安倍政権がまとめた「成長戦略改訂版の素案」は、企業の収益力強化を主要な課題と位置付けた。日本経団連など経済界の要望の強い法人減税や、株式の運用比率を増やす年金積立金の運用改革といった株式運用に強く訴える政策が目玉になった。
しかし、これは結果として、労働者を効率よく働かせて収益を上げることに重点が置かれた半面、働く側の抱える構造的な問題は置き去りにされている。素案は日本企業の生産性が欧米企業に比べて低いことを挙げている。
生産性向上に向け、労働時間ではなく仕事の成果を評価して賃金を払う新たな制度が示された。残業代ゼロの長時間労働が横行する(特に「ブラック企業」)との批判が強く、「少なくとも年収1000万以上」との但し書きがついた。
ところが、安倍総理は衆院の委員会で「経済状況が変化する中で、その金額がどうこうということはある」と語り、将来の対象拡大に含みを残した。つまり経営者が都合よく労働力、労働時間をコントロールできる、という構造的な問題を含んでいる。
若者を中心に深刻な「経済格差」が生じていることは、小ブログで何回となく触れてきた。若い人を中心に職業訓練も必要だし、人材投資を進め、生産性向上に踏み込んでいくべきだろう。
成長戦略は労働者の質の底上げという課題には正面から目を向けていない。少なくても目先の株式市場に素案が振り回されるようなことをしないでいただきたい。