女優の森光子さんが初主演の舞台を踏んだのは41歳。
大女優にしては、あまりに遅咲きだった。
泣かず飛ばずの悔しい青年時代に負けなかったことが、
人生の大輪を咲かせた原動力になったことを思うと、
「艱難汝を玉にす」と、
あらためて教えられる。
「あいつより うまいはずだが なせ売れぬ」。
森さんは下積み時代に詠んだ句という。
感動した。
不屈、自身の可能性を信じる強さこそ、
森さんの人生を支えていた。
「鳴かず飛ばず」は、
元来、飛躍の時をじっと待つという意味である。
中国の故事に由来する。
3年間飛ばず鳴かないでいる鳥は、
ひとたび飛ばず天まで上がり、ひとたび飛ぶと天まで上がり、
ひとたび鳴けば人を驚かずと言う。
その「時」が来ることを信じ、人に倍するような努力を持続できるか。
途中でやめてしまうか。勝負は紙一重だ。
森さんに、合掌。