前回に引き続き、選を入れた句の感想だけでなく、選外とした句も含めて(つまり全出句)の感想を書いてみたいと思います。

(これはあくまでも個人的な”感想”です。悪しからず)

⭐️は「選」
☆は「次選」




13~23までの句です。




13.瀬野川の中州の水や十二月
       浩洋子さん

この句もいいな〜と思った一句。
川の水と「12月」という季語がよく響き合っていると思いました。
「瀬野川」という川の名も素敵です。
「瀬野川」の「中州」の「水」。。。
水面でも、ある一点に焦点を合わせている感じがしていいと思ったのですが...
ふと、重なる3つの「川の水」の表現はどうなのかな。。?と迷うことになってしまいました汗



14.一燈にふたつの椅子やクリスマス☆
        清兵衛さん

素敵な句です。
文句無しに。。。
この句が表している景には、特に意外性があるわけではないでいしょう。
しかし、こんなに温かく、端的に、シンプルに、しっかりと捉えて句にするには非凡な才能が必要だろうな、としみじみ思いました。
そして、きっと多くの方が選として頂くだろうと確信できたことと、他に頂きたい句も数句あったため、次選とした一句です。
そのような選択をしたのはこの一句だけでした。
やはり多くの選が入っていましたね。




15.電線の鳩むつましやホットレモン☆
        まどんさん

これも次選とした一句です。
「ホットレモン」という季語に、それこそ心がホットしました♪
平和の象徴でもある「鳩」というのもいいな、と。
上五「電線の」の部分を、もっと何か他の表現にできたら更に良い句になりそうだな〜という気がしました。
でも...それが難しいんですよねぇ汗



16.午後十時のコーヒタイム虎落笛
         ショウちゃんさん

夜のコーヒータイム。外は強い風が吹いています。
いい取り合わせだな、と思いました。
少し気になったのは、「午後十時」という時間の単位のあとの「コーヒータイム」の「タイム」の部分が、意味合いとして重なっているかな?と。
しかし、風の音とコーヒーの香り、この組み合わせが好きです。



17.着ぶくれて日本人はお人好し☆
          Mrs.シルクさん  

おお!と思った句です。
「着ぶくれて」とあって「日本人はお人好し」
えっ!?
と思ったのもつかの間、そのあとすぐに「うん!」と納得してしまう説得力があります。
素晴らしい句だと思いました。
悩んだあげく、今回のテーマであった「中七」「や」切れという型ではない、という一点だけで次選に。。。
それがなければ「選」として頂いたと思えた句でした。
とても勉強になりました句です。
    


18.うみねこの黒き尾羽や冬の波☆
           みなみさん

うみねこという鳥をよく観察したことが無く、「黒き尾羽」をしっかりイメージできなかった私。。。あせる
先ずはをググってみました。
真っ白な頭、胸、腹、そこに墨で描いたように流れるような羽。
その淡墨色の羽と比べ、尾羽にはくっきりと黒い帯模様があるんですね。
その「尾羽」が見えるということは、逆巻く「冬の波」の上を滑空している姿なのでしょうか。
すっきりとシンプルに表現されていて、とても好感がもてる一句でした。
しかし、これも悩んだあげく次選に。
その理由は、ただ単に私のイメージ力の乏しさです汗



19.電柱の影のやつれや冬ざれる☆
           笑い仮面さん

これは..後になってなぜ「選」としなかったのか覚えがないんです。
一読して(いいな)と思った句だったのに。。。
「電柱の影」が「やつれる」
実際に起こる現象ではないでしょう。
これは作者の心情を汲み出した表現だと思いました。
つまり抒情的俳句かと。
しかし、よくよく考えると、「電柱の影」が「やつれて」見えるのは作者の深い観察力から得た鋭い洞察ではないかと思えてきました。
そういう意味ではこれも写生句と言えるのかな。。。。
それにしても「冬ざれる」という季語がグイと心に沁み入る一句です。
後に詩人である笑い仮面さんの作品だと知り、大いに納得したのでした。



20.星のうた星座のはなし冬田道
            悠人さん

リズムが良くてこの一句自体が「うた」そのものようです。
ただ、あまりにお気に入りの句が多すぎて、「中七」「や」切れの型ではない句をのぞかなければ絞りきれない、ということから頂くわけにいかなくなった句でしたあせる
「冬田道」を歩くのは作者自身なのか、また、それは遠い記憶なのか、今現在なのか。。。
または冬田道を歩いているのではなく、見上げた星空の下、のどかに伸びる冬田道を眺めているのか...
想像する楽しみを与えてくれる句だと感じました。



21.星のなき眠らぬ街やクリスマス
            重太郎さん

クリスマスの句ですね。
「眠らぬ街」ということは賑やかな都会の夜でしょうか。
空の星が全て落ちてきたような、美しく輝くイルミネーションを思い浮かべました。
ここでは「眠らぬ街」という言葉が気になりました。
(これは私自身への戒めでもあるのですが)このようなある意味完成されてしまった語句、つまり常套句といえる言葉は、俳句では用いない方が懸命かと思った次第です。



22.手柄杓で呑む渓流や落葉降る
            享仙さん

清々しい一句だと思いました。
冷たく澄んだ渓流の水。
それを手柄杓で呑んでいると、次から次へと落ち葉が降ってくる。
渓流まで来られたということは、たぶん冬晴れの一日。
青く澄んだ空と渓流のせせらぎ。
美しい景だなぁ。。。
ここで「選」として頂かなかったのは、私の我が侭な脳みそが「冬」というより、どうしても「秋」をイメージしてしまう故でした汗



23.山下りて夜汽車に乗るや冬銀河
            SONAさん

山歩き(登山?)をされた帰り道でしょうか。
歩き疲れた体を夜汽車の椅子に預けながら車窓から見る星空(冬銀河)。
或いは、夜汽車の到着を待つプラットホームに立って見上げているのかもしれません。
冬の星空は空気が澄んでいてとても美しいもの。
疲れた体とは対照的に、頭はすっきり冴えているのでは?と想像しました。
星の煌めきは、目から脳を心地よく刺激します。
作者はゆったりとした充足感を得ているのではないでしょうか。
「山下りて」がなくとも「夜汽車」と「冬銀河」だけで立派に勝負できたのではないかな?と思った句です。






私の感想などつまらないものですが、自身の句と読み手のかかわり方のほんの一例としてお読みくだされば幸いです。



次回は24~35までの句です。



※記事右側(プロフィール下)のフリースペースに、唱歌「冬景色」と「冬の星座」を貼りました。日本語が美しい♪


            ではまた〜音譜