安倍晋三首相は4日に三重県伊勢市で行った年頭の記者会見で衆院解散・総選挙は「全く考えていない」と語る一方、今年と同じ酉(とり)年にあった郵政解散(2005年)などにあえて言及し、年内解散の可能性を示唆した。国内の政治状況や国際情勢を見極めながら、解散時期を探る年になることをうかがわせた。
首相は会見の冒頭で「本年は酉年だ。12年前、あの劇的な郵政解散があった」と述べ、05年に当時の小泉純一郎首相が郵政民営化を掲げ衆院を解散し、自民党が大勝した例に自ら言及した。
さらに24年前の酉年の1993年に宮沢内閣への不信任案可決を受け衆院が解散され、自民党が過半数割れで野党になった例にも触れ「55年体制が崩壊した歴史的な年だ」と振り返った。
また、48年前の69年を「佐藤(栄作)首相が沖縄返還で米国と合意し、解散・総選挙に打って出た年だ」と説明。「酉年はしばしば政治の大きな転換点となってきた」と強調した。衆院解散がなかった36年前の81年には触れなかった。
今年は夏に公明党が重視する東京都議選があり、与党内では、衆院解散は秋以降になるとの見方が広がっている。首相が過去の「酉年解散」にあえて言及したのは、年内解散を示唆して選挙準備が十分でない自民党の若手議員の引き締めを図るとともに、年初に解散権を誇示し、求心力を高める狙いもあるものとみられる。
一方、経済政策「アベノミクス」が失速しているとの指摘があるなか、首相はあえて、金融政策、財政政策、成長戦略の三本の矢を「撃ち続けていく」と強調した。衆院解散の判断においては、経済の行方も鍵を握るとみられている。
経済政策の大規模な変更を行わない考えを強調したのは「ぶれない」姿勢を示すことで政治的な指導力を強調する狙いがあったものとみられるが、政策の幅を自ら狭めることになる可能性もある。
政治家や官僚は額面通りの見解を述べない。例えば、「前向きに検討する」という言葉は、「検討するけど、実行しない」という意味だ。だから、安倍総理やその周辺にいる議員の発言はこれから注視すべきだろう。
私の読みでは、今年秋に解散、総選挙になると思う。安倍総理は、自民党の総裁として、任期が広がったので、長期政権を目指すつもりだと思う。総裁選では石破前地方創成相、岸田外務相の「ポスト安倍」に向けた動きが活発になっている。