朝、ニュースは今日も世界で負の連鎖が途絶えずテロが起きていることを知らせていた。
何千年歴史を重ねても、人は人を許す心を持てないでいる。
嫌気がさして、ベランダにでる。葛西橋通りは、もう朝のラッシュが始まったらしく、渋滞音が聞こえてくる。ここの信号機はわかりづらく、クラクションを鳴らす人が多い。
憂鬱だ。前頭葉からセロトニンが払底しているに違いない。
久しぶりにタバコでも吸うか。
と、ピンポーンと間抜けな音。
宅急便かな?
ずいぶんはやいな。
私は、なにも考えずドアを押し開けた。
嬢
「あ~べ~し!」
あべ
「………は?」
そこには、女が立っていた。
ウェーブがかった髪の毛が絶妙に肩口で乱れ、スタイルを引き立たせるようにスーツを着こなしたいい女だ。ハイヒールまで履いている。
あべ
「あー、えっと、男の礼儀としてまずは着替えさせて」
ドアを閉める……。
誰だ?あいつは誰だ?
パジャマをぶん投げ、シャツを着て、パンツをはき、ジャケットをはおる。
そして、再び、ドアを開けた。
あべ
「……お待たせ」
嬢
「あ~べ~し、もしかして、誰だかわからない?」
あべ
「ははは、私が君のような美人を忘れるはずがないだろう?」
嬢
「相変わらずだね~、中入れて♪」
あべ
「ははは、いや、なんていうか世界がテロばっかりしてるせいかなぁ、突発性のアルツハイマーになったようなんだ。君の名前が出てこない。君の名は~」
嬢
「ウケる」
そして、女が名前を告げた。
あべ
「スーツなんて着てるから全然わからんわ。で、どうした?」
嬢
「中入れて♪」
あべ
「前世でも来世でも来来世でも、君を愛すると誓うが、今世だけはだめだ」
嬢
「そういう意味じゃないよwww朝ごはん食べてないの‼」
あべ
「なら、コーヒーとトーストの旨いカフェがイオンの中にある」
嬢
「じゃあ、一緒にいこう」
あべ
「仕事の準備があるんだ。あとでいく」
嬢
「やだ、一緒にいこう。お金あげるから‼」
あべ
「よしっ、いこう。いま、いこう」
財布だけをポケットにいれて、そのまま外に出る。
嬢
「あべし、太った?」
あべ
「病んだ、帰る。そういうオマエは綺麗になったのに性格はガキのままだ」
嬢
「そんなことないよ」
あべ
「で、結局なんの用なんだ?」
嬢
「頼みたいことがあるんだぁ~」
黒い話だった。
人生にいらぬ期待をした私が馬鹿だったようだ。
いい女はいつだって男を利用する。