作家・劇作家であった井上ひさしさんを二度、インタビューしたことがある。
以下は、私の著書『東北方言ものがたり』に載っているが、
是非紹介したい。
【直木賞作家・井上ひさしさん(故人)】
山形県川西町出身。
いきなりだが、「練習問題」。
イ、「木々」と「釘」は吉里吉里語でどう発音しますか。
ロ、「静御前」をどう発音しますか。
ハ、「靴」と「口」はどう発音しますか。
解答
イ、 クグ
ロ、 スズガゴゼン
ハ、 クゥズィ
一九八一年、ブームを巻き起こした井上さんのベストセラー『吉里吉里(ルビ・きりきり)人』の一節。この作品は岩手県南部にある直径六キロの広さの村が日本国から独立する奇想天外なストーリーだが、会話が東北弁を基にした「吉里吉里語」で書かれたこともあって反響を呼んだ。
「こどあらだまっで紹介すっことはねーがもすんないな」という具合。冒頭の練習問題は、作中の吉里吉里語を紹介する小冊子の内容だ。
「原稿八十枚なら普段は最低でも一週間以上かかるのに、『吉里吉里人』は、わずか三週間で仕上げることができました。楽しくて寝ずに書いたものです。東京にはない言葉、方言でなくては表現できないことがいくらでもあるんです」