チューチラさま 挿絵
こんな可愛くてステキな挿絵を書いていただきました(^O^)
わたしの一生の宝物です。
チューチラさま、お嫁さま♪
本当にありがとうございましたm(__)m
ローズ・ブランシュ物語 あべせつ
うららかな春の日のことです。遠い東の国から一人の娘がローズ・ブランシュ村にやってきました。村のあちらこちらに、その名の由来となった木立ちの白いバラが今を盛りと咲き誇り、淡い香りを漂わせていました。
「なんてすてきな所でしょう。ここに住めたらいいでしょうねえ」
そう思いながら大通りを歩いていると、小さな白亜の建物に《貸店》の札がかかっているのが見えました。通りに面した大きなガラス窓からは、明るい陽射しが店の中いっぱいに降り注いでいます。
「まあ、すてき。ここがいいわ」
娘はそこでパンケーキ屋さんを開きました。
村の人たちはこの異国の若者に興味津々、通りの向こう側や道端の植込みの陰から店の中をのぞきこんで行きます。ところがなぜか、ちっとも入ってきてはくれません。
「こんにちは。良かったらどうぞお入りください。お茶をご馳走しますよ」
娘が声をかけても、恥ずかしがり屋の村のみんなはそそくさと逃げ出してしまう始末です。当然お店は閑古鳥。そんな日が幾日も幾日も続きました。それでも娘は毎日窓をピカピカに磨き上げたり、露台に植えた花の手入れをしたりと楽しそうに働いていました。
ある日のこと。娘が客席に花を飾っているとチリン・チリン・チリン。
入り口のドアベルが鳴りました。振り向くと、そこには一輪の白いバラを胸ポケットに挿した青年が立っていました。
「いらっしゃいませ」
青年は言葉が不自由ならしく、食べる仕草を娘にしました。
「パンケーキですね。お茶もお入れしましょうか」
青年がうなずくと、娘は窓ぎわのこの店一番の特等席に案内しました。
それから腕によりをかけてふかふかのパンケーキを焼き上げると、バラの蜜で作ったシロップと熱い紅茶を添えて青年のテーブルに運びました。青年はパンケーキをひときれ口にしたとたんニコニコと笑顔になり、二枚ともペロリと平らげると満足そうに帰っていきました。
「まあ、うれしい。初めてお客様がいらしてくださったわ」
ウキウキしながら娘がふと見ると、先ほどまで青年が座っていたテーブルに白いバラが一輪残されていました。
「あら、忘れ物だわ」
娘はあわてて青年を追いかけましたが、通りのどこにも姿が見あたりません。
「また来てくださるといいのだけれど」
枯らしてはいけないと思い、娘はテーブルの花瓶の中にそのバラを挿しておきました。
翌日、またあの青年がパンケーキを食べにやって来ました。次の日もそのまた次の日もお昼時にやってきては、美味しそうに平らげてピカピカの銀貨と一本の白いバラを置いて行きました。
それが一ダースにもなった頃、窓越しに青年の食べっぷりを見ていた村の人たちがひとり、ふたりとパンケーキを食べに来るようになりました。
「あら、美味しい」
「ほっぺたが落っこちるよ」
評判が評判を呼び、今や行列ができるほどの大繁盛になりました。娘はてんてこ舞いの忙しさです。
「ああ、よかった。これもあの方のお陰だわ。今度いらしたら、ちゃんとお礼を言わなくちゃ」
ところがその日を境に青年はぱったりと姿を見せなくなってしまいました。
「いったいどうされたのかしら」
あれからお店は連日の大盛況。村の人たちとも親しくなって、すべてがうまくいっているはずなのに娘の心は何かが欠けたように寂しくてなりません。
「もう、いらしてはくださらないのかしら」こちらから会いに行きたいと思いましたが、
どこの誰ともわかりません。
閉店後、一人窓辺に座り青年の置いていった白いバラが月の光を受けて真珠色に淡く輝くのをぼんやりと見ていました。
「どうしてあの方はこの花を置いていかれたのかしら?」
しばらく考えていた娘は、はっとしました。白バラの花言葉は《片思い》。この辺りでは叶わぬ恋の想い人に贈る花だとお客さんから聞いたのを思い出したのでした。
娘は露台へと急ぎ、丹精込めて育てた赤いバラを摘み取ると大きな花束を作りました。そしてその花束を青年がいつも座っていた椅子の上に置きました。
「神様、どうか想いが伝わりますように」
*
もうすぐ、娘のもとに駆けてくる足音が聞こえてきます。ドアベルが幸せの鐘のように鳴り響くことでしょう。
チリン、チリン、チリン。 完
短歌の時間 課題「草」 4/30締切
おのれだけ うだつの上がらぬ 月の夜は 草葉の陰に 亡き妻を恋う
香草を 散らすサラダに 春が来る 摘みたてのあお 心はずませ
課題「名刺」 原稿用紙5枚
紅(くれない) あべせつ
祇園は切り通しのお得意さんへ品を納めた帰りには、必ず足を伸ばして辰巳大明神様にお参りをする、それが健吾の決まり事であった。
その日はいつになく用事に手間取り、巽橋を渡る頃には薄闇が辺りを包み始めた。枝垂れの柳や葉桜が影を落とした白川の水面に、提灯の明かりがゆらゆらと揺らいでいる。
「これはいかん。えらい遅うなってしもうた」
そそくさとお参りを済ませ急ぎ足で新橋通りに入ったとき、五間ほど先のお茶屋の前に若い芸妓と舞妓の姿が玄関先の白熱灯の明かりに照らされて錦絵のように浮かび上がっているのが見えた。
「小蝶ちゃん、ここどすえ。ゆっくりでええさかい転ばんように気ぃつけておくれやす」
「へぇ、久蝶さん姉さん、おおきに」
聞き覚えのある声にはっとして健吾はその場に立ち止まり、まじまじと舞妓を見据えた。
「あ、お鈴ちゃん」
結いたての割れしのぶや、白塗りに片紅の濃い化粧の横顔にも惑わされることなく健吾はしかと鈴の面影を見いだした。声をかけようかと迷う内、二人の姿は格子戸の中へと消えていった。鈴の背中を見送る健吾の目には、半だらの帯とそのすそに染められた屋形(置屋)の家紋が焼き付けられた。
――お鈴ちゃん、もう見習いさんになったんか。
幼い頃から、十五になったら舞妓さんになると言っていた鈴が、しばらくは会えんようになるからと健吾の住込み先を訪ねて来たのは去年の桜の時分であった。
「うちは祇園で一番の芸妓になるさかい、健ちゃんも京都一、ううん日本一の名刺職人になって、うちをお嫁さんにもらいに来てね。うち、それまでずっと旦那さんは持たずに待ってるから」
そう言って銀細工の丸鈴の根付を健吾に渡し、翌日屋形の暖簾をくぐって行った。
「早い、早過ぎる」
見習いさんになったとなれば、あとひと月ほどで正式に舞妓のお店出しとなる。それにひきかえ修行に入って丸二年、いまだに下積みのままの健吾は焦る気持ちで帰路を急いだ。
「只今帰りました」
工房に戻った健吾は入り口の棚の上に版下が置いてあるのに気が付いた。そこには字書き屋が勘亭流で揮毫した『小蝶』の芸名とともに、先ほど見たばかりの家紋が描かれていた。
「親方、これは」
「ああ、冨美蝶の女将さんとこからのご注文や。千社二千に花二百、それに赤を百やそうや。来月がお店だしやそうやから特急で頼むいうことらしいわ。健吾は千社札を活版で二千枚刷ってくれるか」
「親方、頼んます。今回は千社札やのうて花名刺のほうを俺にやらせてください」
「花て、健吾、お前さんの腕ではまだ手刷りは無理や。ひと月では到底間に合わへんぞ」
「親方、後生です。一生の頼みです。仕上がるまで寝んとでもやりますさかい」
日頃は無口な健吾が土間に伏せて額をこすりつけんばかりに拝む姿に親方も唖然としている。
「健吾、なんや訳ありなんか。ほなら、赤名刺やってみろ。あれやったら紅和紙に金泥の一色摺り、花ほどの工程はいらんさかい。そやけどな、店だしから三日間しか配らん名刺やから言うて手ぇ抜くなよ」
「えっ、ほんまですか。親方ありがとうございます。恩に着ます」
ふだん名刺代わりに配られる千社札は印刷機であっという間にも刷られるが、常連客にしか渡さない赤名刺や花名刺は、木版彫りから起こして一枚一枚を手刷りで多色に仕上げる、正に職人技の仕事であった。
鈴のためにと健吾は三日三晩寝る間を惜しんで見事に版木を彫りあげた。紅色の厚手の和紙に金泥で家紋と小蝶の名前をバランで丁寧に摺っていく。幾日もかけて百と一枚をきっちり刷り上げた後、健吾はその内の一枚にだけ小さな銀の鈴の絵を銀泥の細筆で名刺の隅に書きこんだ。
「これを見れば、俺の仕事やと鈴ちゃんにもわかるはず」
そして最後に刷り上げた一枚を、自分のふところに大切にしまい込んだ。
*
それから遥かに時は過ぎ、戦後の混乱も落ち着き始めた祇園の花街で今は大年増の芸妓となっていた鈴のもとに、ある日一通の手紙が届いた。宛名の男名に心当たりはない。怪訝に思いながらも開けた手紙には〈遺品〉の二文字。くしゃくしゃになった紅い名刺を見たとたん、鈴は声を上げて泣きくずれた。
手から落ちた封筒から、小さな銀鈴が転がり出て畳の上でチリリと鳴った。 完
短歌の時間 課題 「魚」
焼きたてに ふうふう息を 吹きかけつ ほぐしてくれた 愛しのほっけ
もう一句
若き日は 白魚のよう その指も 五十路を超えて ウツボとなりぬ
とりあえず・・・・・・俵 万智先生風(^_^.)
震える手 遠くなる目に 変わりつつ 身をせせるなり 老父のサンマ
穂村弘さんの『はじめての短歌』に社会的に価値のないもの、換金できないもの、名前のないもの、しょうもないもの、弱いもの、に目を向け、そういった欠点を愛すること、というような内容が書いてありました。
ブロ友さまのアドバイスによって詠んでみた句