安倍晋三首相は、憲法9条に自衛隊の存在を明記する自民党の改憲案策定を急ぐ方針を示した。首相は与野党の合意を優先し、戦争放棄を掲げる9条1項、戦力不保持と交戦権の否認を定めた9条2項は維持すると主張するが、自衛隊の明記と現条文の両立には多くの課題があり、自民党内の議論が難航する可能性もある。
「国民的な議論の深まりを期待する。憲法審査会で政党間の議論を大いに深めたい」。首相は10日、首相官邸での政府・与党連絡会議で自身の9条改正案への理解を求めた。
先日、首相は読売新聞のインタビュー記事の中で、憲法改正について連綿と述べたが、私は安倍さんは第一次内閣とメディア対応がだいぶ変わったと思う。第一次では、故父・安倍晋太郎元外相が元毎日新聞政治部記者だったことから、毎日新聞にはだいぶリップサービスをした。私より三つ上の与良正男毎日新聞論説委員などとはだいぶ仲が良かった。
だが、首相が第一次で果たせなかった「靖国神社参拝」に続き、「憲法改正」に乗り出したことを受け、朝日新聞、毎日新聞が猛烈に批判(特に社説)を展開していることから、態度を硬化させている。逆に、読売新聞、産経新聞が首相を擁護している。いつものことだが。
首相は9日の参院予算委員会で「9条1、2項はそのまま」と明言し、3項を新設して自衛隊を明記する考えを説明。「憲法学者の7、8割が違憲と言っている状況を変える」ためだと訴えた。実はこれは嘘。正しくは憲法学者の「9割以上」が違憲と認定。首相、もっとしっかりしてください。
ただ自衛隊を巡っては長年、「わが国を防衛するための必要最小限度の実力組織」で、2項が禁止する「戦力」に当たらないという政府見解が定着。現憲法下で自衛隊の運用に支障はなく、最高裁が自衛隊の存在を違憲と判断したこともない。
このため、1、2項の範囲内で存在を憲法に記すだけなら、自衛隊の実態は特に変わらない。ある公明党幹部は「国民の大多数は自衛隊が違憲とも思っておらず、首相案は必要性がないのでは」と困惑する。
一方、自衛隊の存在に対する違憲論は、自衛隊がやはり2項の戦力に当たるとする学説だ。2項がそのまま残ればこうした主張の根拠も保たれ、「自衛隊を3項に書き込んでも解決にならない」(内閣法制局関係者)との指摘も出ている。
逆に2項と矛盾せずに自衛隊の存在を明記しようとすると、3項の条文をどう書くのかが課題。首相は自らの案でも「現在の憲法上の制約は受ける」と答弁したが、自衛隊と2項の整合性をどう確保するかは大きな論点となりそうだ。