ある地域猫さんのお話
すべての人に人生があるように、どんな猫にも猫生があります。
今回は先週紹介させていただきましたある1匹の地域猫さんのお話の後編です。
このお話が、過酷な環境で懸命に生きる野良猫や地域猫への理解を広げる一助となれば幸いです。
前編はこちらから
後編
それからは、適切な水分量を摂取させる事に注力する日々でした。
自力でどれだけ水を飲めているか。点滴はどのくらいの時間で体に吸収されているか。
むくんではいないか。排尿できているか。下痢はしていないか。鼻がつまって苦しくはないか...。
実は私は、6年前に旅立った愛犬クレアを過剰な点滴でおぼれさせた事があり、枯れていく体に水分を与える事に対して大きなトラウマがあるのです。
でも、腎不全にはやはり水分が必須。
会の仲間にも相談に乗ってもらいながら慎重に水分を調整していきますが、しかしその後もちょびの食欲が戻る事はなく、水以外何も口にしない日々が過ぎていきました。
それでも初めは小さくうずくまり失禁していたちょびが、体をゆったり伸ばして横たわったり、よろよろと自力でトイレに行ったりする姿が見られるようになってきたある日、外で日向ぼっこをさせたら喜ぶだろうかと思いつき、屋上に連れて行きました。
ちょびは、やわらかな風と日差しの下で久しぶりの芝生の上に横たわると、パサッ、パサッとしっぽを振って嬉しそうに目を細めました。
満ち足りた時間がゆっくりと流れ、私はこのまま時間が止まればいいのにとはこういう事を言うのだと、この時初めて知りました。
翌朝、熱いお湯にひたして固くしぼったタオルで、全身を丁寧に拭いてやりました。
口腔内の環境も酷くなっていたちょびは、満足なグルーミングができずにいたのです。
するとまた、パサッ、パサッと気持ちよさそうにしっぽを振ってからやおら起き上がり、よろよろとケージから出て来くると私の足元にそっとうずくまったのです。
「なでて」
ちょびが、心を許してくれた瞬間でした。
それからは、まるで小さな子供の様に私に甘え始めました。
これまでずっと過酷な外の世界で生きて来たちょびは、暑さを凌ぎ、寒さに耐え、外敵から逃れ、ついにこれ以上闘えなくなって初めて、人の手の温かさを知ったのです。
保護をしてから数週間、水だけで生きて来たちょびは、まもなく立つ事も、自力で体勢を変える事も出来なくなりました。
旅立ちの2日前にはとうとう尿毒症の症状が現れ強い吐き気に襲われましたが、急いで病院に吐き気止めの注射を貰いに行くと、幸いにもよく効いて落ち着いて眠れるようになりました。
旅立ちの前日。
不安そうに何度も何度も私を呼びます。
大丈夫だよ、ここにいるよとなでてやると安心して眠り、また目覚めては私の気配を探して鳴くのです。
その日は一日中側にいましたが、夜の9時頃には昏睡状態になり、深く眠り始めました。
息が少し早くなって来ても、まだ若く他の臓器がしっかりしているためかなかなか逝けずに困っているように見えた私は、クレアの遺影に手を合わせ、どうかこの子を連れて行ってあげてとお願いしてから、眠りにつきました。
深夜、体位交換の為様子を見に行くと、まだ息をしていました。その2時間後、様子を見に行くと、まだ頑張っていました。
体の向きを変え、全身を撫でてやると、ちょびは嬉しそうにひとつ前足を踏んで、ホッと溜息をつきました。
きっと暗い中たった一人で、私がもう一度来てくれるのを待っていたのでしょう。そしてまもなく、呼びかけに反応しなくなりました。
明け方見に行くと、ちょびはもう息をしていませんでした。
あぁ、ちょび。行っちゃったんだね。今まで本当に大変だったね、お疲れ様…。
気の小さいちょびにとって、外の世界は恐怖でいっぱいだったと思います。
今度は必ず温かい家の中に産まれてくるんだよ、そう言い聞かせてしっかりと抱きしめました。
それから体を丁寧に洗い、一緒に遊んだじゃらしを持たせて、空へと送り出しました。
奇しくもその日はクレアの命日。
きっと、本当に迎えに来てくれたのだと思います。
ちょびの家猫としてのしあわせな日々は、屋上で嬉しそうにしっぽを振ってから旅立ちまでの、たったの10日間でした。
こうしてちょびは、4歳半の短い生涯を閉じました。
初めから人の家に産まれていれば、もっと長く生きられたかもしれません。初めから人の手に触れていれば、きっと初めから人が大好きだったでしょう。
あの時、リターンしなければよかった。子供をとりあげたくなかった。家猫としてもっと幸せにしてあげたかった。最期の瞬間側にいてあげたかった。
後悔の思いは、尽きません。
飼い猫の寿命が平均16歳なのに対し、野良猫の寿命は3~5年と言われています。
外で暮らす猫は、寒さ、暑さ、雨などの天候ストレスに常にさらされ、今日の食事にありつけるかどうかもわからず、安心して眠れるベッドもありません。
怪我をしても病気になっても誰も助けてはくれず、いずれ苦しみの中ひっそりと命を終えていきます。
また、道路を渡る際に事故にあったり、心無い人間に連れ去られ、虐待されて命を落とすリスクもあるのです。
猫は本来、外で暮らすべき野生動物ではありません。人に守られ、愛されて生きるべき愛玩動物です。
これ以上かわいそうなちょびが増えないよう、どうか皆さま
未手術の野良猫を見かけたら、行政に知らせてください。
家の軒下で、暑さを凌ぐ、寒さに耐える、雨を避ける猫を、追い払わないであげてください。
さくら耳をした猫は、地域猫として地域の皆さんに見守られ、一代限りの命を全うする健気な猫です。
見かけたらどうか、たっぷりのお水とご飯と暖かい寝床を与えてあげてください。
もしも人馴れしたら、家に入れてあげてください。
家猫は外に出さず、家の中で安全に飼ってあげてください。
どうか、全ての猫に、平等なしあわせを。野良猫やさくら猫のいない世界へ。
(ありがとう、またね)
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