


茶色の縞模様の風呂敷からその時計が出てきたのを見たような気がするのです。
この時計はかなり長く我が家で時を刻んでいたように思います。
この手の時計は振り子の長さを調節することで進めたり遅らせたりすることができます。我が家の時計はいつも進んでいて、引き算しないと正確な時刻を知ることができませんでした。
この時計がいつ頃まで使われたか憶えていません。母には姉と私、つまり女の子が二人しかいませんでした。こんな貧しい家に来る養子なんかいないから、好きな人がいたらさっさと結婚しなさいと母は言い、姉も私も結婚して家を出ました。
母は結局老後を姉の所で過ごしました。もう動いていない時計は姉の所に残されました。義兄はこういう古いものが好きな人で、自分の実家から持ってきた古い時計がもう一つありました。義兄はあちこち探して古い時計を直せる人を見つけ二つとも動かしていた時がありました。
昨年義兄が亡くなった後、私はこの古い時計のどちらかをもらえないかと姉に言いました。姉がそれなら私たちの実家からきた時計を上げると言ったので、先日それをもらいに行ったのでいた。
初めは車でもらいに行くつもりでしたが、昨年自損事故を起こしてから車の遠出はやめていたので、電車で行きました。
持っていけるのかと心配する姉に「お祖母さんだって名古屋から上田まで持って来たんだから」と私が言うと姉が「でもあの時のお祖母さんは60代前半のはず、あんたはそれよりずっと年寄だよ」と言い、それもそうだ、持っていけるかなと心配になったのですが、大判の風呂敷に包んで抱えて持ってきました。
家に戻りYou tubeで「大きな古時計」を聞きました。歌の最後の方で、
「真夜中にベルが鳴った おじいさんの時計 お別れの時が来たのを 皆に教えたのさ」
というのを聞きおやこんなミステリアスな歌詞だったのか、と思いました。