中学生のとき、理由は全く分からないが、僕のことをとても嫌がる女の子がいた。
とある席替えのとき、たまたまその子と教室の席が隣になり、当然のごとくものすごく嫌な顔をされたのだが、そんな彼女を特に僕は嫌う理由もなかったし、彼女が嫌がる理由が分からなかったから、自分を改善する方法も分からなかったので、とりあえず彼女が望むように席の間隔を離してあげた。
その様子を見ていた僕の友人は、「あいつふざけんなよ、俺が文句言ってやろうか?」なんて声をかけてくれた。でも僕は「別に何か被害が及ぶようなことじゃないんだし、彼女が好きなようにしてあげようよ。」と返答したのを覚えている。
席替えの頻度がどれくらいだったか全く記憶にないのだが、日が進むごとになぜか彼女との席の間隔が狭くなっていき、最終的には周りの席の間隔よりも近いくらいになっていた。また、それとともに彼女と僕の距離も近くなっていったのだった。
結局、彼女は女子の中では中学生活で一番仲の良い友達の一人だったと思う。なにしろ中3になったとき、彼女が進学先の高校の課題に苦労しているのを見て、手助けして勉強を教えていたくらいだったのだから。(むしろ彼女の方から、「課題の勉強教えてよ」って言われた気がする。)
あるとき、彼女に何で僕を嫌がっていたのかを聞いてみたことがある。彼女は、
「なんとなく」
って答えたからものすごく衝撃だった。よくよく細かく聞いてみると、仲の良かった友人から僕の悪いうわさ(誤解)を聞いていたことで嫌な印象を持ってしまっていたのだった。
ここから僕が気付いたことは2つある。1つめは、「ひとは思い込みで自分の行動を決めてしまう。」ということ。実はこの話に限らず、僕が教員になってからも女子同士の揉め事でこんなことが多くあった。例えばA、B、Cという女子生徒がごたごたしていた時の例をあげると、
A「Cちゃんが、Bちゃんが私の悪口言ってたって言ってた。だからBちゃん嫌い。」
僕「それって、Bちゃんから直接聞いたの?」
A「聞いてないけど、Cちゃんが言っていたから・・・」
僕はこれを『又聞きの法則』と呼んでいる。なぜか仲の良い友達同士の会話では、事実を確認せずに言っていたことがそのまま正しいと思い込むことが起こる。すべてが間違っているとは言わないが、大抵尾びれ、背びれがついたような話になっている。要は話が大きくなったり、誤解されるような表現になったりしているのだ。このような話を聞くたびに生徒に言うのが、「仲の良い友達の話でも又聞きを鵜呑みにしない。」ってこと。自分で確認していないことには本当の真実はない。
2つめは、誠意を持って対応すれば気持ちはちゃんと伝わるってこと。彼女と僕の机の間隔が狭くなっていったのは、相手の態度に対して反発するのではなく、受け止めてきちんと真心で対応したから。時間が経つうちに、「あれもしかして良い人なのかも?」って気付いてもらえ、誤解も解けた。このことも教員になってから似たようなことがあった。
教員になりたての頃、自分のクラスの女子生徒の授業態度が良くなかったので、「ちゃんとしないといけないよ。」と優しく注意したところ、「お前なんかに言われる筋合いはないんだよ!」と返された事があった。
ところが1年後、その生徒から「あの時、あんなこと言ってごめんね。」と謝られた。時間はかかったけど、確実に僕の誠意は伝わっていたのだ。
今現在もきっと僕に対して距離を置く生徒はいると思う。けれど中学生のときと同じように「席の間隔は狭くなるもの」と思って誠意を持って笑顔で接している。