スティングが『Fragile』を書いたきっかけは、ある米国人の死がきっかけである、ということは、スティングファンなら周知だろうか。。。

1987年。米国人エンジニアであるベンジャミン・アーネスト・リンダー(当時27歳)は、ニカラグアの戦闘地帯にある村に電力と水を供給するダムで働いていた。彼は、米国に支援されていた反サンディニスタ軍コントラに殺された。ベンジャミンの死は、世界中で報道された。


CBS のダン・ラザーの弁(当時)
「ベンジャミン・リンダーは革命の煽動者ではなかった。革命を語ったわけでもなければ、ライフルをニカラグアに運んだわけでもない。ベンジャミンは華奢で思慮深い男だった。23歳で快適で安全な米国を離れニカラグアに行った。そのとき、彼が何を求めていたのかはわからない。しかし、ベンジャミンは自分の目でニカラグアを見てみたかった。機械の知識と若さのエネルギーという武装だけで彼はニカラグアに向かった。彼の死は何千ものニカラグアでの犠牲とは意味が違う。彼は米国人の税金で買った武器で殺された米国人なのだ。彼の死は皮肉に満ちている。ベンジャミンは、米国が税金を使って壊している国を、立て直そうとしていた。そして、彼は米国の破壊の犠牲者となってしまった。この勇気ある米国人青年が快適な職場で高い給料を稼ぐのは簡単だったに違いない。しかし、彼は彼の良心に従った。」


エンジニアとして村に電気を送る仕事に携わっていたベンジャミン。
それが危険なことだということは彼も充分承知だっただろう。
ベンジャミンの言葉が残されている。
「戦争と空腹がおさまるまで、エルクアが豊かになり子供たちがなんの心配もなく暮らせるようになるまで、ハーメルンの笛吹き男のように、この子供たちを戦争から隠していたい。でもそれはぼくにはできない。たとえできたとしても、その他の村を助けることはできない。その代わり、ぼくはみんなの役にたちたい。戦争が終わることを祈る。」



スティングが、その青年ベンジャミンの死を悼んで作った曲がこの『FRAGILE』(=「脆い」)
自らを「エゴイスト」と云って憚らないスティング。
強い自我の持ち主ということだろう。(そこが好きラブラブ
生まれ育ったイギリスと同じ(ちょっと違うだろうけど...)英語圏であるアメリカに暮らしながらも、どこか違和感を感じ、「私は英国人である。そして異邦人。合法的異邦人」という歌詞の『イングリッシュマン.イン.ニューヨーク」という曲もイイラブラブ
(この歌をパロって、「大阪人イン東京」なんてふざけた歌もあるけどにひひ
あ、話が逸れた!

そんな、一見傲慢でナルシストで、エゴのかたまり(自身でも云うところの)のような彼が、ベンジャミン青年のことをこれだけ切実に祈るように歌う。。。
意外なようで実は合点がいくことだな、と思う。
大好きな曲ラブラブ







Fragile / Sting
フラジャイル / スティング

(歌詞)

If blood will flow when fresh and steel are one
Drying in the colour of the evening sun
Tomorrow's rain will wash the stains away
But something in our minds will always stay
Perhaps this final act was meant
To clinch a lifetime's argument
That nothing comes from violence and nothing ever could
For all those born beneath an angry star
Lest we forget how fragile we are

On and on the rain will fall
Like tears from a star like tears from a star
On and on the rain will say
How fragile we are how fragile we are

On and on the rain will fall
Like tears from a star like tears from a star
On and on the rain will say
How fragile we are how fragile we are
How fragile we are how fragile we are

(訳詞)

生身のからだに鋼の刃が突き刺さり
流された血が夕日に染まって乾いていく時
明日にでも雨が降れば血痕は洗い流される
だけど僕らの心を襲ったものは
いつまでも消え去りはしない

事によるとこの最終的手段は
暴力は何の解決にもならず
怒れる星の下に生まれた者たちにはなす術がないという
一生かけての主張を捩じ伏せるものだったのかも知れない
人というものがこんなに脆いとぼくらに思い知らせようと

いつまでもいつまでも雨は降り続けるだろう
まるで星が涙を流しているようだ
まるで星が涙を流しているようだ
いつまでもいつまでも雨は教えてくれるだろう
人というものがどれほど脆い存在か
ぼくらがどれほど儚い存在か


いつまでもいつまでも雨は降り続けるだろう
まるで星が涙を流しているようだ
まるで星が涙を流しているようだ
いつまでもいつまでも雨は教えてくれるだろう
人というものがどれほど脆い存在か
ぼくらがどれほど儚い存在か
人がどれほどかよわいか
ぼくらがどれほど儚いか







              ではまた~音譜