医師をしている友人から送られてきたものです。凄く長いので、分けます。
私はそもそも発達障害を知らずに、うつ病や統合失調症を診断出来ていることに疑問を感じる。
患者の数を考えれば、外来で遭遇していないことは絶対に無いし、精神疾患を診断するのに性格障害の有無を知ることは必須である。
多くの発達障害の患者が、難治性うつ病や躁鬱病、統合失調症、もしくは人格障害と誤診され、効果の無い高価な薬剤を延々と処方されているのが今の現実なのだ。
是非一人でも多くの医療福祉関係者に興味を持ち、勉強してもらいたいものである。
病気ではなく、性格の問題である為、治療法としては、対処的な薬物療法と自分の性格を理解し、環境調整を行なうしかない。
それゆえその患者の治療や予後のことまで考えると、成人においては、単に「発達障害」や「広汎性発達障害」「自閉症スペクトル」などの大まかな診断で十分であり、細かい発達障害の分類は不要であると私は考えている。
今の生活の中で、どんなことに不都合を感じるのかというのは患者が社会生活を送る中で、自ら分析していくものであり、その症状は性格の問題からくるものとと認識出来るかどうかが重要である。
さらに言えば、発達障害であるかどうかよりも、病気のように安静や薬物だけでは治らないと自覚することが大事なのである。
職種や環境によってもどのような支障が出るかは人それぞれであり、無理に全ての問題と向き合う必要はないのだ。
ちなみにこの中で成人期まで発見されにくいのは、圧倒的にASP/ADHD/ADDである。
家族全員に発達障害や知的障害を認めるとか、よほど閉鎖的な環境、例えば小学生の頃からずっと不登校やネグレクトを受けていない限り、ADやLDは就学中に、ほとんど見つかるはずである。(計算障害のLDは成人になっても解らないことが多い
発達障害の患者が病院に来る場合、圧倒的に多いのは、うつや情緒不安定などの「適応障害」をきたした時である。
多くは人間関係がうまくいかない、感情のコントロールがつかない、物忘れがひどくなったなど訴え、それが原因で不登校や会社に行けないというケースが多い。
基本的には前に述べた病気なのか?性格なのか?(前項本当にうつ病?参照)に準じたうつ病の診察をしていき結果的に「適応障害」の診断に行きつくのだが、その際には患者の態度で以下のことに注意する。
①会話中に圧倒的に瞬目が少ない。表情があまり変わらない。
②服装が年の割りに幼い。もしくは非常にシンプルな服装。
③落ち着き無く、ずっと一方的に早口で喋る。もしくは聞かれたこと以外全く喋らない。
④気にしなくてよい細かいところで、言い直したり、こだわったりする。的外れな質問が多い。
⑤不適切な敬語、時に造語のような言い回しが多い。
⑥診察中にいきなり泣く、怒り出すなど感情のコントロールが出来ない。
⑦時に患者が何を言いたいのか解らなくなる。要点を整理して話すことが出来ない。
⑧しぐさや話し方で何となく違和感を感じる。チック症状を認める。
⑨診察中に携帯電話がかかってきても、普通に座ったまま相手と話し始める。
⑩診察が終わった後に聞き忘れたこと、もしくは言い忘れたことがあると言って急に入ってくる。
上記の症状は発達障害の症状の一部を紹介したものであるが、私の経験だと上記の症状を認めるなら発達障害の可能性が高いと考えている。
しかし年齢と共に社会性は学習しているはずなので、(後天性の性格変化によるもの)一つも当てはまらないからといって否定は出来ない。その辺を考慮しながら少しでも怪しいと感じたら、以下の患者の経過を詳しく聞くこと。
発達障害に限ることではないが、精神障害の診断をするのに一番重要なのは、今までの経過である。
性格の問題を診断する時に重要なのは、その性格特性が幼少時、思春期から持続しているということ、
さらに発達障害の場合、一番大事なのは、幼少時(乳児~8歳くらいまで)の性格がどうだったのか?である。
ここで注意するのは、発達障害の患者(特にASP)何が常識で、何が普通なのか解らないということ。それゆえ本人の言う「子供の頃は普通だった」もあまり当てにはならない。そうなると正確な経過を聞く上で重要なのは親の話である。
まずは発達障害になりうる後天的な要素がないか聞くことが重要である。
出産時の状況、特に低体重出生児、出生時仮死状態、てんかん発作の有無、脳炎、髄膜炎、頭部外傷の既往などは発達障害の原因となりうるので必ず聞くこと、また被虐待児も発達障害と酷似した症状になるので注意が必要である。
幼少時の一般的な特徴としては、発育が遅い、もしくは早い、すぐに癇癪を起こす、変にこだわりが強い、自分から声をかけて友達を作れない、一人で遊ぶことが多い、落ち着きがなくジッとしていられない、部屋の片づけが出来ない、忘れ物が多い、チック症状があるなどと言われているが、簡単にまとめれば、
・幼稚園や小学校低学年の頃、周囲と比べると少し変わった(違う)子だったか?
(扱いづらい、手がかかる、もしくは全く手がかからない子供だったなど)
・その時のお子さんと、今のお子さんの性格はそんなに変化していないか?
この二つの質問の答えが「イエス」だった場合は、なんらかの性格障害の可能性があると言って良い。
もし「ノー」だった場合まず考えるのは、発達障害は遺伝するということ、ゆえに親も発達障害ということは十分にありうる。
発達障害の遺伝率は70%と言われているため、実際はどちらかの親が持っている可能性の方が高いのだ。
親もしくは子供が発達障害であれば、その人も発達障害という可能性は高くなるのであるが、そうなると親の話も当てにならないということにもなる。
一緒に来ている親の態度にも注意し、発達障害の可能性があると考えたら、もう一人の親の話を聞くことも大事である。
家族歴は非常に診断に有用である。必ず両親や子供、兄弟、祖父母の性格傾向と聞き、本人と似ているかを聞くこと。私の経験では後天的な要素が無い場合、2親等くらいまで調べると、ほぼ100%に、発達障害と思われる(変わった性格の)親族が存在している。
最近では自分の子供に発達障害が見つかり、自分も同じ性格傾向に気が付き、受診するというケースが非常に多い。
また、どういう訳か発達障害者同士は親和性が高く、夫婦になっているケースが多数見受けられる。(特に男性のASPと女性のADHD)
昔の性格と今の性格が全く違うという回答が返ってきた時には性格障害の可能性が低い。その場合は何らかの精神疾患、特に「統合失調症」と「強迫性障害」を疑うこと。
発達障害は子供の頃から非常に扱いづらく、親は育児に苦労をすることになる。
それゆえ厳しく接することが多くなり、そのような環境で育った子供は我慢のしすぎから二次的に「アダルトチルドレン」を合併することが多い。
こうなると親に怯えながらも、非常に手のかからない子供に成長し、大学まで問題なく就学するのであ
るが、本質的な性格は変わっていないので、社会に出てから物凄く生き辛さを感じ、人間関係で悩むことになるのだ。
そういう意味で我慢を学習する前の性格特性が発達障害の診断には非常に大事なのである。
私の経験だと社会適応が良かった発達障害の患者さんは、ほぼ全例にこの「アダルトチルドレン(共依存)」を合併している。
このことが日本での発達障害の診断を非常に難しくしていると私は考えている。合併している場合は、発達障害の治療だけでなく、アダルトチルドレンの治療も開始すべきである。
親の話が聞けない、もしくは当てにならない場合は本人の話から推測していくしかない。
最近発達障害の診断チェックなるものが出ているが、(自閉症指数AQなど)先にも書いたように発達障害の患者は何が普通で何が異常かも解らず、自分の物差しでしか見れず、自分を客観的に見る事が苦手である。さらに「自分は正常でありたい」と思う心理は誰にでも存在し、客観的には当てはまっていても、本人は認めない患者は多い。
ゆえにチェックリストは、あくまで診断の参考として使用すべきであり、それが正常値を示しても、実際は正しく評価できていないことも多いのだ。(PARSなど親がチェックリストに答える場合は別。但し親が発達障害でないことが前提。)
実際私のところに来た患者でも、経過と母親の話からは何らかの発達障害があるのは明白にも関わらず、市で行なった検査では発達障害ではないと言われ、福祉の利用や手帳申請、職業訓練所を利用するのに苦労したケースもあった。特に成人の場合は、診断はチェックでなく総合的な判断で医師が下すべきである。
ちなみに私個人としては、IQ検査(WAIS-Ⅲ)が発達障害の診断には、ある程度有効であると考えている。IQ検査でIQ値自体は正常値を示すことが多いが、言語性IQと動作性IQ、もしくは得意項目と不得意項目で著しく差が出る場合は発達障害の可能性が高い。(例えば、言語の理解、知覚統合、作動記憶、処理速度などに有意差がある。図形合わせは得意なのに、計算が全くダメとか、言語の理解は得意なのに、書き取りが全く出来ないとか、項目ごとのグラフを見ると起伏の激しいものになるので解りやすい)
又、検査中、課題に取り組む時の態度も重要で、そこから診断がつくケースも少なくない。
注意)知能検査も診断に絶対的なものではなく、検査結果で異常が出ないからと言って発達障害を否定出来る訳ではない。今までの経過や家族歴などを踏まえ、総合的に判断すること。