火災発生直後から市は防災無線で注意を呼びかけ、商店街は騒然とした雰囲気に。見る間にあちこちで黒い煙が噴き上がり、火の粉が舞った。

 

近所に住む近喰(こんじき)キヌ子さん(73)が防災無線で火災に気付いて外に出た。子供のころから通っていた小間物屋や、歌手の美空ひばりさんが泊まったと言われる旅館などが焼け落ちていくのを目の当たりにし「思い出の店がなくなってしまった」と声を震わせた。

 

付近には老舗も多い。江戸時代に創業した日本料理店「鶴来家(つるぎや)」も延焼に巻き込まれた。近くに住む男性(80)は「市内で一番、歴史ある料亭。(同市出身の詩人)相馬御風(そうまぎょふう)の書などがあったのではないか」と涙声だった。相馬御風は明治生まれの詩人で、早稲田大学など多数の校歌を作ったことで知られる。

 

避難所となった市民会館には約65人が身を寄せた。同市本町のパート従業員、中村みどりさん(48)はラーメン店付近から煙が上がるのを見た。走って逃げる途中、火の手が広がり、「ボン!」と大きな爆発音も聞いた。「自宅がどうなっているか分からない。不安でいっぱい」と肩を落とした。専門学校生の女性(19)は「煙と火の粉で目と喉が痛かった。逃げるのに必死だった」と恐怖を語った。