で合流。会った途端オレらはハイペースで喋り始める笑 速歩きで芸大に。
サックスとは共通の知人は多分数百人は軽くいるのだがサックス本人とは初対面。久しぶりに芸大教授、杉木氏に会う。顔色も良く、元気そうにしていた。
クラスはまず、基礎、ウォームアップのアプローチで始まる。バズィング。楽器の原理解明には非常に有用だが、やり過ぎるとあまりよくない、と。そしてピアノと一緒に。自分のマウスピースが【増幅体】として感じられるように。ストレスなく楽に自然に、しかし音の頭の部分でしっかりサウンドが始まるように。ボーカル的なアプローチで。
後は、サックス本人の教則本やスタンプを通して、音と音との移り変わりにギャップやブレ(所謂「音の変わり目ですよーってネタバレ」)をなくしピタッと音の移り変わりが一つのポイントでキチンと行われること。
前からずっと思うんだが、日本人のトランペット奏者でこれが本当の意味でキチンと出来る人ってほとんどいないんだよねぇ。やっぱりキレイに繋ぐ=捻って繋げてる感じになってる。
後は、ロングトーンをやるときに、所謂自分の身体に残った終わりの部分まで絞り出すように吹くのではなく、自分の身体がリラックスしてコントロール出来る所まで最大限に伸ばすという練習法。
そして「Whatever works for you」をキチンとマイクは強調していた。マイクのアプローチは理路整然としていて非常に明晰、そしてその中でも生徒それぞれが音楽家として自立した考えを持ち、音楽における決断が出来るように、そして基礎が何のために積み上げられるのか、それを明確に示していた。
彼はキッチリ40~45程掛けてウォームアップをする。但しこれが5分の人もいれば一時間の人もいる。重要なのは、自分がウォームアップをする際に必要なツールを提供するエクササイズ、練習曲を選択することであり、タンギングならタンギング、スラーならスラー、インターバルならインターバル、それぞれの要素が自分の中で確立、確認、反復できる練習曲のシークエンスを組み立てる。
そのアイデアを見事なクリアーさで紹介していた。
その後に芸大生達がソロやオーケストラスタディで受講する。やはり基礎的音楽的素養は東京芸大の学生達は頭一つ抜けている。識別能力と基礎的な先天的ソルフェージュ能力は高い。
しかし、場に漂う空気を感じ、動かす能力には欠ける。だから長い音にモーションがない(マイクはこのモーションについて、前の首席オーボエのジョン・マックの言葉、アプローチを引用して「螺旋のように前に推進力を掛ける」と表現した)し、細かいアーティキュレーションにトーンとエネルギーがない。コントラストが小さいボリュームの変化にとどまっている。後は、「音が伸びている」という感覚が音の最初の部分と終わりの部分で芯を掴んでいない。マイクは音価をキチンと保ち、より敏捷でクリアーなアーティキュレーションを求めている。だから、響き、質感、奥行きに於いてマイクのサウンドとはまだまだ次元が違う。フンメルのトリルやグルッペットにしてもオリジナルな5キイのトランペットで機能的に超速トリルは出来ないからもっと柔らかく優雅にやるべきというのは興味深いポイント。
オーケストラスタディでもそれは如実に表れた。芸大生の金管セクションで展覧会のプロムナードをやったのだが、
「大きく吹く訳じゃないんです、音の出だしの重心のポイントの差であって、アクセントのある音とない音に根本的な長さの違いとかはあまりないんです」と言って実演。
響きのコンセプト、サウンドの重心のポイントというのは音の基礎に於いて絶対不可欠な要素であり、これが出来ない人は出来る人と絶対に同じ土俵には立てないんだ。
マイクの音の存在感、明晰さ、純粋なミュージシャンシップ、そして気さくな人柄、その中にある最高レベルのプロフェッショナリズム。素晴らしいものだった。やはりアメリカ最高レベルのオーケストラの首席を背負い、積み上げてきた重みがある。今まで数々のサックス弟子から断片的な情報は色々耳にしたが、やはり自分で聴いてみてわかった。
自分で経験しなければわからない。
まぁ、オレも通訳をやる身として感じるけど、生徒達がもっと言語力を身に付けてニュアンスが自分で咀嚼できるようになるべきだ。でなければ外国人のマスタークラスって只のミーハー外タレ招集イベントになるからだ。
スターダストは確かにインスピレーションを与え、素晴らしい演奏やアーティストのオーラでモチベーションは高まる。それは一時的なことだ。でもそんな発想のヤツが最高レベルで活躍することはまずない。それだけでたどり着けるほど甘いものではない。これを肝に命じるべきだ。
将来活躍したかったらサックスと同レベルで演奏するのを100%現実的なゴールに見据えて修行しなければならない。そういうヤツが200人ぐらい競い合って10年もすれば音楽社会の意識は高まるさ。
終わった後で10人ぐらいで飯。マイクと少し喋った。彼の育った地、その気さくなロスのエスプリを感じる。純粋であり、シビアなプロフェッショナルである。でもそのエネルギーが心地よい。マイクの演奏、レッスンのアプローチにグールドと通じる要素が思ったより沢山有った。グールドの凄さも改めて感じる。サックスはグールドの様に吹かないけど、アーティストの気概、エスプリってのはジュリアード、ニューヨークのDNAを感じた。
いい夜だった
雨上がりの夜空がとてもキレイ。
上野駅公園口で合流。会った途端オレらはハイペースで喋り始める笑 速歩きで芸大に。
サックスとは共通の知人は多分数百人は軽くいるのだがサックス本人とは初対面。久しぶりに芸大教授、杉木氏に会う。顔色も良く、元気そうにしていた。
クラスはまず、基礎、ウォームアップのアプローチで始まる。バズィング。楽器の原理解明には非常に有用だが、やり過ぎるとあまりよくない、と。そしてピアノと一緒に。自分のマウスピースが【増幅体】として感じられるように。ストレスなく楽に自然に、しかし音の頭の部分でしっかりサウンドが始まるように。ボーカル的なアプローチで。
後は、サックス本人の教則本やスタンプを通して、音と音との移り変わりにギャップやブレ(所謂「音の変わり目ですよーってネタバレ」)をなくしピタッと音の移り変わりが一つのポイントでキチンと行われること。
前からずっと思うんだが、日本人のトランペット奏者でこれが本当の意味でキチンと出来る人ってほとんどいないんだよねぇ。やっぱりキレイに繋ぐ=捻って繋げてる感じになってる。
後は、ロングトーンをやるときに、所謂自分の身体に残った終わりの部分まで絞り出すように吹くのではなく、自分の身体がリラックスしてコントロール出来る所まで最大限に伸ばすという練習法。
そして「Whatever works for you」をキチンとマイクは強調していた。マイクのアプローチは理路整然としていて非常に明晰、そしてその中でも生徒それぞれが音楽家として自立した考えを持ち、音楽における決断が出来るように、そして基礎が何のために積み上げられるのか、それを明確に示していた。
彼はキッチリ40~45程掛けてウォームアップをする。但しこれが5分の人もいれば一時間の人もいる。重要なのは、自分がウォームアップをする際に必要なツールを提供するエクササイズ、練習曲を選択することであり、タンギングならタンギング、スラーならスラー、インターバルならインターバル、それぞれの要素が自分の中で確立、確認、反復できる練習曲のシークエンスを組み立てる。
そのアイデアを見事なクリアーさで紹介していた。
その後に芸大生達がソロやオーケストラスタディで受講する。やはり基礎的音楽的素養は東京芸大の学生達は頭一つ抜けている。識別能力と基礎的な先天的ソルフェージュ能力は高い。
しかし、場に漂う空気を感じ、動かす能力には欠ける。だから長い音にモーションがない(マイクはこのモーションについて、前の首席オーボエのジョン・マックの言葉、アプローチを引用して「螺旋のように前に推進力を掛ける」と表現した)し、細かいアーティキュレーションにトーンとエネルギーがない。コントラストが小さいボリュームの変化にとどまっている。後は、「音が伸びている」という感覚が音の最初の部分と終わりの部分で芯を掴んでいない。マイクは音価をキチンと保ち、より敏捷でクリアーなアーティキュレーションを求めている。だから、響き、質感、奥行きに於いてマイクのサウンドとはまだまだ次元が違う。フンメルのトリルやグルッペットにしてもオリジナルな5キイのトランペットで機能的に超速トリルは出来ないからもっと柔らかく優雅にやるべきというのは興味深いポイント。
オーケストラスタディでもそれは如実に表れた。芸大生の金管セクションで展覧会のプロムナードをやったのだが、
「大きく吹く訳じゃないんです、音の出だしの重心のポイントの差であって、アクセントのある音とない音に根本的な長さの違いとかはあまりないんです」と言って実演。
響きのコンセプト、サウンドの重心のポイントというのは音の基礎に於いて絶対不可欠な要素であり、これが出来ない人は出来る人と絶対に同じ土俵には立てないんだ。
マイクの音の存在感、明晰さ、純粋なミュージシャンシップ、そして気さくな人柄、その中にある最高レベルのプロフェッショナリズム。素晴らしいものだった。やはりアメリカ最高レベルのオーケストラの首席を背負い、積み上げてきた重みがある。今まで数々のサックス弟子から断片的な情報は色々耳にしたが、やはり自分で聴いてみてわかった。
自分で経験しなければわからない。
まぁ、オレも通訳をやる身として感じるけど、生徒達がもっと言語力を身に付けてニュアンスが自分で咀嚼できるようになるべきだ。でなければ外国人のマスタークラスって只のミーハー外タレ招集イベントになるからだ。
スターダストは確かにインスピレーションを与え、素晴らしい演奏やアーティストのオーラでモチベーションは高まる。それは一時的なことだ。でもそんな発想のヤツが最高レベルで活躍することはまずない。それだけでたどり着けるほど甘いものではない。これを肝に命じるべきだ。
将来活躍したかったらサックスと同レベルで演奏するのを100%現実的なゴールに見据えて修行しなければならない。そういうヤツが200人ぐらい競い合って10年もすれば音楽社会の意識は高まるさ。
終わった後で10人ぐらいで飯。マイクと少し喋った。彼の育った地、その気さくなロスのエスプリを感じる。純粋であり、シビアなプロフェッショナルである。でもそのエネルギーが心地よい。マイクの演奏、レッスンのアプローチにグールドと通じる要素が思ったより沢山有った。グールドの凄さも改めて感じる。サックスはグールドの様に吹かないけど、アーティストの気概、エスプリってのはジュリアード、ニューヨークのDNAを感じた。
いい夜だった
雨上がりの夜空がとてもキレイ。