短編ホラー小説・魔王の果実Ⅱ
【朽ちてゆく者】4

「くぅ~言わせておけば!何が目的じゃ!お主!」

「目的?…目的ね…フフフ…あなたに理解出来て?この人間界に眠る究極の秘宝…と言えばいいかしら…“デロッサの壺”…。」

マドリアの発言に顔色を変える権藤の手下。

「こ、困りますよ先生!そんな露骨にお宝の事を言われちゃぁ!っ…ぐふっ!?…。」

マドリアが突き出した杖が手下の腹部をとらえる。

「うるさいね…私に命令するな!…ゲスな人間の分際で…吸え!“ヒュドラ”!」

“ズシュウウウ!!”

「ギャアア!!ガハッ…グッ…。」

みるみる白骨化して行く男の身体。

それを見た権藤も腰を抜かす。

「ひっ!?ひぃいい!助けてぇえ!」

「デロッサの壺…お主の目的はいにしえに葬られた禁術か?…何故そんなものを?お主に禁術など使いこなせる…訳…!?お、お主…その詠唱をどこで!?」

マドリアの周辺に死人の魂が集まり始める。

「グレカリヤ…レイカリヤ…主は…我に罪を与え、我は…主に時を捧げる…集え!地獄の亡者達よ…赤き血の導に従い!」

ベルルの顔色が変わる。

「い、いかん!?久美ちゃん!逃げるのじゃ!」

「は、はい!おばさまは?」

「わしのことはいい!こやつ…躊躇なく禁術を使いよって!」

「フフフ…さすがは私の先生だけあるわ…デロッサまで知ってるなんて…千年以上昔の言い伝えを…でも…禁術はそればかりではないのよ!ハァアア!“デスパレス!”」

“ズボッ!ズボッ!…ギッ…ギギギギ…。”

地中から亡者が這い出しベルに迫る。

「フハハハ!これだから止められない!魔界では禁術でも人間界では私が正しいのさ!ここで私を戒める者などはいないのだから!さあ!亡者どもよ、生け贄を喰らえ!」

「こ、こやつ…狂ってる…。馬鹿なことを言うな!人間界とて同じじゃ!禁術を使って誰がそれを止めるのじゃ!人間界を地獄にする気か!」

「ハハハ!ハーハッハッハ!」

「ギギギギ…グァーグァー!」

「い、いかん…このままでは本当に地獄になってしまうぞ…あやつの好き勝手にはしておれん!」

ベルルの顔つきが変わる。

「メヒスト!ミハエルの命令で私をつけて来てるのはわかってるぞ!急げ!魔法陣じゃ!」

ベルの後ろで飛んでいたハエが焦る。

「い!?わかってたんですかぁ!?“ボン!”ベル様も人が悪いなぁ。」

「ええい!話てる暇などない!急げ!」

「ひぃい!はい、ただいま!」

続く