夜の孤児院
あちこちですすり泣く声が聞こえ、一定の年齢の子供は親を求めるような声を荒げ、夢の中で笑う子供は誰一人いなかった。
布団の中でただ両膝を抱え、眠る事無く夜空を眺める黒目黒髪の子供がいた。3歳程で男女の境目が無いような顔つきだ。
「……?」
黒髪の子はなにか聞こえたのかそちらへ顔を向ける。
だが何も見えない、子供は外へ出てみる事にした。
夜風が冷たく、布団で温かくなっていた寝間着の服はだんだんと冷えて行った。
音の正体は直ぐに分かった、同い年ほどの子供がナニカと戦っていた。
それはソフトボール程の大きさで、カエルの形をした影が数体だ。
「何だあれ……? それにあの子は……楓?」
黒髪の子は戦う子を楓と呼んだ。
その時、大量のカエルが楓と言う子供に被さる。
「楓!!」
黒髪の子は近くに落ちていた木の棒を拾ってカエル達を払う。
「っ!? おま、聖愛《せいあ》じゃねぇか……!! 何で来たんだよ」
「なんか音がしたから……何なのアレ?」
「影の精霊って奴だ……。 手ぇ出すんじゃねぇぞ?」
だがそんな時、影がカエルらしく舌を伸ばして楓に向かって襲い掛かる。
随分と長い……が、それでも聖愛と呼ばれた黒髪の子が木の棒で叩く。
「……助けたらダメ?」
「いや、助かるけど……でも手ぇ出すな」
そう言い、立ち上がろうとした時に足に激痛が走り「痛っ」と声を漏らす。
「……俺も戦うよ」
「神子じゃないお前がか?」
「神子?」
聖愛は首を傾げた。
「こういう裏世界の生物と戦う一族だ。 この町は特に神子の一族がいくつあって俺はその一人だった」
「両親はそれで死んじゃったの?」
「いや、俺……捨て子だけど、捨てた親とはよく会ってんだよ」
「一緒に暮らさないの?」
「俺が拒否してるからな」
「ふぅん……」
その時、一回り大きなカエルが背を向ける聖愛に向かって襲い掛かる……!!
「聖愛!!」
楓が叫んだ時、聖愛はくるりと振り返りカエルを貫いた。
影のカエルはまるで水を入れた風船が割れるようにパシャンと弾けて消えた。
「ねぇ、楓……俺、これからも戦うよ。 覚悟はあるよ?」
「みたいだな……俺も記憶を消す方法なんて知らないし……聖愛、『采《ダイス》政府』へ来るか?」
「だいす?」
「ダイス政府、遥か昔からフォルスと戦う為に次元を支配した神達が結集し創り出した政府。
魔法、魔術、魔導、超能力、霊能力……色んな力と触れ合えるんだ。 なんか、お前とはやっていけそうだ」
そう言って楓は聖愛に手を差し出す。 聖愛はそれを頷いて握った。