№000:ともだちになろうよ | マグマ・フレイムのブログ

マグマ・フレイムのブログ

ブログの説明を入力します。

 ――遠い遠いずっと遠い古《イニシエ》――

 遥か遥か遥かな永《トコシエ》。

 数々の世界、数多の地に八百万《ヤオヨロズ》の神。

 神々は争った、己こそが神の王だと。

 凍てつくような深い悲しみ。 煮えたぎるように熱い墳怒《ふんぬ》。 呪わしい程の嫉み恨み憎しみ。

 神に芽生えし負の感情に惹かれてか、異次元より負《フ》の神は現れた。

 何処《いずこ》の異次元より現《あらわ》る負《フ》の神は圧倒的な負のみで生まれた塊。

 そこに中身は無い、世界中に充満する負の感情、暴力的な感情が留まりて、具現化をした怨念のだ。

 奴と遭遇した神は奴がただそこに存在するだけで心を粉々に砕き捩伏せられ、崩壊した。

 奴は喰らう、神も世界もあらゆる命も。 この世に存在する全てを喰らい、己の分身を作り出した。

 分身はまるでウィルスの如く数多の世界に散らばりて、全てを喰らい、仲間を増やし、そして進化をしていった。

 感情を餌とする奴らはもう、誰にも止められなくなった。


 流れ、流れし、流れる時を旅する一人の神が居た。

 ただ気まぐれに道無き道を、己のままに進んでく。

 誰に支配される事も無く、誰を支配することもない、旅に生きてた一人の神は負の神を破壊した。 日食如き両目には、一つの想いが宿ってた。

 負の神は負が留まる限り、何度たりとも蘇る。

 だが旅の神が切り開いた希望は、数多の神を目覚めさす。 ほんの少しずつだが世界の一部を取り返す。
 希望の光は絆となりて、数多の世界の神々は旅の神を王とする。 後に『旅御神《たびのみかみ》』と旅の神は名を馳せた。



 ――自然溢れる丘陵《きゅうりょう》。


 中肉長身の男性が背中に幼い少年を乗せてゆるやかな坂道を登り、後から小学生低学年程の少女が早歩きでついて来ている。

 なだらかな小山の続く地形……丘陵《きゅうりょう》に創られた少々急な坂道は3段の折り返しを経て頂上の住宅団地へ繋がる。 3人はその団地へ向かっているのだろう。

 心地良い風が幼年のサラサラとした細く柔らかな髪をそよいだ。 風に流された木葉は、ぺちり……そんな感じで彼の額にぶつかった。

 「~?」
 天を仰いだまま目を醒ました幼年。 彼が瞳を開いた瞬間に見たものは木漏れ日がエメラルドのように瞬いている光景だった。

 「――ふゎぁ……」
 欠伸と感動が混じった声が零れた。 綺麗……そう幼い彼は思い、届く筈も無い風に揺れる木葉に手を伸ばそうとする。

 「起きたか、シン。 そうだ、左を見てみろ」
 男性は背中の幼年が起きた事に気付きそういった。

 その言葉にシンと呼ばれた幼年が無言で従い、左を見れば見渡す限りの街があった……。
 とても高い丘陵《きゅうりょう》から見た景色はまるでミニチュアの小さく、眠気が完全に醒める絶景が広がっていた。

 「リュウ、此処が私達が住む新しい街だ」
 少女はシンを違う呼び方して街並みを見渡した。 先程まで無表情だった彼女の顔は少し微笑んだ。

 絶景を見つめる3人のもとに向かって誰かが歩いて来た。
 「やっと来たようだね、覇神《ハルカ》」
 微笑みを浮かべてその人は男性に言った。 それは男性にも女性にも見える中性的な顔をした人物で、男女どちらの性別であっても美人の分類だ。

 「勠士《リクト》……」
 覇神《ハルカ》と呼ばれた男性は振り返り、呟くように言う。

 「直に会うのは久しぶりだね。 この世界に引っ越してくるって連絡を貰った時は驚いたよ」
 「子供の為だからな。 それよりこの丘陵《きゅうりょう》の団地、本当に無料《タダ》でどこでも使っても良いのか?」
 「ああ、覇神《ハルカ》達なら大歓迎だよ。 君が任務の報酬をあまい受け取らないからその分が僕に来ていたんだ、だから殆ど君の物みたいなもんだよ。
 それに僕はこの丘陵《きゅうりょう》に建てたアパートやマンションの不動産をしていてね? 子供達の友達もいずれは増えるさ」
 嬉しそうに勠士《リクト》は語る。

 「しかし勠士《リクト》、お前の性別はどっちだ?」
 と少女が横槍を入れた。

 「真神《みかん》さん……私は男だ!! お・と・こ!! 貴女は相変わらず“人間で言う”そろそろ半世紀にも関わらず子供ですね」
 美女改め勠士《リクト》は「ッフ」っと不敵に笑みを浮かべた。 どうやら少女……真神《みかん》は子供に見えるが、もうそろそろ50代に入るらしい。

 「む……この小さな姿は力を制限しているだけだとわかっているだろ!!」
 「小さいんじゃなくて幼いんだろ!! 行き遅れてた50歳児が!!」
 勠士《リクト》と真神《みかん》は互いに睨み合い、バチバチと火花を散らしていた。

 「ふぅん……行き遅れてた50歳児……あなた、それは私の事?」
 茶髪の少女が笑みを浮かべた表情(目は怒ってる)で左腕が放電していた。 髪型は編み込みヘアアレンジ、浴衣がよく似合いそうである。

 「り……和心《りんご》……ち、違うんだコレは……」
 「言い訳無用!!」
 和心《りんご》と呼ばれた少女は放電する左腕で勠士《リクト》の腹部にエルボーを決めた。

 「あばばばばばぁ!!?」
 痺れと腹部のダメージで上げる断末魔の叫びは気の抜ける物だ。 が、此処は坂道、よろめく彼が倒れると転がりだした。
 そして最後、狐の石像が飾られた祭壇に思い切り衝突する。 その衝撃で狐の石像が咥え込んでいた石の稲荷寿司《いなりずし》が外れ、勠士《リクト》の脳天に直撃した。
 つくづくロクなことが無い男だ。

 「ゴメンね? 旦那があんなで」
 お手上げのポーズで和心《りんご》は言う。 どうやら彼女も見た目とは違い、とっくに成人しているらしい。

 「――と言うか俺も勠士《リクト》も人間で言う60代後半だが……?」
 覇神《ハルカ》は痙攣《けいれん》する勠士《リクト》に俺らも人の事は言えないが?と言った呟きは誰にも聞こえなかった。

 「それより真神《みかん》……子供、生まれたんだね」
 和心《りんご》は覇神《ハルカ》の背にいるシンを見て言った。

 「ああ、この子は龍神《りゅうしん》。 ――本来、子供が産めない私の……唯一の子さ」
 悲しそうにも嬉しそうにも見える表情で真神《みかん》は言った。

 和心《りんご》は嬉しそうでも悲しそうにも感じる彼女《みかん》の顔から視線を外し、幼いシンに目線を合わせて話し掛ける。

 「龍神《りゅうしん》君か……長いからリュウ君かな?」
 「りんごさん、こにゃにゃちわー」
 「元気良いけど何か違うよ……!?」
 「じゃあ“おはこんにちばんは~”?」
 シンは頭に『?』を浮かべ、首を傾げた。

 「真神《みかん》ちゃん、覇神《ハルカ》さん、リュウくんに何を教えたの!?」
 「「――何も聞かないでくれ……」」
 何を教えてんだよ!! と言う和心《りんご》の心からのツッコミに、覇神《ハルカ》と真神《みかん》は全てを諦めた目をして地面左下に視線を逸らした。

 「え、えっと何かゴメンね……?
 それにしても真神《みかん》ちゃんも覇神《ハルカ》さんも二人とも朴念仁《ぼくねんじん》なのに性格は似無くて良かったね?」
 「どういう意味だそれは……」
 真神《みかん》が青筋を浮かべて静かに怒った、だがじゃれあいなので本気で怒っている様子はない。

 「あはは……あっ、そうだ真神《みかん》、覇神《ハルカ》さん。 うちの子を見てない? えっと真っ白な髪をしてるんだけど……」
 「いや、見てない」「同じくだ」
 覇神《ハルカ》、そして真神《みかん》が答えた。

 「そう……あの子、見た目でよく虐められやすいから」
 「しかし白髪って白子症《アルビノ》なのか?」
 「そうなの。 その上、日月《ひづき》の瞳……最近の勠士《リクト》は魔法で隠してるけど、大体の事に敏感なうちの子は着けられないから目でも虐められるの……」
 「そう簡単には周囲が理解するはずもない……か……」
 悲しい話だ……と真神《みかん》は眉間にシワを寄せた。

 「でも真神《みかん》が理解してくれるから、私は嬉しいよ?」
 「当たり前だ、それに覇神《ハルカ》も、龍神《りゅうしん》も……あれ? 龍神《りゅうしん》どこ行った? リュー?」
 「え? あれ? リュー君……いつの間に……」
 周囲を見渡しても何処にもいない、どうやらとっくにどこかへ行ってしまったようだ。



 ――自然溢れる公園

 地面は色とりどりの綺麗な煉瓦《レンガ》で創られ、冷たく透き通った水が流れる川の上流は白いコンクリートに星や三日月、卵など様々な形をした薄色のタイルが埋め込まれている。
 滑り台や鉄棒、ブランコや雲梯《うんてい》と合体したジャングルジムなどがある。 様々な遊具の他にも機関車や大型船、あちらこちらに記念碑《モニュメント》など色々設置されていた。
 だがブランコやモニュメントには土を拭いた雑巾……いや、雑巾の見た目、大きさをしたナメクジが張り付いている。
 その生物が居なくなった場所は綺麗サッパリと汚れが落ち、風で揺れるブランコなどは錆び落としの他、油を射したように動きが良くなっている。
 どうやら沢山いるナメクジ達は管理人や整備士のような存在らしい。

 それはとても広く、とても美しい公園だった。

 幼年シンは川の下流、泥や土の地面に創られた木製の橋を渡り、公園の風景を楽しんでいた。
 ふと誰かが騒いでいる事に気付き、どうしたんだろとそこに向かって行った。

 シンが最初に見たのは6人の少年により公園の壁に追い詰められ、涙を浮かべる同い年ほどの幼女だった。


 「ぁぅぅ……」
 幼い少女は怯え、後退りをしていた。 彼女の服は白い綺麗なワンピースだが泥だらけで台なしだ。
 彼女の目の前には彼女よりも少し年上程の少年達6人が、泥団子を持って嫌な笑みを浮かべていた。

 「ジジイみたいなかみしやがって、キモチワルイんだよ!!」
 少年達は泥団子を思い切り投げ付ける。 

 たかが泥団子、幼い少年達が握った程度では大した威力も投げる力も無い。 だが怖い物が無い無垢な幼女にとって残酷なる恐怖でしかないのだ。

 幼女が目を瞑って直ぐに泥がぶつかる音……だが少女は汚れず、目の前に先ほどまでいなかった幼年……シンが代わりに泥だらけになっていた。

 「むぅ……」
 シンは泥を嫌そうに払うが、汚れが広がるだけだった。

 「なんだおまえ、じゃますんな」
 少年のその言葉にシンは「や」とだけ答える。

 「くらえ!!」
 先ほどとは別の少年がシンの腕を掴み、自分の背に乗せると背負い投げの真似事をした。 TVや何処かで知ったのか、見様見真似であろう。

 「ぅぁ?」
 シンは突然片腕を引っ張られて身体を持ち上げられた事に少し驚くも、すぐさま自分を持ち上げた少年の横っ腹を蹴っ飛ばして投げられる事を回避した。
 少年が「うわぁ!! いてっ!」と言っているうちにシンは幼女の手を引き、少年達から逃げ出した。

 「あっ、にげるな!!」
 そんな言葉を聞くはずもなくシンと幼女は逃げていく。

 6人対2人1組の一方的な“鬼ごっこ”が始まった。
 揺れるブランコをすり抜けて、雲梯の上を軽々と走り、鉄棒を潜り抜け、コーヒーカップの周囲でにらみ合い、滑り台を駆け降りる。

 「まてー!!」
 「そうだそうだ!!」
 そういって追いかける少年達。

 だが……。

 「あ、おまえらまて!! そこには俺たちの__」
 少年の一人が叫ぶが、突然地面が砕けて「「「うわぁぁあああ!?」」」と叫び声を上げながら少年達は地面の下へ落ちていった。
 そしてドボンと言う水の音と共に泥水が噴き出た。 どうやら水が入っていたようだ。

 「――おとしあながあるっていおうとしたのに……」
 言うのが遅すぎた。

 泥だらけになった少年達、免れた少年問わず「おぼえてろ!!」の言葉と共に彼らは帰って行った。

 「つかれたぁ……」
 「はふぅ……」
 シンはドサッと足を投げ出して座り、幼女は膝を内股にしながらトスンと座った。

 「ぁ、そうだ。 オレ『りゅうしん』」
 先程まで少年達に対しては全然喋らなかったシンは嬉しそうに話し出した。

 「りゅー?」
 「うん、それでいいよ。 おまえのなまえは?」
 「しをん……だよ。「シオン?」うん。 りゅー、たすけてくれてありがと」
 しをん……シオンの言葉にシンは「どういたしまして」と答え、

 「ねぇシオン、ともだちになろうよ」
 シンは笑みを浮かべて手を差し出した。