今日は教育について思うことを……。

わたしの出会った子どもたち

私が小学校の教員になったときの指導教官は、灰谷健次郎(はいたにけんじろう)先生でした。
正しくは、灰谷先生の本でした。
灰谷健次郎さんの本に初めて出会ったのは、中学生のとき。
どこで知ったのか忘れましたが、『太陽の子』を読んで感動し、一気に書き上げた感想文は、市の優秀賞をいただきました。今まで義務で何を書いているのかわからない感想文だったのが、初めて心から感想を書きたい!と思ったものです。

『兎の眼』『ろくべえまってろよ』『せんせいけらいになれ』『子どもの隣り』
そしてこの『わたしの出会った子どもたち』

どの作品にも貧しく厳しい生活を送りながらたくましく生き抜く子どもたちが描かれています。
その対比として理不尽な社会や無能な大人たちが描かれていて、教員の立場で読むと毎回、「いったいそんなことで教師といえるのか!?大人としての責任を自覚しなさい!」と叱られているような気になったものです。
あまりにも辛くて読めないときがあるほど、灰谷教官は厳しかったのです。(笑)

とくにこの『わたしの出会った子どもたち』は、小説ではなくエッセイ、というかドキュメンタリーです。
ここに出てくる子どもたちは、ほかのどの作品よりも強烈な個性をもっています。
子どもだけでなく、社会の底辺で生きる大人も描かれていますが、どうしてこんなに辛い人生があるんだろうかと思えるほど、不遇の人生を送っている人たちです。
それでもユーモアをもって明るく生きる姿に、日常に小さな不満ばかりもらしている自分がばからしく思えてきます。

教育や福祉にたずさわる人には、ぜひ読んでいただきたい1冊です。


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学生時代に絵画教室でアルバイトをしたことがあります。
それほど長い期間ではなかったのですが、とても勉強になりました。

P絵画教室は、美術を教えるというよりも、子どもたちの居場所、家庭的学童という感じでした。
運営しているS先生は、わりとアバウトな方で、教室といっても先生の自宅の居間に子どもたちがわらわらと集まって好きなことをしているという感じでした。
部屋は雑然としていて、日用品が散らかり放題。
真ん中にこたつがあって、そこに子どもたちが適当に足を突っ込んで、適当に絵を描いたり、おやつを食べたり、本を読んだり、宿題をしたりしている。
「今日はどんぐりのクッキーを焼くよ~」と先生が言えば、子どもたちが集まってきてわいわいやりながら作るといった感じでした。
(余談ですが、そのときはじめてどんぐりがクッキーになることを知りました!)
S先生は、「別に何の教室でも構わないのよ。とにかく子どもたちが楽しめることをすればいいの」と。
通わせている親御さんもきっと、絵をしっかり教えてほしくてお子さんを預けているわけではない。家庭以外の子どもたちの居場所として預けているんだろうなと思いました。

私はP絵画教室に通う子どもたちが、灰谷先生の本に出てくる子どもたちみたいだなと思っていました。自由にのびのびと、好きなことを好きなだけやる。
P絵画教室にはダウン症の女の子が通っていて、S先生は障がいのことをよく知らないので、障がい児教育を専攻していた学生にサポートしてもらいたいという意図で、私と友人を雇ったのだそうですが、そのダウン症の女の子も自然にみんなの中に溶け込んでいて、私たちは何も出る幕はありませんでした。

P絵画教室は、放課後のひとときにできあがる大家族という感じでした。

学校や教師は、余計なことをしなくていい。
答えは全部子どもたちの中にある。
それを見ることもできないで、教師などと名乗るな!


灰谷先生の本からはいつも、そんなお叱りを受けていたように思います。
そして私にお手本を見せてくれたのが、P絵画教室だったのです。