【NHKニュース7能登半島地震〜大切な人の生きた証〜】
当たり前にあったことが大震災により当たり前でなくなる辛さ。遅れながら気づきました。''一日生涯'' この限りある命、大切に毎日を過ごしたいです。先日、1.5避難所にうかがい、書の仲間である被災者から逆に勇気や元気をもらっている自分がふといました。NHK報道2.10.2024
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珠洲市やその周辺で40年にわたって教員として働き珠洲市の中学校では校長も務めた向井宏さん(97)は1月1日市内の自宅が津波で浸水し、逃げることができずに亡くなりました。息子の星十さん(63)は「優しい父でした。助けられなくてごめんなさい」と声を詰まらせながら語りました。

珠洲市宝立町の鵜飼地区の向井宏さんは(97)は、自宅で妻と過ごしていたときに津波に見舞われました。
宏さんの息子の、星十さんは当時、金沢市内の自宅にいましたが、両親と電話がつながらなかったため、2日に6時間かけて車で珠洲市の実家へと向かいました。
到着すると1階部分が津波で浸水していたといい、「家の中に入ると母親が廊下で倒れていて意識があり元気だったので起こして座らせました。父親の方を見ると仏間で横になっていて『寒い、寒い』と言っていて見たら布団もぬれてるし体もぬれてるし」と当時を振り返りました。
星十さんは救急車を呼びましたが、順番待ちで来てもらえず、500メートル離れた避難所に助けを求めに行きましたが被災した人たちが大勢いたため、対応してもらえなかったということです。
星十さんは自分ひとりで宏さんを助けようとしましたが宏さんは足腰が弱く、連れ出すことができませんでした。
宏さんにぬれていない布団をかけて「助けがくるから頑張って」と励まし続けたということです。
翌3日の朝、通りかかった近所の人に手伝ってもらい母親は無事に助けることができましたが、宏さんは亡くなりました。
星十さんは「優しい父でした。私が父と同じ教員になるときには『あまり怒らんようにせい』とアドバイスをくれました。寒かっただろうに助けてあげられなくて本当にごめんなさい」と声を詰まらせながら語りました。
宏さんは書道が趣味で、金沢市に住む書道家、阿部豊寿さん(45)に書を習っていました。
年は50歳以上も離れていましたが、2人は20年以上の親交があったといいます。
珠洲市に通って宏さんに書を教えていた阿部さんは「宏さんの字は生き生きとしていて、本当に元気な人です。宏さんが教え子にあげた作品には『一日生涯』と書いてあり、『あすという日よりもきょう一日が大事だよ』と教えていました。『向井先生、向井先生』とどこに行っても好かれる先生でした。宏さんはじめ、珠洲の人は迎え入れてくれる姿勢があり本当に優しいです。宏さんとの出会いがわたしに珠洲のすばらしさを教えてくれました」と振り返りました。
宏さんから月に何度も、手紙や作品が送られてきたことを思いだし、「いつも手紙や作品が送られてくるのに、地震が起きてからは来ないわけです。『当たり前だったことが当たり前ではない』遅ればせながらその辛さにいま気づいています。宏さんが大好きだった書を一生懸命頑張ることが恩返しになると思っています」と語りました。 

NHKニュースWEBサイトより