童話『にじのたね』 | あべせつの投稿記録

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「虹の種」 あべせつ


満月の夜。猫のチビタがお散歩をしていると道の端っこに何か光るものが落ちていました。

白くて丸くてピカピカの真珠みたいにきれいな小さな玉でした。

中のほうから不思議な光が出ています。


チビタはチョンチョンと前足でつっついてみました。

すると玉はポーンと飛んでコロコロ転がっていきました。


「こりゃ、おもしろいぞ。」チビタが夢中になって遊んでいると、突然草むらから声がしました。


『もしもし、その種で遊んではいけませんよ。』

チビタが振り返るとタンポポよりも小さい背丈の人がいました

。七色の上着とズボンとくつをはき、帽子まで七色ずくめの男の子でした。

「それは虹のたねなんです。落としてしまい困っていました。見つけてくれてありがとう。」と小さい人が言いました。


「虹のたね?」チビタが不思議そうに聞きました。


「そうです。虹のたねですよ。これを大事に育てるときれいな虹になるのです。知りませんでしたか?」

初めて聞いたチビタはもう興味しんしんです。


小さい人が虹のたねを育てるのを一緒に手伝うことになりました。

小人はチビタに助けを求めました。虹のたねは7つなくては美しい虹はできません。神様からたねを7つ預かりましたが空から降りてくる時に、流れ星にぶつかってしまい、たねを全部落としてしまったのでした。

一生懸命探しましたが見つからず、チビタが見つけたのがまだ最初の一つだということでした。

たねは満月の間に植えなければなりません。

朝日が当たると消えてしまうのです。

明け方までにはもうあまり時間がありませんでした。


そこでチビタは仲間の猫たちを集めて、事情を説明しました。

「うん。わかった。6つ探せばいいんだね」


仲間の猫たちは森や川原や原っぱを走り回って虹のたねを探してくれました。しかし場所が広くてなかなか見つかりません。


すると空を飛びながら見ていたコウモリたちが、「私たちも一緒に探してあげる。虹のたねは光るから、上から見たらわかるかもしれないわ。」そう言って夜空を飛び回り一緒に探してくれました。


「あっ、あそこにあるわ。その夜顔のお花の下よ。」

「あっ本当だ、あったあった。」

「ここにもあるよ。」皆の力で種は次々と見つかりました。

しかし最後の一つがなかなか見つかりません。


するとこの騒ぎを木の上で見ていた森の長老のフクロウが、見かねてチビタに声をかけました。

「見つからないなら、最後の一つは作ればいい。わしが作り方を教えてあげよう。」皆はそれを聞いて大喜びです。


「虹のたねを作るには、まず月の虹の光を、夜露のきらめく玉に集めなければならんのじゃ。きれいな夜露はクモさんに分けてもらうといい。クモさんは夜露作りの名人だからな」と教えてくれました。


チビタはフクロウのおじいさんと一緒に森で一番大きなクモさんの所に行き、わけを話して夜露を1つ分けて貰うことができました。


「これを、あのきれいな池のちょうど真ん中の水面にそっと置くのじゃ。満月の光をいっぱい浴びるようにな」

「えっ?あんな所に行けないよ。僕たち泳げないんだ。」


猫もクモも小人も泳げません。コウモリとフクロウは飛べるけれども、つかむ力が強すぎて夜露が壊れてしまいます。ここまで来たのにどうしよう。困った困ったと皆で頭をかかえていると


「だいじょうぷ。私が行っておいてきます」と茶色い蛾が言いました。

蛾はクモの巣に引っかからないように注意深く夜露をつかむと、池の真ん中まで飛んでいき、鏡のような水面にそっと置きました。

すると不思議なことに満月の回りに月の虹がかかり始め、その白く美しい光が夜露に差し込みました。夜露は一瞬太陽のように輝きましたが、すぐに静かな白い光のあの真珠球のようになりました。


虹のたねの出来上がりです。蛾はそのたねを大事そうに皆の所に運んできてくれました。

「これで虹のたねが7つ揃いました。みなさん本当にありがとう」

小人はたいそう喜んで早速丘の上に行き種を植えました。


明日の朝になればこれで立派な虹が出ます。皆わくわくして待っていましたが、夜中走り回っていたので、虹が出た時にはすっかり眠ってしまいました。

猫やコウモリやフクロウやクモや蛾がお昼間寝ているのはこんなわけがあるのです。ゆっくり寝かせてあげましょうね。