トランプはさまざまな事業に手を出し、失敗した事例も多々あるが、公平を期して言えば、本坊である不動産ビジネスの才覚を否定することはできない。逆に言えば、不動産ビジネスの才覚はあるが、その才は他の分野にうまく応用されることはできなかった。
マンハッタンの五番街に建てた高層ビル「トランプ・タワー」が、実業家トランプの金字塔であることには疑いがない。トランプはティファニーに隣接するその立地に目をつけた。トランプはそのロケーションを「ニューヨークで最も価値のある不動産」だと見抜いた。
もとより、そのような一等地がやすやすと手に入るわけはなかったが、1975年、まだ30歳にも満たない青年トランプはその土地に立っていたビルを手に入れようと所有者に執拗にアプローチした。
「売ってくれ」と頼む日々は3年ほど続いたが、そうこうするうちに所有者の会社が経営不振に陥り、土地とビルがついにトランプの元に転がり込んでくるという奇跡が起きた。-ビジネスで大成するには運も必要だが、トランプは確かに自らの持つ強運を証明してみせた。またその幸運を手にするまで、あきらめずに粘り続けるビジネスマンとしてのしつこさという必須の資質も併せもっていた。